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zoom RSS テーマ「社会」のブログ記事

みんなの「社会」ブログ

タイトル 日 時
科学者の退廃
科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)の長はノーベル賞受賞者である野依良治氏である。以下は2016年7月の「持続可能な開発目標(SDGs)と科学技術イノベーション」の基調講演である。 ...続きを見る

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2017/01/13 11:34
「研究不正―科学者の捏造、改竄、盗用」 黒木登志夫
本書は、科学研究における不正行為を数々の実例を取り上げながら紹介している。取り上げられている領域は、著者の専門性に基づき生命科学、および医学研究中心であるが、インパクトの大きな事例として、考古学(ピルトダウン人事件、旧石器捏造事件)や実験物理学(ベル研究所における研究不正)といった分野にも言及している。実験科学、特に生命科学における研究不正として主要なものは網羅されており、著者が期待するように、本書は研究倫理に関心をもつ人たちがまず手に取る本の一冊になるだろう。著者は、昨今相次いで話題となった巨... ...続きを見る

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2016/05/07 22:26
「昨日までの世界―文明の源流と人類の未来」ジャレド・ダイアモンド
著者は「銃・病原菌・鉄」や「文明崩壊」といった著書で有名な研究者であるが、その取り扱う領域は広大であり、学問の専門化が著しい近年にあってそのパースペクティブの大きさは特筆すべきである。本書はその中でも著者のフィールドワークの世界と近い内容であり、経験談もしばしば登場する。タイトルにもあるが、先進国の人々が現在享受している文明やライフスタイルはそれほど歴史があるものではなく、人類の歴史の中ではごく最近生じたものであることが、様々な事例を通して何度も確認されていく。 ...続きを見る

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2014/09/07 00:21
「背信の科学者たち」ウィリアム・ブロード、ニコラス・ウェイド
本書はしばらく前まではブルーバックスから刊行されていたが、絶版状態であった。理研や分生研、医学部を舞台とした論文捏造事件が相次いで報道された本年、まさにタイムリーな再刊といえるだろう。帯にもあるが、大阪大学の仲野先生が強く推薦したこともweb では話題になった。本書は科学者のミスコンダクトを考える上では類稀な事例集となっているが、一方で平均的な科学者像を社会に広める上では非常に問題の多い著作と言える。トーマス・クーンはその主要な著作「科学革命の構造」によって、科学の社会への適切な受容を何十年と遅... ...続きを見る

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2014/08/26 21:43
小保方問題についての早稲田調査委員会の報告書の説明:研究者の厳しい見方の背景にあるもの
早稲田大学の調査委員会の報告書については多くの研究者と同様、大きな衝撃を受けた。何も書く気が起こらないくらいのインパクトがあったが、酷い酷いと嘆いているのは生産的ではないだろう。過疎ブログであるが、少しでも一般向けに補足説明ができると良いと考えているので、参考にしていただければ幸いである。ここでは既にネットで多数指摘されている、この判断がもたらす大きな影響(「明らかに学位に値しない論文であるが、一旦授与した学位の取り消しはしない」ということを大学が明言することによる学位の価値の低下など)というコ... ...続きを見る

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2014/07/20 22:35
「木を見る西洋人 森を見る東洋人 思考の違いはいかにして生まれるか」リチャード・E・ニスベット
自然科学を研究し、日々西洋人と論文や研究成果をめぐり議論する東洋人にとって本書が取り上げるテーマは極めて身近なものであろう。要素還元的な自然科学の手続きは西洋人にとってはごく自然な思考の方向性であるが、一方で東洋人にとっては一定のエネルギーを注ぐ必要のある意識的な作業である。東洋人の研究スタイルの中には、色々トライしてみて、全体像から仮説を導き、これを検証するというものがあるが、これは西洋人には理解が困難なやり方だろう。遠回りに見えることもあるだろうし、場合によっては頭が悪いと見なされる可能性す... ...続きを見る

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2014/06/07 23:50
「予想通りに不合理」ダン・アリエリー
本書は、行動経済学分野において活発に発信しているダン・アリエリーのおそらく最も有名な著作である。原タイトルはThe Hidden Forces That Shape Our Decisionsであり、古典的な経済学が想定していた「合理的な人間」を否定するだけではなく、人間の判断の不合理さの背後に存在するメカニズムについても議論されている。カーネマンの「ファスト&スロー」とあわせて読むと興味深いが、こちらはユニークな実験内容の紹介を通じて、より実生活にヒントを与えるような書き方になっているところが... ...続きを見る

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2014/05/19 09:36
基礎研究の公共性:STAP事件対応の問題点
王や貴族といった特権階級がパトロン的に支援してきた時代とは異なり(ゲイツ財団はこれを想起させるが)、現代の基礎研究は多くの国民の支援により成立している。統計によって数字は異なるが、自由主義経済を標榜するアメリカですら基礎研究については連邦政府が最大のスポンサーであり、税金抜きの基礎研究はあり得ない。例えば、医薬品開発はメガファーマとよばれる巨大企業が主導するものと一般に考えられているが、創薬のタネの殆どはNIHに支援された研究から生み出されている。基礎研究はすぐには経済的な効果を発揮しないことが... ...続きを見る

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2014/05/11 11:01
生命科学におけるソーカル事件?
今回のSTAP細胞事件は論点が多すぎて、まるで生命科学のかかえる問題点を整理するために生じたかのような印象をもった。科学者と一般社会との乖離がこのような形で表面化した事件はこれまでなかったのではないだろうか。科学者の視点からは、STAP細胞騒動は既に終わっていて、社会的にどのような形で決着が図られるかのみが関心となっている。国会において理研の野依理事長が、「(あなたたちが喧伝した)STAP細胞はあるのか?」と長妻議員に質問され、「あるかどうかは第三者の研究による証明が必要で、理研も引き続き調べる... ...続きを見る

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2014/04/22 00:10
「ガセネッタ・シモネッタ」米原万里
著者は有名なロシア通訳者であるとともに、ユーモアのあるエッセイの作者として多数の作品を世に送り出している。「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は著者がプラハのソビエト学校に居た頃の友人を再訪するという話であるが、否応なく大きな歴史の波にのまれていく個人の人生が見事に描かれている。ユーモアは著者の重要な特質であるが、それにしても本書はタイトルで損をしている。国際的に通じる人材をどのように育成するべきなのか、あるいは国語とはなぜ重要なのかということが、著者の経験をもとに説得力のある議論として提示されてい... ...続きを見る

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2014/01/05 16:49
「福島原発事故 県民健康管理調査の闇」日野行介
本書は、毎日新聞による福島県の県民健康管理調査に関するスクープ記事の背景を、当事者である記者がまとめた記録である。事実が淡々と記述されるため、スクープ記事そのものを超えるインパクトのある情報が含まれているわけではない。結果的に県民に対する背信行為になりかねない行動をどうして県の役人がやるのかという疑問が生じるが、一方で、もともと役人に県民に対する責任など始めからないのではということもいえる。反社会的な大企業に勤務する社員が勤め先の不正を告発する義務があるかといえば、もちろんそんなことはなく、ひと... ...続きを見る

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2013/11/30 11:50
「宇宙はなぜこのような宇宙なのか―人間原理と宇宙論」青木薫
翻訳家として数々の素晴らしい作品を紹介している著者の書き下ろしということで、感謝の気持ちも込めて購入。人間原理をめぐる議論は日本人には些か分かりにくい。西洋人は正負の両面で神の問題から逃れることが難しいために、本書のテーマである人間原理についての議論は複雑な展開を見せるが、日本人にとって多宇宙ビジョンは実は「しっくりくる」説明ではないかと思う。 ...続きを見る

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2013/10/21 23:11
「ファスト&スロー―あなたの意思はどのように決まるか?」ダニエル・カーネマン
生物としての特性をもつヒトと、社会的な存在である人間との間の齟齬は、科学的な研究の対象として極めて興味深いテーマであるとともに、これからの社会をどう良くしていくかを考える上での大きなヒントとなるテーマである。本書はそうしたことを考える上での入門となる名著といえるだろう。 ...続きを見る

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2013/09/29 09:55
「科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか」竹内薫
本書は新潮45の連載原稿をもとに加筆修正されたものとのことであるが、単行本化にあたり順序の入れ替え等の編集が施されているため、各項目は比較的まとまった内容の論説になっている。出版社と科学者の間のジレンマの一つは、その本をどう売るかという方向から生じる問題であり、著者の意図しないタイトルが付けられることや、あるいは帯でミスリーディングが与えられることは日常茶飯事である。それにしても著者の作品はきわどいタイトルが多く、著者が科学の応援団を自称する一方で、科学に対する誤解やあるいは攻撃のきっかけを与え... ...続きを見る

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2013/09/14 23:07
「サイエンティフィック・リテラシー―科学技術リスクを考える」廣野喜幸
タイトルはむしろ副題の方が良く内容を表していて、筆者も本文中で述べているようにリスク論入門として読むとしっくりくる。科学リテラシーというと必ずしもリスク論にとどまらないので、これは出版社のミスリーディングかもしれない。帯には「いかに科学の知識・教養を身に付け、集めた科学情報からいかに物事の本質を見ぬけばいいのか?」とあるが、新書であればいざ知らず、落ち着いた出版社がするような手ではないだろう。 ...続きを見る

