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zoom RSS 「娘が東大に合格した本当の理由‐高3の春、E判定から始める東大受験」隂山英男

<<   作成日時 : 2010/11/27 01:34   >>

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著者は現在立命館小学校副校長、立命館大学教授を務めるが、「100ます計算」に代表される、いわゆる「隂山メソッド」と呼ばれる読み書きの反復練習、早寝早起きの生活改善指導で有名である。また、教育再生会議有識者委員の一人であり、中教審では学習指導要領づくりに関わり、「ゆとり教育」からの方向転換において重要な役割を果たしている。教育の実践者が、「ところでお宅のお子さんはいかがでしょう」と尋ねられることは大変な苦痛だと思われるが、やはり著者ほどの有名人になると避けられない問題のようである。煽りの入ったタイトルや帯の「我が家の隂山メソッド初公開!」という叩き文句など、出版社と編集者は、東大合格を望む全ての親に手に取ってもらおうという意欲満々といったところであるが、本書の値打ちは著者の飾らない率直な経験談の中に潜んでいるように思う。編集者のしかけらしいが、実際に東大合格を果たした娘さんは手記まで書く羽目になって、大変気の毒である。著者は世間へのサービスとして割り切れる執筆であろうが、娘さんまでかり出される理由はないように思う。

著者には3人のお子さんがあり、東大に合格したのは次女ということで、実は他の二人は東大とは関わりがない。著者の独特の表現で、それぞれのお子さんの適性が語られているが、著者の家庭では東大を至上のものとしているわけではないし、また学力向上が全てという方針でもないことが伺える。とはいえ、中教審等の中央の審議会を通じて日本の高等教育の実情を知るうちに、東大に如何に予算が割かれているか(東大の学生に如何にお金がかけられているか)を認識し、また卒業者の能力の高さを理解したことが述べられている。そんな中、基礎的学力がしっかりあり、瞬発的な能力も高い次女に東大受験をそれとなく勧めるようになり、高校3年の春という遅まきながら娘さんもそれに応えるという展開となる。最終的には一浪の末、合格するわけであるが、父子ともに当事者としての緊張感をもちながらも、どこか客観的な姿勢で東大受験という経験が記録されている。

記録の中には教育者としての視点と、親としての視点がバランスよく含まれているが、どちらも大変率直なものであり、著者の業績を考慮すればここまで正直に書いても良いのかなというエピソードもある。しかし、著者の教育の実践力はこんなところに源泉があるのだなと感じさせるものの見方が随所に登場しており、大変興味深かった。自らの教育パパへの復讐が国の政策になってしまった寺脇研の薄っぺらい議論と比べると、本書に登場する、学ぶこと、子どもの能力を伸ばすための議論や実践ははるかに地に足のついた活動である。ゆとり教育の失敗がようやく修正されようとしているところであるが、著者のような実践者が学習指導要領づくりに関わっているというのは誠に頼もしい。

100ます計算は必ず世間で認められ、取材されるようになる、そしてそのときにはこの角度からテレビに撮ってもらうといった「妄想」をもったことが述べられているが、それは現実のものとなっている。具体的な目標を持たない限りは、漠然とした成功などあり得ないというのが、この本の隠れた主張の一つである。いくつかの具体的な「妄想」を持つことによって、それに向けた努力を積み重ねることが自ずとできるという著者の述懐は、ともすれば漠然とした目標を掲げ、日々を空虚に過ごしてしまいがちな全ての人に有益なアドバイスと言えるだろう。「即効性」のレシピはないものの、教育についていろいろと考えさせるヒントが満載されている。

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