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zoom RSS 「ルワンダ中央銀行総裁日記‐増補版」服部正也

<<   作成日時 : 2010/02/03 23:03   >>

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日本銀行からIMFに出向し、そこからアフリカのルワンダに中央銀行総裁として赴任した著者による記録が本書である。毎日出版文化賞を1972年に受賞しているとのことであるが、読書家の間ではおそらく相当有名な部類に入るのではないだろうか。増補では1994年のルワンダ動乱をめぐる著者の一文と、ルワンダ後の著者の業績をまとめた記事が追加されている。単純に立派な人がいて、その人は日本人であったということなのであるが、本書のような記録を読むとどうしても「良き日本人」という言葉が頭をよぎってしまう。

本書自体は1965年から1970年の話であり、今から40年以上前の時代のことを考慮する必要はあるが、人口が減少し経済が縮小しつつある日本が世界に貢献できるとすれば、やはり「人」しかないのではないかと強く感じさせる。日本人ほど人種的な問題にニュートラルに臨める国民はあまり多くないのではないだろうか。国際化が本当の意味で達成されるには、日本人のようにいわゆる島国根性ではあるが、外国人に対して偏見や先入観が小さいことは有利に働くのではないだろうか。著者は旧宗主国であるベルギー人に対してもルワンダ人に対しても非常に公平な見方を一貫して持っている。与えられる教育程度と、その国民の人としてのポテンシャルに対して公平な見方を維持するのは大変なことであり、無学な人を人間的に問題があると判断したり、あるいは嘘つきなのに教育を受けているようなので気づかないといったりした勘違いはいくらでもある。しかしながら、著者はその点についてはかなり客観的であるし、一方で人間というもの全般に対する信頼感がある。個人的な意見ではあるが、欧米人に日本人がイメージする「フェアー」な態度を望むことは非常に困難である。日本人にとって「フェアー」とは、相手と自分の立場が入れ替わっても問題のない状態をいう。ところが、欧米人にとっては必ずしもそういうことを意味しない。ここに国際化に当たって日本人が出来ることがあるのではないだろうか。

「良き日本人」といったが、著者の記述の「格好の良さ」みたいな部分は、今ある程度以上の立場にある大人に最も望まれていることだと思う。写真屋さんの話で、昔であれば会社の記念撮影で、誰が社長かはたちどころに分かったが、今は全く想像もつかないというものがあるが、「立派な人」というカテゴリーをどうにか守らなくてはならないと思う。著者はいろいろ書きたいこともあるにちがいないところ、単なる個人の中傷になってしまうような点については非常に抑えて記述している。また、「ルワンダの人たちが私を慕うのは、総裁という立場のせいであると考え今までつきあってきた」という記述が出てくるが、これも「立派な人」にしか語れないことである。著者のような人物がルワンダの人たちの気持ちに気づかないはずはない。しかしながら総裁として国の仕事をしているからにはそうした感情からは離れるという倫理、これがそうした記述に繋がっているのだと思う。自然にこうしたことが言えるように日々を過ごすことこそが責任ある立場の人間の務めであろう。また、追記の部分でルワンダ動乱についての国内マスコミの浅い認識を指摘する中で、両部族の抗争の激しさについて知るところを述べられている。本文ではそうした話題はそれほど登場しないが、やはり身の危険を感じつつ家族とともにルワンダで暮らされていたわけであり、そうした覚悟と、それをことさら書きたてない慎みには敬服させられる(ご家族の苦労を思うと本当に立派な人たちがいたのだと思わずにはいられない)。

一方、著者はこの後、世界銀行へと活躍の場を移す。世界銀行とIMFといえば、近年では、国情にあわない一方的な指導や、あるいは欧米の私企業に公的サービスを売り渡すことで国家を危機的状況に陥らせることなど、全く持って悪の手先にように描かれることが多い。著者は副総裁として世界銀行にどう関わったのかについても知りたいところであるが、追補の記事を読む限りは途上国民への蔑視や差別といった世界銀行エリートの鼻持ちならない意識に対して苦労されていたように思われる。著者のような人間が世界中で活躍することが、閉ざされた偏見の世界にいる欧米人の一部の目を開かせることになると思われるが、そのようなスケールで活躍できる日本人を送り出すことができるかどうか、甚だ心許ない状況である。

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