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2013/09/01 21:59
「教室内(スクール)カースト」鈴木翔
学校の様子は子どもたちから伝え聞く程度であり、都市と地方ではある程度構図も異なることが予想されるが、最近の学校はどうなっているのだろうという関心で手に取ってみた。古市憲寿さんの著作のように本田由紀さんの解説付きである。大学院生としての研究が母体となった新書であるが、学術的にシャープな記述は抑えられている。アンケートやその統計学的な処理、そしてそれらに対する解釈といった手続きについては大幅に割愛されており、読者は筆者のコメントを何となく信じながら読み進めるしかないところに些かもどかしい印象をもった... ...続きを見る

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2013/07/21 11:01
「足利義政と銀閣寺」ドナルド・キーン
現代の日本人と連続性がある時代、例えばそれは現代人がその時代に放り込まれたとしてどの程度違和感を感じるかという意味であるが、それは東山文化以降というのが歴史家の間ではおおよそのコンセンサスらしい。確かに慈照寺(銀閣寺)を訪れる日本人の多くはそのたたずまいに懐かしさを感じるだろう。本書は、応仁の乱の原因となり政治家としては最低ランクの評価を受けている足利義政こそが、現代に続く日本文化のイニシエーターの一人として極めて重要な役割を担ったことを分かりやすく紹介している。明の影響のもとにあった絵画や漢詩... ...続きを見る

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2013/07/07 22:15
「武器としての決断思考」瀧本哲史
2012年のジュンク堂本店売上1位という帯にひかれて購入(なお2, 3位はワンピースらしい)。決断思考というタイトルから、決断に至るロジックについて書かれた本ではないかと想像したが、読んでみると主な内容はディベートについてのものであった。著者は東大法学部を卒業後、直ちに助手となり、その後マッキンゼーに転職、3年後に独立という経歴で、現在の肩書きは「京都大学客員准教授、エンジェル投資家」とのことである。この10年くらいで目立つ知的エリートのキャリアの典型の一つである。京大の担当講義は大変な人気講義... ...続きを見る

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2013/06/30 16:19
「知の逆転」吉成真由美編
本書はサイエンスライターである吉成真由美さんが、ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンという錚々たる顔ぶれにインタビューした内容をまとめたものである。現代最高の知性にある程度共通した問題意識をぶつけていくという構成上、個々の人物に関心の深い読者にはあっさりした印象を与えるかもしれない。一方で、西洋文明の発展の現状を俯瞰する上では、貴重なインタビュー集になっている。 ...続きを見る

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2013/06/22 17:55
「これから「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学」マイケル・サンデル
メディアミックス的な盛り上がりで大いに話題になったサンデル教授の著作をKindle本で発見して購入した。NHKで取り上げられ有名になった講義スタイルは、国内でも真似をする教員が後を絶たず、学生にとっては大いに迷惑であったに違いない。基本的に討議スタイルで講義を行うためには、受講者も相当なインプットが必要とされるとともに、講師はさらにそれを上回る知識と十分な考察をもって授業に臨む必要がある。また、時間内に何らかの考察に耐える結論を引き出すためには、どのような議論の展開があるかという予測ができていな... ...続きを見る

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2013/03/20 17:29
「日本人の人生観」山本七平
司馬遼太郎の日本人論は、著者があるべきと考える日本人像が多分に投影されていて、日本人のこれまでの営みとはどんなものであったかを考える上ではバイアスが大きい。読者である日本人には心地よいところもあるが、しばしば大きな錯覚を招く。山本七平の著作には批判も多いようであるが、戦争を挟んで日本人において何が変わらなかったかを考察する本書の指摘には参考になるものがたくさんあった。 ...続きを見る

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2013/03/03 21:55
自滅する生命科学:研究資金配分が誘導する研究コミュニティの崩壊
山中先生のノーベル賞受賞とほぼ同時に起こったiPS細胞をテーマにした森口さんの事件は、興味本位の話題を新聞やテレビに大量に提供してしまったために、iPS細胞という研究成果が社会に与えるインパクトや課題についての議論を置き去りにしてしまった。当人のキャラクターがあまりにテレビ向きで面白かったことが関心を引いているようであるが、既に明らかになった情報からだけでも相当大きな問題が隠れているように思える。自然科学研究へ社会がどのように投資していくかという問題は、次世代の人々の生活を良い方向で変えていく上... ...続きを見る

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2012/11/12 06:54
「適正技術と代替社会―インドネシアでの実践から」田中 直
著者は東京大学工学部卒業後、石油会社で精製プロセスの業務に関わる傍らインドネシアでの国際協力活動に参加し、その後設立されたNGOでは最終的には石油会社を退職して専従として、本書で取り上げられる適正技術の開発に取り組んできた。「適正技術」とは何だろうと考えて本書を手に取ったが、こうした考え方は人類の将来を考える上で大変重要なコンセプトであると同時に、単なる理想論としてではなく間もなく現実的な課題になっていくのではないかと感じた。 ...続きを見る

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2012/11/12 06:30
「働かないアリに意義がある」長谷川英祐
しばらく前に話題になった本書を読了。多くの一般の読者は、アリやハチといった真社会性生物のエピソードを読んで、否が応でも人間社会を想起してしまうだろう。著者も所々に人間社会との相似性を盛り込んでくるので、そのような印象を持つことは避けられない。著者が実際には基礎生物学の研究を進めながら、人間社会との関連性に言及するところに科研費を始めとする研究費申請の苦労を思い浮かべたりするのは筋の悪い感想かもしれない。「生物って面白いよね!」では研究費を稼ぐことは現在では困難である。 ...続きを見る

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2012/10/06 23:21
「医学と仮説」をめぐる意見交換について
前の記事で「医学と仮説」を取り上げたが、その後本書をめぐって興味深い意見交換が科学哲学者と著者の間で行われていることを知った。 ...続きを見る

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2012/10/04 00:27
「サイエンス入門U」リチャード・ムラー
Uではいよいよ光や量子物理学、相対性理論が取り上げられる。また気候変動についても一章が割かれており、科学者がこの問題をどう認識、評価しているかというプロセスを垣間見ることができる。本書で取り上げられる項目はTに負けず劣らず、現代社会を支えるテクノロジーと密接な関係をもつ。一方で、量子物理学が記述する奇妙な世界は、著者の力量をもってしても、人間の感覚では想像できない奇妙さであることを述べることでしか説明できない。一流の科学者をもってしても、要領を得ない文章で記述するほかない量子物理学のユニークさは... ...続きを見る

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2012/09/14 23:45
「大人の友情」河合隼雄
「大人の友情」の様々な形が取り上げられ、それについての著者の解説が付されている。刎頸の友や菊花の契り、あるいは走れメロスといった創作における友情は誰しも一つの理想型として想起するものであるが、実際に多くの人が経験する友情はより複雑でほろ苦いものも多い。実り多い友情を得るためには、友情関係に埋没するわけでもなく、一方であるときには心を預けることもある、そんな心持ちが必要ということなのだろうか。子ども時代の気持ちでもって大人の友情を捉えることは難しいし、一方で子ども時代の友情も振り返ってみれば物語の... ...続きを見る

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2012/08/14 11:20
「「しがらみ」を科学する」山岸俊男
若者やあるいは百戦錬磨の老人にとっては本書の評価は容易なのかもしれないが、中間的な年齢層の読者にとっては何とも評価が難しい。若者向けのプリマー新書なので、著者の語り口も自由であるが、冒頭のエピソードなどは全体の中ではちょっと浮き上がっているし、「意欲的に語ってやろう」という意識が強すぎるように感じられた。語り口調もばらばらで、急になれなれしくまとわりつくかと思いきや、急に丁寧な説明になってしまう箇所もあり、幾分読みにくい。 ...続きを見る

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2012/08/11 15:21
「福島の原発事故をめぐって―いくつか学び考えたこと」山本義隆
著者は科学史においていくつか重厚な作品を著しており、日本人と科学の関係を考える上で興味を持っているが、なかなか手を付けることができないでいる。一方で、著者は東大全共闘議長としてもよく知られているが、全共闘という運動そのものが私の世代にとっては理解が困難であり、著者本人に関しても全共闘に関わる情報発信は直後のもののみで、科学史家としての活動を開始してからはないようである。私たちの年代ではむしろ時代がかったルックスの駿台予備校の講師というイメージが強い。人文系の教養もある科学者が原発事故についてコメ... ...続きを見る

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2012/07/21 22:22
「明日をどこまで計算できるか?―「予測する科学」の歴史と可能性」デヴィッド・オレル
本書のもともとのタイトルはApollo's Arrowというものであり、その意味は予測の科学の歴史の中のエピソードとして登場する。洒落た原題と比べると翻訳は説明的であるが、本書の内容を過不足なく示している。冒頭からしばらく続く歴史の部分は些か退屈な記述もあるが、ケプラーの美しい法則ですら本人は楕円を採用しなければならないことに対して不満を感じていたことや、円の完全性に拘るあまり無数の周転円を採用することになった古典天文学など、興味深いエピソードをいくつか知ることができた。自然科学者が何を美しいと... ...続きを見る

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2012/07/10 23:28
「大学改革実行プラン」(文部科学省)についての雑感
「大学改革実行プラン」が文科省より発表されている。およそ5年間の計画で大学教育の質的転換を目指すものという位置づけである。計画策定に当たっては、官僚以外にどのような人たちが関わったのか、あるいは計画の発案、修正といったプロセスの詳細は明らかではないが、当該プランそのものが大学教育改革の必要性を非常に分かりやすい形で示しているような印象を受ける。 ...続きを見る

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2012/06/08 11:30
「疑似科学入門」池内了
著者はこれまでにも科学を対象とした議論に関する著書を上梓されているようであるが、私自身は不勉強で本書で初めての出会いとなった。疑似科学に関するネットの議論で「予防措置原則」あるいは「予防原則」という表現が登場することがあるが、本書における提言が含意されていることが分かった。そういう意味では、2008年の本書は既に議論の出発点として重要な著作として認識されているのかもしれない。 ...続きを見る

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2012/05/20 00:18
「偶然の科学」ダンカン・ワッツ
物理学者から社会学者に転身した著者は、現在コロンビア大学社会学部教授でかつヤフーリサーチ主任研究員である。スモールワールド・ネットワークに関する著書でも有名である。本書では冒頭からオールドスタイルの社会学者であれば目をむいて怒り出しそうな社会学についての著者の考え方が述べられるが、著者が自然科学の世界から転身したことをふまえればごく自然な発想であることが理解できる。社会学においては取り扱うべき要素の数や、関係は複雑すぎて、何らかの普遍的な法則を打ち立てることは原理的に難しい。著者は、自然科学の範... ...続きを見る

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2012/04/30 22:29
「「安全な食べもの」ってなんだろう?―放射線と食品のリスクを考える」畝山智香子
著者は既に「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」を執筆しており、食品の安全性についての一般向けの解説を著している。本書は原発事故を契機として緊急に企画されたことが巻末にも述べられているが、本書の方がむしろ良くテーマが消化されており、分かりやすいという印象をもった。被曝による発がんという軸がしっかり設定されているせいかもしれない。放射線の被曝と健康障害についてはネットを中心に様々な意見が拡散しているが、ネットの悪い特性である思い込みが強化されやすい構造が原因となって情報は分断され... ...続きを見る

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2012/04/17 01:36
「とんでもなく役に立つ数学」西成活裕
「渋滞学」という一般向けの科学啓蒙書としては極めて水準の高い著作で有名になった著者が、都立三田高校の学生12名を対象に、数学による問題解決の実例、手法、メリットを縦横無尽に講義した記録が本書である。高校生向けということで、具体的な例をたくさんあげることにより、わかりやすく数学的なアプローチの御利益が説明される。「渋滞学」を読めばOKという気もするが、より身近な例をあげて、解説の敷居を下げているので、こちらから読んでみるという選択も良いかもしれない。 ...続きを見る

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2012/03/19 00:33
「朽ちていった命―被曝治療83日間の記録」NHK「東海村臨界事故」取材班
現在進行中の福島原発事故では、政府には議事録は残されておらず、また東京電力は都合の悪い情報を隠蔽することにかけては国内で一、二を争う企業である。東京電力や一部の官僚は、どれほど批判されようがその方針を変える可能性は低く、虚偽の報告や発表をすることについても躊躇いがない。様々な事故調査が実施されているが、官僚と東京電力というタッグを打ち破ることは一筋縄ではいかないだろう。事故の記録を読むと、決死隊的な行動があったことや、現場の所長が死を覚悟したことが報道されている。一方で、現場で高線量を被曝した方... ...続きを見る

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2012/03/19 00:32
「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」畝山智香子
ゼロリスクを望むことによるコストの増大や、ゼロリスクという考え方に潜む危険性という問題は、原発事故を通じて今までより多くの人々に認識されるようになったように思われる。BSEの際には行き着くところまで行くという結論から全頭検査が採用されたが、今回の放射能汚染ではさすがにゼロを求めることは不可能であり、どの選択肢を選べば一番被害が小さくなるかという複雑な課題に取り組まなければならない。本書やその後出版された「「安全な食べもの」ってなんだろう?」は、これまでよりもたくさんの人の目に触れる機会を得ている... ...続きを見る

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2012/02/08 22:13
「金融が乗っ取る世界経済―21世紀の憂鬱」ロナルド・ドーア
著者は「経済の金融化」そのものが、現代において解決すべき問題であるという視点から本書を著している。経済学について門外漢である人間にとって、「金融化」が世界にもたらした福音が何であるのかを理解することは極めて難しい。経済成長に必要な資本を融通する「金融」を超えた「金融」の役割とは何なのか、またそれは誰のためにあるのかを考えると、先端的な「金融」の仕組みは富裕層への所得の移転、格差の拡大を主たる目的としているという結論に至らざるを得ない。こういう考え方は素人の意見なのだろうかと感じていたところに、本... ...続きを見る

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2012/01/09 22:20
「「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス」戸田山和久
専門的な科学知識ではなく、科学者であれば共通して身につけているロジックを非科学者に適切に伝えるにはどうしたらよいかという課題は、大げさな表現をすれば、民主主義的な意志決定の基盤として解決しておく必要がある。本書はその困難な課題に対する一つの素晴らしい答えになっている。たくさんの論点が整理されており、今後、同様の試みにトライする人たちにとって非常に参考になる内容が含まれている。 ...続きを見る

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2011/12/25 21:59
「御厨貴・東京大学先端科学技術研究センター教授に聞く【最終回】」池上彰の「学問のススメ」
「日本の小さすぎる「首相の器」をテーマに語り合う」という日経ビジネスの連載の最終回である。どの程度の反響が世の中であったかは分からないが、最終回では官僚予備軍としての東大生の問題点がよく取り上げられているように感じられた。由々しき問題が含まれているように思うのであるが、特に危機感をもったやりとりにはなっていないような印象ももった。 ...続きを見る

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2011/12/18 00:45
「一緒にやらないか(財務省)」から官僚制度の限界を考える
東京大学法学部という学部卒業レベルの学生が就職し、組織内で(または出向先で)教育を受けることにより形成されるものが官僚システムである。見逃せない特徴は、東京大学法学部出身者が圧倒的に優位を占めるというモノカルチャーな組織と、人材育成が官僚組織の影響を色濃く受けた場で進められるという自家中毒的な仕組みである。最近では東京電力の上級社員や、原子力安全・保安院(保安院というと何か国民の安全を考えているような印象を受けるが、「産業活動の安全確保」がその使命である)、原子力安全委員会といった方向でも、東京... ...続きを見る

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2011/12/09 00:10
「もうダマされないための「科学」講義」菊池誠、松永和紀、伊勢田哲治、平川秀幸、飯田泰之SYNODOS
SYNODOS は「アカデミック・ジャーナリズム」を旗印とする知の交流スペースという試みであり、ネットでの活動以外にもセミナーやレクチャーを開催する組織であり、「専門知」に裏打ちされた言論を発信することを目標としている。ともすれば誰も読むことのない紀要に論文を発表して業績として安穏としている大学人と、ひたすら露出量が増えることを目標に質の低い議論をばらまく知識人が相当な数を占めることを考慮すると、現代社会に関わっていこうとする姿勢は貴重なものといえる。一方で、後者と同様の単なる売名という批判や嫉... ...続きを見る

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2011/11/27 23:59
「プルトニウムの恐怖」高木仁三郎
本書は1981年に出版されているが、これは1979年のスリーマイル島事故、1986年のチェルノブイリ事故の間の時期に相当する。原子力技術についても説明のある本書であるが、現在読んでもそれほど大きな違和感は感じられない。むしろこれだけ丁寧にかつ冷静に原子力の問題点が述べられた新書が発刊されている日本において、福島の事故が起こってしまったことはきわめて残念なことと言わざるを得ない。東京電力や経産省をはじめとする官僚達や政治家の中には、本書を読んだ方もいくらかはいるだろうが、それが原子力政策を転換する... ...続きを見る

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2011/11/18 22:44
「宗教を生みだす本能―進化論からみたヒトと信仰」ニコラス・ウェイド
著者は、Nature、Scienceの科学記者を経て、「ニューヨークタイムズ」紙の編集委員となり、現在は同紙の人気科学欄に寄稿しているという経歴を持っている。私は未読であるが、「背信の科学者たち」や「心や意識は脳のどこにあるのか」といった著書がほかに知られている。欧米におけるポピュラーサイエンスの一線の書き手の一人と考えて良いと思われるが、「宗教」に関する欧米知識人の認識傾向や思考の限界をリアルな形で提示している点で、大変興味深かった。タイトルや章立ては「進化論」をはじめとする科学的アプローチと... ...続きを見る

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2011/10/10 22:29
「食卓にあがった放射能」高木仁三郎、渡辺美紀子
福島の原発事故を受けて新装再発された版を購入した。4月に再発行された後、8月に第4刷となっている。著者は東京大学原子核研究所助手、都立大学理学部助教授を務めた後、マックスプランク研究所研究員を経て、「原子力資料情報室」を設立している。全くの認識不足で、これまで著者や原子力資料情報室の活動について、今回の事故を期に初めて知ることになった。著者は多数の著作があるので、これまでもその一部を目にしていた可能性はあるものの手に取ることはなかった。「脱原発の市民科学者」というキャッチフレーズを見て、事故前の... ...続きを見る

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2011/09/25 22:25
一流経済学者の講演における似非科学問題
小さなことの揚げ足取りのように受け取られる可能性はあるが、日本学士院賞受賞者でもある大竹文雄さんの講演内容をwebで読み、あらためて「文系」的な意志決定の問題点について考えてみた。「理系」的な発想の典型が自分の考え方であるとはとても思えないが、違和感を感じる部分が何かを書くことで、考え方が整理できるかもしれない。 ...続きを見る

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2011/09/04 15:15
「生物学的文明論」本川達雄
専門分野ではどういう評価になるのかは分からないが、「ゾウの時間ネズミの時間」はポピュラーサイエンスの優れた著作であり、エネルギーの消費と寿命の関係に関する言及など、結果として最近の生命科学の研究のトレンドを先取りしていたように思う。「ゾウの時間ネズミの時間」ではマクロなエネルギー代謝という指標と、生物のサイズ、寿命と言った問題が取り扱われていたが、最近の生命科学ではまさにそういった問題が分子レベルで注目されており、太く短く、あるいは細く長くという生き方の特徴が詳細に解明されつつある。 ...続きを見る

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2011/09/04 13:59
「未曾有と想定外―東日本大震災に学ぶ」畑村洋太郎
著者は東京大学工学部の名誉教授であり、「失敗学」を提唱し、数多くの関連する著作があり、私もそのいくつかを読んでいる。現在は、畑村創造工学研究所をベースに活動しているが、最近、原発事故調査・検証委員会委員長に任命されたことで一般の人たちにも広く知られるようになった。現在は、科学技術振興機構から自らの研究所のページに移されているが「失敗知識データベース」という試みもユニークなもので、事例を読み、あるいは「失敗まんだら」についての記事を読むことで、「失敗学」の姿勢の一端を知ることができる。 ...続きを見る

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2011/08/04 00:49
「官僚の責任」古賀茂明
「日本中枢の崩壊」から読むべきと思われるが、先に新書版のこちらを手に取った。話題の官僚で、与野党の政治家が著者をサポートしており、経産省の辞職勧奨も今のところは空振りに終わっている。退職官僚や非主流派に追いやられた官僚の著書はこれまでにもたくさんあり、近年では高橋洋一の一連の著書が有名である。非官僚の著作としては、猪瀬直樹の道路問題や長谷川幸洋の一連の著作も非常に情報量が多い。現役官僚は組織の人間なので、著者のような事例は比較的少ない。これらの官僚をテーマにした著作群を抽出すると、官僚の生態とい... ...続きを見る

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2011/07/31 21:27
「科学的とはどういう意味か」森博嗣
Bad Scienceにおける著者のゴールドエイカーにも見られた傾向であるが、「科学」教育を受けた論者の現代社会に対する提言は、近年ますます直接的で、厳しさを増しているように思う。マスコミ的に言えば「現代社会の矛盾」ということになるのだろうが、現代社会の抱える問題点のかなりの部分は「科学」というアプローチを適切に採用すれば、今よりはよい対処ができるはずである。それにも関わらず、社会をリードするべき人たちの多くは「科学」を軽視、あるいは敵視している。社会に対していくばくかでも関心をもち、世の中を良... ...続きを見る

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2011/07/18 23:17
復興構想会議に見られる科学軽視
近現代の科学の急速な発展と、それに伴う社会の変化は、人々の生活レベルを大幅に向上させたが、一方で新たな問題も生じている。この新たな問題の中には、従来の人文科学や宗教が取り扱ってきたような人間の心の問題もあるが、一方で科学の進展が急速すぎたために生じていると思われる問題もある。こうした問題の解決に、従来とは異なる全く新たな思考の枠組みが必要かどうかについては、まだ明瞭な結論はでていない。しかしながら、昨今の出来事の中には、従来の枠組みの中で採用されたアプローチが失敗を重ねていることを伺わせる例が数... ...続きを見る

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2011/07/13 23:22
「科学技術イノベーション政策のための科学」は何を目指しているのか
以前の記事で「政策のための科学」が必要という戦略的想像研究推進事業における考え方に疑問を呈した。「政策のための」科学ではなく、科学において採用されているアプローチを政策決定に活用することが大事という主旨で、具体的には、「政策のための科学」などというよく判らない代物を新たに創り出すのではなく、科学の手法に長けた人材を政策決定に活用することが重要というのが私の考えである。そもそも科学で得られた知識を社会に活用するためのプロセスを「科学」として新たに打ち立てようなどという試みは国際的にも例がないが、そ... ...続きを見る

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2011/07/09 20:29
「デタラメ健康科学―代替療法・製薬産業・メディアのウソ」ベン・ゴールドエイカー
著者は英国国民保健サービス(NHS)に所属する医師(精神科医)で、2003年からガーディアン紙に”Bad Science”というコラムを寄稿している。同名のサイトについては本書を読むまでその存在を知らなかった。同様のテーマを取り扱っている「代替医療のトリック」と比較すると、よりくだけた表現で説明されており、親しみやすい。その分限密な論証という部分は犠牲にされているが、本書が対象とするのはハードなビリーバーの層ではないということであろう。一方、「代替医療のトリック」がマスメディアや代替医療業界、製... ...続きを見る

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2011/06/21 22:32
「会議の政治学」森田朗
国家や自治体のレベルで政治的な意志決定を行うために、有識者を集めて、ある課題について審議会が開催されるということは次第に一般にも知られるようになってきた。官僚が議会に対して説明責任を果たすことが当初の設置の目的であるため、議事録が広く公開されることはなく、そういう審議会が開催され、行政側の提案が妥当なものであることが有識者によって確認されたという合意事実が重視される。委員の名前は公開されるが、種々の理由で誰が何を述べたかは分からないように公開されるケースすらある。審議会という制度に種々の問題点が... ...続きを見る

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2011/06/12 10:28
「コンピュータが仕事を奪う」新井紀子
著者は国立情報学研究所の教授であり、研究者の間では有名なResearchmapの開発者である。産業革命が多くの工場労働者を不要な存在に変え、ラッダイト運動を生み出したように、現代はコンピュータがホワイトカラーを駆逐する時代と考えられている。それでは、これからの人間が「失業」しないためには何が必要なのだろう。コンピュータにできないこととは何だろう。そんなことを考える若者にとって本書は必読である。 ...続きを見る

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2011/05/24 22:58
「国家の存亡―「平成の開国」が日本を亡ぼす」関岡英之
「拒否できない日本」で初めて著者のことを知り、その後「なんじ自身のために泣け」を読んだ。日本の様々な施策の多くに「年次改革要望書」というアメリカからの指令が影響を与えていることが広く認識されるようになったのは、著者によるところが大きい。著者の強みはアメリカだけではなく、中国に関しても造詣が深いことであり、両大国に挟まれた日本の行く末を考察する上で重要な示唆がある。著者自身が炭坑のカナリアを自称するように、本書を含む多くの著作は日本に対する警鐘であるため、その表現は幾分煽り気味のところもある。しか... ...続きを見る

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2011/05/09 23:16
「職業としての科学」佐藤文隆
タイトル通り、職業としての科学の成立を歴史的に考察し、今後あるべき姿を議論している。ウェーバーを意識させるタイトルであるが、ウェーバーについての言及やその著作との比較は少なく、マッハとプランク、ポパーとクーンという軸をもって議論が進む。岩波新書ということで硬質の議論の展開を期待したが、著者の交友関係も紹介しながら(少々自慢話っぽい箇所もあるが)、自由闊達な話しぶりという印象を受けた。柔らかい分読者に対する適度な刺激があるが、著者の明確なビジョンが示されるわけではない。「あとがき」に本書のそうした... ...続きを見る

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2011/05/01 21:37
「小学校英語は「活動」で」中嶋嶺雄(朝日新聞―オピニオン)
朝日新聞のオピニオン欄では、一つのテーマについて二人の対立する論者が意見を述べる欄がある。複数ある論点に対してそれぞれの意見がかみ合い有益な意見交換として読める場合もあれば、単なる自説宣伝の場で終始し二人の論者が選択されていることに全く意味が認められないこともある。 ...続きを見る

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2011/05/01 21:34
「心理療法入門(心理療法コレクションY)」河合隼雄
本書は、「講座 心理療法」八巻のそれぞれの冒頭におかれた著者による概要をまとめて一冊としており、その際に加筆修正が行われている。最後には「こもりと夢」というタイトルの講演内容が収められている。シリーズ各巻の巻頭言なので、執筆者の原稿の紹介を交えながらアウトラインが要約されているという内容を予想して読んだが、それは最初の方だけで、中盤以降は案に相違して濃い内容であり、今回のコレクションの中では最も読むのに時間がかかった。「心理療法入門」というタイトルが付けられていることにも納得がいく内容であった。... ...続きを見る

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2011/04/25 22:52
「伊藤博文―知の政治家」瀧井一博
私の世代では、お札と言えば伊藤博文か聖徳太子の肖像であり、最近のものは期間が短いこともあり馴染みが薄い。一方で、学校で近現代史をまともに習うことはなかったために、所謂明治の元勲と呼ばれる人たちに関する知識については甚だ乏しい。近代日本のデザインを誰がどのようにして決定したかは大変興味深い問題であり、伊藤博文こそは最重要人物の一人であるのは間違いない。ところが、本書でも何度か触れられるようにその実像や思想家としての側面については一般によく知られているとはとても言えない状況である。維新と言えば司馬遼... ...続きを見る

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2011/04/05 23:08
「「予防接種は「効く」のか?‐ワクチン嫌いを考える」岩田健太郎
著者は神戸大学医学部の微生物感染症学講座の教授であり、著書も本書だけではなく多数出版されている。「楽園はこちらがわ」というブログも医療関係者の間では有名なのではないだろうか。一昨年のインフルエンザ騒動でも、いち早くガイドラインや研修医へのアドバイスを提示されており、厚労省の新型インフルエンザガイドラインに対する的確なパブリックコメントも記憶に新しいところである。近著の「「患者様」が医療を壊す」もかなり気になるタイトルで、是非読んでみたい。「バイオテロと医師たち」はアメリカにおける炭疽菌テロへの関... ...続きを見る

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2011/01/27 00:34
「なぜ科学を語ってすれ違うのか‐ソーカル事件を超えて」ジェームズ・ロバート・ブラウン
「サイエンス・ウォーズ」と呼ばれる論争について、私の知る範囲では必ずしも日本では適切に紹介されているとはいえないような気がするが、それは単に宗教的なバックグラウンドの問題ばかりではなく、西洋哲学の伝統とも関係があるのかもしれない。一人の科学者として見た場合、「ソーカル事件」のインパクトとは、ポストモダン思想の一部にはここまで知的退廃が進んでいるのかという驚きであったが、本書を読むことを通じて、そこにはより大きな思想的背景が存在することを理解できた。最終章まで読むと、本書は人間の営みの中で科学とい... ...続きを見る

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2011/01/04 00:54
「偶然とは何か‐その積極的意味」竹内啓
著者は東京大学の経済学部出身の大学教授である。偶然について、数学的な確率論の話に始まり、大数の法則と中心極限定理について述べた後に、生物の進化における偶然の役割にふれ、「運・不運」の問題、歴史の中の偶然という流れで議論が進む。第5章以降は著者の社会へのメッセージであり、本書の中で大事な部分ではあるが、必ずしもそれまでの議論を滑らかに受けたものとはなっていない。人間の管理の及ばない領域である偶然についての言及は重要なものであるが、その裏には「神」が見え隠れするところがあり、悪しき宗教的なものに容易... ...続きを見る

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2010/12/10 21:02
「理科系冷遇社会‐沈没する日本の科学技術」林 幸秀
著者は、東大工学部修士課程を修了後、科学技術庁に入庁し、2003年には文科省の科学技術・学術政策局長、2006年には文部科学審議官、2008年に退官後はJAXA副理事長に就任し、現在は東京大学先端科学技術研究センターの特任教授という経歴をもつ。その著者がこのようなタイトルのもと、「警鐘、提言として」著した本書であり、なにがしか科学行政の意思決定についての事情が分かるのではないかと考え手に取ってみた。 ...続きを見る

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2010/12/07 22:18
「アメリカン・ドリームという悪夢‐建国神話の偽善と二つの原罪」藤永茂
著者は長年カナダのアルバータ大学教授を務め、例えば「分子軌道法」(岩波書店)という著書があることからも察せられるように、自然科学の研究者である。しかしながら、近年はアングロサクソン的な「白人の欺瞞」とは何かというテーマを一つの軸に、著書やブログを通じた活動を続けている。本ブログでも、著書の一つ「「闇の奥」の奥」を取り上げた。本書でも長きにわたるカナダ生活を通じて著者に大きなモチベーションが生まれてきた様子が描かれているが、いわゆる「白人」と真摯につきあいをする際に感じられる大きな違和感は何かとい... ...続きを見る

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2010/10/31 23:06
「生物多様性とは何か」井田徹治
著者は共同通信の科学部の記者で、地球温暖化や地球環境をテーマとした著書がある。本書は昨今話題になっている「生物多様性」についての取材をまとめたものであり、どうして生物多様性を維持していく努力が必要なのか、今後の見通しはどうなのか、現在どのような取り組みが行われているのかという項目が手際よく解説されている。「生物多様性」問題の入門として非常に役立った。個々の事例を見ると、様々なレベルの取り組みがあることが理解できる。一方で、巨大な熱帯雨林の消失といった問題とある特定の種を保存する取り組みとを比較す... ...続きを見る

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2010/10/07 23:31
「財務官僚の出世と人事」岸宣仁
読売新聞の記者として大蔵省の記者クラブである「財政研究会」を長く担当した著者の取材メモをもとにした本書は、財務官僚のある一面を分かりやすく描いているようである。記者クラブという特殊な組織を介した取材であり、近年その悪弊が問題とされる側面については殆どふれられることはないが、いわゆる夜討ち朝駆けと言われる一般の人間からすれば非常識な取材の様子は伺える。ただでさえ激務の上、少しでも情報を得ようとする不勉強な記者たちの相手をいちいちしなければならないというのは、中央官僚というのは何と大変な仕事かと思う... ...続きを見る

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2010/09/25 14:33
「希望難民ご一行様‐ピースボートと「承認の共同体」幻想」古市憲寿、本田由紀(解説と反論)
「「あきらめろって言うな!」40代・東大教授」「「若者をあきらめさせろ!」20代・東大院生」というキャプションのもと、著者と解説者が背中合わせになった写真はなかなか効果的で、つい手にとってしまった。本書は著者の修士論文をもとに、新書向きにエンターテイメント性を加えて書き直されたものである。著者は現在東京大学総合文化研究科の博士課程に在籍しているが、一方で有限会社ゼント執行役という肩書きも紹介されている。ゼントの方は何のためのwebサイトなのかちょっと判然としない、ちょっと人を喰ったような内容で、... ...続きを見る

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2010/09/15 01:33
「行動経済学‐感情に揺れる経済心理」依田高典
帯には「経済学の“王道”にして最先端」という少々大げさな惹句が書かれており、著者の前書きにも今さらブームに乗ってこうした啓蒙書を書くのは恥ずかしいという気持ちが述べられている。著者は1965年生まれで現在京都大学の教授であることから、おそらく大変期待されている新進の経済学者と思われる。恥ずかしいとは書かれているものの、素人にも分かりやすく解説しようという意気込みが伺える内容である。ベイズの定理と医学検査における医師の判断などは大変面白い課題であり、ムロディナウの「たまたま」でも触れられていたよう... ...続きを見る

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2010/07/26 23:29
「ユング心理学と仏教(心理療法コレクションX)」河合隼雄
本書には、国際的に活躍するユング派の心理学者を招いて行われるフェイ・レクチャーで行われた講演が収められている。著者が本書でも述べているように、英語への翻訳を意識して書かれた文章は、国内で著された著作とは少し異なるリズムがある。また、聴衆が日本人ではなく、アメリカ人であるという点も十分意識されていることが伺える。著者を招いたローゼン博士の緒言が付されているが、そこにはこの講演を理解するために払われた努力が伺えるが、一方でローゼン博士にとって率直に理解が困難な部分もあることが仄めかされている。また欧... ...続きを見る

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2010/07/04 00:11
「心理療法序説(心理療法コレクションW)」河合隼雄
心理療法家を目指しているわけでもないのに順にこのシリーズを読んでいる理由の一つに、著者が京都大学理学部を卒業し、高校の数学教育に携わった後に、心理療法家への道を歩んでいるという背景に私が大きな関心をもっていることがあげられる。心理療法は科学ではないが、科学の方法論から完全に離れたところに良い理論は打ち立てられないという著者の考え方は、非常に柔軟かつ論理的な(筋の通った)著者の姿勢の根底にあるものだと思う。カウンセリングを志す人で、数学を事実上パスしてしまったような人には河合隼雄の主張は半分くらい... ...続きを見る

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2010/06/02 00:29
「代替医療のトリック」サイモン・シン&エツァート・エルンスト
代替医療は先進国共通の問題のようで、本書は代替医療を積極的に評価するチャールズ皇太子に捧げられている。日本でも鳩山首相が代替医療に好意的であることはよく知られているところである。現代医療への批判が代替医療を支える肥やしの一つであることは論をまたないところであるが、昨今の政治主導という名の下の無策も含め、反知性主義の勢いは留まるところを知らない。知的水準の高い「冷たい」医者のいうことは信用できないが、個人の身体のことを真剣に考えてくれる「暖かい」代替医療関係者は信用できるというのは、相手が自分より... ...続きを見る

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2010/05/17 23:47
「生と死の接点(心理療法コレクションV)」河合隼雄
医療の進歩のおかげで高齢化社会が実現しているが、資本主義や欧米的な枠組みの限界が近年相次いで指摘されるようになっていることを合わせて考えると非常に興味深い。本書に幾度か紹介されるが、欧米における壮年男性を一つの理想とする人生のとらえ方は、現在のように人生が70-80歳まである社会においては、無理があるのは間違いないだろう。欧米でも高齢の実力者が物事を決定することは多いだろうが、この際に高齢者ならではという枯れた判断ではなく、いつまでもアグレッシブな姿勢が好まれるのであれば、勢い誤った判断も増える... ...続きを見る

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2010/05/11 23:19
「たまたま‐日常に潜む「偶然」を科学する」レナード・ムロディナウ
著者はファインマンの弟子にあたる理論物理学者であるが、同時にスタートレックの脚本家でもあり、ゲームプロデューサーでもあり、スティーブン・ホーキングとの共著もある。訳者あと書きでは、そうした著者の業績とあわせて、どうして本書がこのような形で世に出てきたのかが分かりやすく紹介されている。世の中で起こる現象が大いに偶然に左右されているにも関わらず、人間の頭脳がそこに必然性を見いだそうとするために起こる様々な問題が本書では鮮やかに描かれている。巻頭と末尾に置かれたホロコーストのサバイバーである著者の両親... ...続きを見る

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2010/03/05 00:26
「インフルエンザ21世紀」瀬名秀明、鈴木康夫(監修)
本書は、まだ記憶に新しい2009年のインフルエンザパンデミックにおいて、日本ではどのような人たちが何を考え、どう行動したのかについて、多くの関係者に取材して構成された労作である。パンデミックにおける国内の対策がどの程度の効果を持ち、何が適切で何がそうでなかったかという評価は、詳細なデータが出揃っていない現在では時期尚早である。一方で、実際に渦中にあった人たちの声というのは、このタイミングで筆者が取材しなければ、得ることはできなかったと思われる貴重なものばかりである。多くは領域は幅広いが専門家であ... ...続きを見る

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2010/02/26 23:03
「科学力のためにできること‐科学教育の危機を救ったレーダーマン」(訳)渡辺政隆
本書は1988年にノーベル賞を受賞し、ファインマンにも比されることもあるレオン・レーダーマンの80歳を記念して出版されたアンソロジーである。レーダーマンの業績というのは本書を読むまではよく知らなかったのであるが、アメリカにおける科学リテラシーの向上のために実に精力的に活動している。ノーベル賞受賞という価値を最大限利用しながら、高等教育を支える基礎をどのようにして育むのか(それは結局は国民の科学リテラシーの向上という目標に結びつくのであるが)について真摯な考察と活動を続けてきたのがレーダーマンの重... ...続きを見る

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2010/02/20 01:30
「ルワンダ中央銀行総裁日記‐増補版」服部正也
日本銀行からIMFに出向し、そこからアフリカのルワンダに中央銀行総裁として赴任した著者による記録が本書である。毎日出版文化賞を1972年に受賞しているとのことであるが、読書家の間ではおそらく相当有名な部類に入るのではないだろうか。増補では1994年のルワンダ動乱をめぐる著者の一文と、ルワンダ後の著者の業績をまとめた記事が追加されている。単純に立派な人がいて、その人は日本人であったということなのであるが、本書のような記録を読むとどうしても「良き日本人」という言葉が頭をよぎってしまう。 ...続きを見る

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2010/02/03 23:03
「打ちのめされるようなすごい本」米原万里
文庫版には井上ひさしと丸谷才一による的確な解説があるので、文章家としての著者についてはここを読むだけでもかなりのことを知ることができる(著者から激賞されている丸谷才一のものは読んでいてむずかゆくなるような箇所があるが)。ロシア語通訳の第一人者であると同時に、素晴らしい書評家、エッセイストとしても知られる著者の書評のみを抜粋した一冊である。週刊文春の「私の読書日記」は手にすることがあれば必ず読んでいたので、そういえばこういう書評もあったなあというものも多い。どういう位置づけにあるかにもよるが、実名... ...続きを見る

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2010/01/14 23:51
科学教育の重要性
今回の事業仕分けでは、財務省の主計局が非常に重要な役割を担ったことが次第に明らかとなりましたが、以前少しふれたように、主計官を務める官僚がどの程度当該分野についての見識を持っているかという問題は見過ごすことができない問題点ではないかと考えるようになりました。あわせて、近年大きな問題となっている様々な制度の疲弊と改革の失敗の背景には、我が国における科学教育の軽視があるのではないかと考えます。そこで、これをきっかけに少し考えたことを記録しておきます。 ...続きを見る

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2009/12/31 01:41
RIETI政策対談(2008年6月30日)と事業仕分け・その2
RIETI政策対談(2008年6月30日)と事業仕分け・その1 の続きです。 ...続きを見る

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2009/11/22 23:29
RIETI政策対談(2008年6月30日)と事業仕分け・その1
鳩山政権では大きく予算の規模が拡大しているために、3兆円程度を目標とする事業仕分け作業は有権者向きのショーであるという意見も頷けるものですが、従来公開されてこなかった過程が誰の目にも映るということは新鮮な印象を与えていると思います。一方で、事業仕分けの対象事業は財務省からあらかじめ選定されたものである可能性が高く(この過程は公開されていないようです)、仕分け人のもとにも財務省からの振り付け指示が届いているという報道もありました。ここで大事な点は、財務省が不要、あるいは無駄があると考えている事業は... ...続きを見る

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2009/11/22 23:23
「新薬ひとつに1000億円!?」メリル・グーズナー
本書はアメリカの医療ジャーナリストによる著作であり、原著は2004年に公刊されている。オバマ大統領の医療制度改革が着手されようとしている現在ではいささか話が古いのではという危惧があったが、医薬品研究開発の状況としては当時と現在でそれほど大きな環境の変化はないだろう。むしろ、抗体医薬品の成熟などを通じて医薬品開発の手詰まりな状況は悪化しているかもしれない。本書のモチベーションは、製薬企業が主張する「新薬ひとつあたりの研究開発費は8億ドル」という見積は正しいのかという疑問にある。様々な調査の末、実際... ...続きを見る

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2009/11/18 00:08
「医療崩壊の真犯人」村上正泰
著者は1974年生まれの元大蔵官僚で、厚労省出向中に医療制度改革に関わり、2006年に退官している。現在は日本国際フォーラムという独立系の政策シンクタンクに所属して活動しているが、著書の経歴には現在の所属に関する記載はない。現役の若手の官僚が退官し、シンクタンクにおける分析、評論活動に移る経緯は大変興味深いが、こうした背景を欠いて本書を評価することは難しい。本書の内容とは離れるが、官僚として政策を作る当事者の立場を離れ、シンクタンクから評価をする立場へ移る動機というのはどういうものがあるのかとい... ...続きを見る

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2009/11/07 14:26
「入門 哲学としての仏教」竹村牧男
仏教は他の世界宗教と比較して哲学的な要素が強い印象があるが、著者はタイトル通り仏教を哲学という場に持ちだしたときに、どのように捉えられるか、哲学において現在課題とされている問題に対して仏教の思想がどの程度有効であるのかを議論している。「人は如何に生きるべきか」という課題は有史以前から人間の思索の主要なテーマであり、こうした課題にモダンも何もないと思われるのだが、著者はしきりに仏教思想をモダン、モダンと持ち上げている。それほど、現代思想、ポストモダンに阿って議論する必要はないのではないだろうか。そ... ...続きを見る

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2009/11/01 11:26
「民族学の旅」宮本常一
「忘れられた日本人」は、日本人の「生きる」姿を考える上で欠かすことができない名著であるが、そこでの独特の文章や観察、そして話を聞く力はどこから生じているのだろうというところを不思議に感じていた。本書は著者による自伝的な内容であり、家族のことから、柳田国男や渋沢敬三という師との交流、民族学への著者のスタンスが語られている。著者の観察眼は自らに対しても曇ることはなく、師が自分を見いだした理由や、自らの恃むところが巻頭の「はじめに」で明晰に述べられている。淡々とした筆致であるが、民族学、さらには人が生... ...続きを見る

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2009/07/10 00:49
「進学格差‐深刻化する教育費負担」小林雅之
週刊誌は中吊り広告以上のことは書いていないということはよく指摘されるが、本書はタイトルと表紙の文章以上の価値がない点で週刊誌的である。 ...続きを見る

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2009/06/13 23:32
「完本‐1976年のアントニオ猪木」柳澤健
著者は橋本治の弟子であるようだが、日本におけるプロレスの特異な発展の姿を、アントニオ猪木、特にその1976年の姿に焦点を置くことによって、魅力的に描いている。アマゾンの書評などでは、コアなプロレスマニアと思われる評者にかなり低い評価を与えられているようであるが、普段からプロレス評論を読まない私にとってはかなり興味深い内容だった。著者はこの魅力的な素材に溺れることなく、非常に読みやすい文章で、ある種淡々とした筆致で描いているところが優れている。 ...続きを見る

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2009/05/25 00:03
「回復力」畑村洋太郎
「失敗学」で有名な畑村洋太郎の新作であるが、あとがきにあるように「失敗者に温かい視点」を私たちがどのように身につけるかという点に重点が置かれている。「失敗学」関連の著作を読めば分かるとおり、著者は「失敗」というものはいくら用心しても起こるものというスタンスで一貫している。「失敗学」では「失敗」からどのように学ぶかに重点が置かれるが、「失敗」が避けられない以上、そこからどう回復するかという問題も重要である。著者ほどたくさんの「失敗」の事情を知るものも少ないと思われるが、その経験は「失敗からどう学ぶ... ...続きを見る

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2009/05/23 23:04
「自由と民主主義をもうやめる」佐伯啓思
本書は産経新聞主催の正論大賞受賞を記念した講演会の記録をもとに執筆されたものであり、いわゆる論文形式のものよりは幾分読みやすく、著者の意図が分かりやすく述べられている。様々な用語にはその背景となる議論の歴史があるということは言うまでもないが、こうした講演録を読むと、平易な言葉では語ることができない人文科学とは何だろうと考えてしまう。著者の説く「保守」の概念は非常に分かりやすく、これが世の中で如何に誤用されているかがよく理解できる。アメリカが原理主義的な革新であるというのはまさにその通りであり、ア... ...続きを見る

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2009/05/19 22:34
「人類は「宗教」に勝てるか‐一神教文明の終焉」町田宗鳳
著者は京都の臨済宗大徳寺で僧侶として修行した後、渡米し神学部で学んだ宗教学者である。著作を手にするのは初めてと思っていたが、今調べてみると「法然対明恵」を既に読んでいたことに気づいた。宗鳳という号をもつ僧侶の著作と考えれば相当挑戦的なタイトルのようにも感じられるが、より直接的な「なぜ宗教は平和を妨げるのか」という著作もあり、著者が到達したある境地を示すものと考えていいように思われる。 ...続きを見る

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2009/05/12 22:52
「無駄学」西成活裕
「渋滞学」の刊行により広い方面で反響を得た著者が、自らのテーマを発展的に展開したものが、この「無駄学」という位置づけになるようである。著者がおよそ10年間をかけてアカデミアにおいて研究を深めた中から生み出された「渋滞学」と、そこから約2年後に刊行された本書とを比較することは適切ではないが、同じ出版社から似たような体裁で出されているものの、二つの著作のポジション、および著者の姿勢は大きく異なるという印象をもった。 ...続きを見る

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2009/04/19 00:33
「渋滞学」西成活裕
著者は「渋滞学」を提唱し、学際的な活動を続けながら、本書の執筆に至っている。本書は一時期ベストセラーに顔を出しており、2007年末(刊行から1 年も経っていない)で10刷に達している。著者は1967年生まれの第一線の研究者であり、こうした優れた研究者がリタイアする前にこうした一般向けの科学書を著すことの価値は大きい。 ...続きを見る

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2009/04/12 18:05
「思考停止社会‐「遵守」に蝕まれる日本」郷原信郎
著者の本は初めてであるが、まずその経歴に注意を惹かれた。東京大学理学部を卒業後、東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所などを経て現在は弁護士であり、大学教授でもある。コンプライアンスの専門家ということで、本書にも紹介されているがTBSによる不二家のバッシング問題や社保庁の年金記録改ざん問題では調査委員会のメンバーとして直接事件に関わっている。法曹養成改革の失敗に対する著者の辛口の評価は、現在の法曹に対する失望感や閉塞感の表れでもあるだろう。著者の分析や提言の明晰さは、理学部という... ...続きを見る

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2009/04/02 23:52
「メディアとプロパガンダ」ノーム・チョムスキー
本書は1994年に廃刊となったLies of Our Timesという月刊誌に寄稿された批評であり、主としてアメリカのメディアが、何をどう報じたのか、また何を無視したのかを論じている。10年以上前の事件が取り上げられているために、話題としてはいささか旧聞に属する。何故このタイミング(2003年に発刊)でまとめられたのかは不明であり、現代の国際情勢に対する批評を求めるのであれば、他の著作を参照しなければならない。また、本格的なチョムスキーの批評とは異なり、短信を雑誌に投稿するというスタイルであるた... ...続きを見る

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2009/03/25 01:10
「大学「法人化」以後‐競争激化と格差の拡大」中井浩一
タイトルの通り、法人化以降の大学をテーマとして、いくつかの切り口から取材を行っている。論文捏造というセンセーショナルなテーマに始まり、産学連携、教育大学、附属病院・医学部、そして最後に地方大学という順で話題が進む。やや性急な文章は荒削りであるが、その分情報の密度は濃い。「法人化」された大学は当然国立大学が中心であり、科学研究費補助金(科研費)を始めとする競争的資金の配分の偏りを考慮すれば、本書で問題となるのは地方の国立大学である。本書は地方国立大学の抱える問題を最終的に分かりやすく読者に理解させ... ...続きを見る

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2009/02/14 00:24
「2日で人生が変わる「箱」の法則」アービンジャー・インスティチュート
前著で「箱」の存在とそこから脱出する方法に気づき、会社経営にこの要素を取り入れることにより未曾有の成功を得ているという設定のルー・ハーバートが、初めて「箱」の考え方に出会った際のエピソードが本書では描かれている。前著ではやり手で有能な社員が、自らに欠けている要素を指摘され、反発や疑問を抱きながらも、最終的には「ザグラム社」の社是ともなっている「箱」にまつわる知恵を自分のものにしていく。本書のルー・ハーバートのエピソードも同様の流れで、傲慢で自己中心的な主人公が「箱」の存在を知り、うろたえながらも... ...続きを見る

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2009/02/06 22:24
「自分の小さな「箱」から脱出する方法」アービンジャー・インスティチュート
書店では、最近とみに増えている自己啓発系のコーナーに置かれていることが多く、実際にそうした需要は高そうであるが、いわゆる「〜ハック」的な軽い内容の本ではない。アメリカ社会は、崇高な人類としての理想を追い求める実験国家であると同時に、超宗教的な中世社会と類似した国民を多数抱える失敗国家でもあり、そうした全米でベストセラーである自己啓発本となれば、まずは疑ってかかる要素はたくさんある。一般に欧米的なものの見方にコンプレックスをもつことが多い日本人は、欧米人が悩む問題を自身は本当は軽く乗り越えているに... ...続きを見る

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2009/02/03 00:19
「サブリミナル・インパクト‐情動と潜在認知の現代」下條信輔
最先端の研究を行う潜在認知の専門家による本書は、興味深い知見と洞察に満ちた内容で非常に参考になった。潜在認知が広告や政治に利用される危険性を指摘しながらも徒に不安を煽ったり非難をすることはなく、科学者らしい忍耐で事例を冷徹に解析し、将来への備えとして何が必要であるかを述べている。終章では著者の自画自賛も書かれているが、広告や政治の標的として現代社会で危険にさらされている潜在認識という領域こそが独創性の源であり、人間の可能性を広げる場として機能していることが紹介され、明るい展望を提示して締めくくら... ...続きを見る

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2009/01/30 00:12
「コスメの時代‐「私遊び」の現代文化論」米澤泉
縁あって献本いただくことになり、通常読むことのないジャンルの本書を手にする機会を得た。インターネットとサブカルチャーの親和性は極めて高いので、例えばネットで話題のニュースやブログや話題を何とはなく目にするうちに、それなりの情報は入ってくる。意識をしたことはなかったが、知らず知らずに著者が引用するフィールドの文章なども目にしていることに気づいた。文章は軽快で、私のような門外漢であってもそれなりに流行の変遷や、その背景をおおよそ理解できるように工夫されている。時代を捉えるキーワードや言葉がうまくちり... ...続きを見る

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2009/01/27 14:10
「分断される日本」斎藤貴男
著者の「カルト資本主義」は、一流企業における自己啓発や研修活動の根源に労務管理的な発想があることを描いておりなかなか興味深かった。所謂船井ワールドは、どうしてあれほど似非科学を頻用し、オカルトめいた言説をどんどん流すのか、また中小企業の社長の中にも心酔する人たちが多いのは何故かと言った問題を理解する上で役に立つ内容である。しばらく、著者の本は読んでいなかったので、久しぶりに文庫を手に取ってみた。ところが、残念なことに本書はジャーナリズムではなくアジテーションとして捉えるしかない、非常に貧弱な内容... ...続きを見る

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2009/01/23 22:05
「新書アフリカ史」宮本正興、松田素二編
サックスの「貧困の終焉」から、アフリカの状況に関心をもったものの、やはり世界の他の地域と比べて圧倒的に知識が不足していることに気づいた。そこで、最近発売された本書を読んでみることにした。複数の専門家による著述がまとめられており、スタイルが少しずつ異なるため、通史として読んでいこうとすると少々戸惑う部分もある。しかしながら、従来の白人史観から解放された「ニューヒストリー」という立場は全体を通して貫かれている。スワヒリ語の成立過程や、ネイションビルディングの概念など、アフリカに関係のある人には当然の... ...続きを見る

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2009/01/19 23:25
「山本七平の日本の歴史」山本七平
「日本の歴史」というタイトルが付いているが、通史が書かれているわけではなく、著者の終生のテーマとなった日本人論のひな型が「神皇正統記」と「太平記」を題材に披露されているという内容である。著者の著作の中では初期に位置づけられるものであり、非常に性急にエッセンスを語ろうとする前のめりの姿勢が一貫しているため、大変読みにくい記述になっている。論理的な文章を読むことに慣れている読者であれば、巻頭からしばらくの著者の断言の連続はさぞかし気になるところと思われる。また、「神皇正統記」「太平記」の他にも中国古... ...続きを見る

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2008/12/30 23:46
「アウシュビッツ収容所」ルドルフ・ヘス
アウシュビッツ強制収容所長ルドルフ・ヘスによる遺録であり、著者はその後絞首刑に処せられている。本書の裏表紙や、本誌の紹介では、しばしば「心をもつ一人の人間」という本書の一節が取り上げられ、ヘスが読者と変わらぬごく普通の人間であるという点が強調される。確かに、あからさまなモンスターで、全く人間らしい良心を持たない者こそが収容所長であったに違いないというナイーブな見方は、この手記を読めば覆されるであろう。一方で、幼少時の思い出に見られる家族に対する感情の希薄さ(特に妹に対してはヘス当人も強調している... ...続きを見る

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2008/12/25 00:02
「貧困の終焉‐2025年までに世界を変える」ジェフリー・サックス
ムハマド・ユヌス自伝と共に推奨されることの多い本書をようやく読むことができた。著者はボリビアやポーランド、ロシアをはじめとする多数の低開発国で経済顧問として活躍した経歴をもち、現在はコロンビア大学の地球研究所の所長として本書で述べられているグローバルな貧困問題の解決に取り組んでいる。華麗な経歴は著者が一流の経済学者であることを示しているが、理論に飽きたらず実地で試行錯誤を続けている点が、他の多くの経済学者と一線を画す点であろう。ノーベル経済学賞を受賞するような学者が、たくさんの一般書を出版し、政... ...続きを見る

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2008/11/29 00:23
「つなげる力」藤原和博
著者は、杉並区の和田中学校長として数々の新しい教育改革を成功させ一躍時の人となった。最近では橋下知事からの任命を受け、大阪府の公教育にもその力を発揮しようとしているところである。著者には以前から関心を持っていたのであるが、なにぶんたくさん著書があるので、どこから手を付ければ良いのかと躊躇していた。本書は「つなげる力」というタイトルで帯にも「問題解決のノウハウを全公開」とある。ノウハウであるからには、単なる教育論ではないだろうし、一方で何をやったかだけの話でもないだろうと想像して購入した。結果的に... ...続きを見る

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2008/11/04 23:04
「ニュルンベルク・インタビュー」レオン・ゴールデンソーン
本書は、ナチスの戦犯が裁かれたニュルンベルク裁判中の収容所においてアメリカの精神科医が行ったインタビューで記されたメモをもとに構成されている。序文にはこのインタビューのもつ背景が簡潔にまとめられており、ニュルンベルク裁判について予備知識をもたない読者にとっては大きな助けとなるものである。インタビュワーは戦犯の異常心理、特にサディズムの問題を意識しながら、あくまで精神科医としてのインタビューに徹しようと努めているが、ナチス戦犯の方は裁判や自らの取り扱いに影響する可能性も考慮して回答している点は注意... ...続きを見る

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2008/10/30 01:05
「確率的発想法‐数学を日常に活かす」小島寛之
帯には「予想的中! 天気予報からリスク論まで、先行きを見通す推論のテクニック」とあり、著者の前書きの一部が裏に印刷されている。しかしながら、実際に手にとって読んでみると、この帯は多分に販促のためのミスリードであるように感じてしまう。おそらく多くの読者は本書を読んでも、生活に確率論的な発想を生かすことはないだろうし、本書はそうした至近の御利益を約束するような内容でもない。前半でベイズ理論を易しく説明してもらえる点では御利益があるかもしれない。 ...続きを見る

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2008/09/29 23:09
「ムハマド・ユヌス自伝‐貧困なき世界をめざす銀行家」ムハマド・ユヌス
マイクロクレジットの先駆けとして知られる「グラミン銀行」の設立者であり、2006年にはノーベル平和賞を受賞したバングラディシュのムハマド・ユヌスの自伝。マイクロクレジットとは何か、あるいは貧困問題には特に強い関心がないという向きにも強く推薦したい一冊である。特にこれからどのように生きていくべきかを悩む人にとっては示唆されるところの多い自伝といえる。普段は書評というより感想を垂れ流しているだけであるが、ここを訪れた人には是非読んでいただきたいので、背中を押すような気持ちで紹介したい。 ...続きを見る

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2008/09/21 22:59
「ホロコースト‐ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」芝健介
ホロコーストに関しては、いくつかの映画やこれを題材にしたフィクションで知る程度で、本書を読むまではアウシュビッツが最大で最もたくさんのユダヤ人を殺戮した収容所であると認識していた。本書は、ユダヤ人絶滅を目的としたいわゆるジェノサイドに至る過程を資料をもとに丁寧に解説している。アウシュビッツ以外の重要な絶滅収容所、あるいは独ソ戦における記録すら定かではないユダヤ人の殺戮状況など、初めて知ることが多かった。本書は最初にジェノサイドありきという立場はとっておらず、ユダヤ人問題の解決がドイツからの周辺諸... ...続きを見る

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2008/09/02 00:32
「ジャガイモのきた道‐文明・飢饉・戦争」山本紀夫
著者は植物学をベースに民族学へとシフトした研究者であり、本書とも大きな関連があるがスペインの国際ポテトセンターにも客員研究員として所属していたという経歴をもつ。穀類中心の文明論の中で軽視されてきたジャガイモについて縦横無尽に語られる内容は大変興味深く、次へ次へという勢いで読了した。ジャガイモはアンデス原産の栽培植物であり、その伝播は種々の穀類と比べれば遙かに最近のことであるが、寒冷地を中心に瞬く間に普及し、例えばドイツ料理に見られるように現在ではたくさんの国で確固たる位置を占めている。著者はアン... ...続きを見る

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2008/08/25 23:13
「キャリアデザイン入門 [I][II]」大久保幸夫
リクルート出身で人材マネジメント畑を一貫して歩み続けてきた、まさに専門家によるキャリア論である。基礎力編と専門力編の二分冊となっているが、基礎力編がいわゆる若者のためのキャリア論であり、いくつかの項目は既存のキャリア本とよく似た内容である。例えば、流行の「自分探し」への断罪が含まれていたりする点は、昨今の若者にも目配りのある書きぶりである。一方、専門力編は中年以降のキャリアを如何に築くかという点に主眼が置かれている点で、少なくとも一般向けの本としては類書は少ないように思う。著者の主張したい点もむ... ...続きを見る

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2008/08/07 00:05
「捏造された聖書」バート・D・アーマン
タイトルはセンセーショナルであるが、本文批評というジャンルについての優れた啓蒙書であり、帯にあるように歴史ミステリーとしても読むことが可能なくらい著者の話の運びはなめらかである。キリスト教のもつ得難い魅力は、様々な矛盾を抱えた教義であり、その出自であるように思うが、そうした方向での関心も満たされる内容であった。巻頭から、著者の個人的な精神遍歴と信仰に対する姿勢、本文批評の世界への参入の経緯が描かれるが、最初にこうした著者の立ち位置が知らされることによって本書の魅力は増している。 ...続きを見る

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2008/07/18 00:19
「霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」高橋洋一
「さらば財務省!」のヒットにより、その熱が冷めないうちにと急いで作られた本のようである。立ち読みしていたら買っていなかったかもしれない。口述筆記に持ち込む時間すらなかったようで、インタビュー形式そのままである。もちろん、本にする上ではインタビュー内容の編集や刈り込みは行われているはずであるが、荒削りである。そもそも誰がインタビューしているかはどこにも書いていないのでかなり気持ちの悪い本である。著者は一人だが、内容はインタビューであり、「高橋洋一の人柄」を伺わせるエピソードまで盛り込まれている(し... ...続きを見る

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2008/06/21 23:49
「文明としての教育」山崎正和
著者は評論家かつ劇作家であり、筆者の世代では現代国語のテキストや入試問題でなじみ深い。「世阿弥」や「鴎外‐闘う家長」、「不機嫌の時代」、「柔らかい個人主義の誕生」など、いずれも今でも十分読み応えのある評論である。そのような読書経験を持つものからすると、今回の著作は口述筆記である点が誠に物足りない。後書きにあるように、口述筆記の場合はどうしても共同作業の枠から逃れることができないために、単語一つ一つが吟味されるということがない。大筋こういうことが言いたいという点は伝わるが、そうした言葉の取捨選択が... ...続きを見る

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2008/06/11 23:18
「さらば財務省!」高橋洋一
著者は東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業で、大蔵省の「変人枠」により入省した官僚である。大蔵省と言うところの業務内容を考えると、当然数学には長けた人間が多くて良いはずであるが、実際には法学部出身が大半であり、そのラインが人事の本線である。個人的には法学部出身の秀才が入省後に数学や経済のプロへと変貌していくものだろうと考えていたのであるが、上から下まで法学部では当たり前のことであるがそうした人材が育つはずもない。大学を卒業した状態というのは比較的フレキシブルであり、環境次第で優秀な人間は変... ...続きを見る

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2008/05/22 00:21
「東大で教えた社会人学」草間俊介・畑村洋太郎
「失敗学」や数学本で有名な畑村洋太郎が、機械工学科を卒業後ユニークな経歴を辿り現在税理士でもある草間俊介とコラボレートした講義の内容を起こしたものである。「この本のなりたち」から引用すると、 ...続きを見る

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2008/04/16 22:23
「思考の整理学」外山滋比古
「もっと若い時に読んでいれば・・・」という帯の惹句と、タイトルに少し記憶があったことから、文庫版を購入してみた。1986年の発刊であり、コンピュータについての記述などさすがに時代を感じさせるものがある。また、いわゆるアイデアノートに関する記述が結構な分量を占めているが、最近のこの分野の進展と比較するといかにも素朴である。一方で、知識の蓄積だけではない考える力の重要性や、コンピュータによりいわゆる学校教育の優等生が駆逐される可能性の指摘など、先駆的な指摘も行われており、その辺りがいわゆるベストセラ... ...続きを見る

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2008/03/18 23:39
「日本を教育した人々」齋藤孝
一般には「声に出して読みたい日本語」やNHKの「日本語で遊ぼう」の監修で有名な著者である。「「できる人」はどこがちがうのか」で三つの力の重要性を学んで以来、時々手にして読むようにしている。近年は特にかなりの多作であり、書きすぎで内容が薄くなっていたり、あるいは繰り返しが多いのではという危惧もあったが、本作に関してはそういう心配は無用であった。 ...続きを見る

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2008/02/18 22:22
「仕事と日本人」武田晴人
著者は東京大学経済学研究科の教授であり、日本経済史が専門である。本書は市民大学における講義をもとにして著されたものであり、そのため読みやすくはなっているが、似たような内容の繰り返しとなっている箇所も認められる。歴史的に「労働」の起源を訪ねることを通じて、賃金を得るための現在の「労働」という観念がごく最近になって確立したものであり、決して歴史的な普遍性をもつものではないことを示している。 ...続きを見る

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2008/02/08 23:33
「愚か者ほど出世する」ピーノ・アプリーレ
動物学者のローレンツの親友という設定の哲学者と著者(ジャーナリスト)の間で交わされた往復書簡という設定で、「愚か者の数が増えるということが人類進化のトレンドではないか」という疑問についての議論が行われている。知的な戯れといった趣のある面白い論考である。優れた発明や技術が瞬く間に普遍化し、共有されるという現代文明の一面を正確に描いており、一読の価値がある。 ...続きを見る

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2008/01/19 01:08
「裁判員制度の正体」西野喜一
著者は元判事で現在は大学教授を務めている。いかなる著書も著者の立場を考慮しなければ、本当の意味や価値は見えてこないように思うが、本書はその点で誠に明快である。裁判員制度の成立の経緯から説き起こし、実際に想定される運用、そして裁判員逃れの方法に至るまで、著者の立場は裁判員制度は稀代の悪法であり決して実施してはならないという方向で一貫している。ここまで態度を明瞭にして書くことは、むしろ著者の意図を損ねるのではと気になるほどの叙述が至る所に認められるが、読み進めるにつれ納得させられる。むしろ、これほど... ...続きを見る

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2008/01/04 23:23
「お金は銀行に預けるな-金融リテラシーの基本と実践」勝間和代
2005年にウォールストリートジャーナルから「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれた著者は、19歳で会計士補の資格を取得し、マッキンゼー、JPモルガンという、金融畑を歩むという経歴の持ち主である。明晰な文章は歯切れが良く、説得力がある。正確さと巧みな表現で、著者自身の本書で意図する狙いはほぼ成功しているのではないだろうか。 ...続きを見る

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2007/12/30 23:51

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