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zoom RSS RIETI政策対談(2008年6月30日)と事業仕分け・その1

<<   作成日時 : 2009/11/22 23:23   >>

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鳩山政権では大きく予算の規模が拡大しているために、3兆円程度を目標とする事業仕分け作業は有権者向きのショーであるという意見も頷けるものですが、従来公開されてこなかった過程が誰の目にも映るということは新鮮な印象を与えていると思います。一方で、事業仕分けの対象事業は財務省からあらかじめ選定されたものである可能性が高く(この過程は公開されていないようです)、仕分け人のもとにも財務省からの振り付け指示が届いているという報道もありました。ここで大事な点は、財務省が不要、あるいは無駄があると考えている事業はこれだということが明確になったところにあると思います。

ここでは科学に対する財務省のスタンスはどのようなものかということを、RIETI政策対談の記事をもとに考えてみようと思います。タイトルは「真の教育、研究水準の向上につながる大学改革とは」で、藤城 眞さん (財務省 主税局 税制第三課長/前財務省主計局主計官 (文部科学担当))と玉井克哉 さん(RIETIファカルティフェロー/東京大学先端科学技術研究センター教授)との対談です。自然科学研究の意義を議論するためには、自然科学を学ぶ経験をもつことが最低限の要件だというのが私の意見ですが、現実はそれとはほど遠い状況です。事業仕分けショックに対してはたくさんの自然科学者が意見を述べたはずですが、その中には例えばこの対談で登場する主計官に理解してもらえるものがどのくらいあるのかを考えると、双方の隔たりの大きさに気が遠くなります。科学者には、1)この窮状をどう打開するのかという目先の問題と、2)国の制度をどのように変革すれば科学の力を世の中の役に立てられるか、という二つの問題が突きつけられているように思います。どちらも科学者の力だけではどうしようもありませんが、数少ない意見表明の機会に科学者が見当外れな議論をしないですむようにできないかと考えるものです。

この対談の中ではどのように大学改革をすれば、我が国の高等教育および研究水準が向上するかをテーマに話が進んでいきます。

冒頭では玉井さんの話題の振り方のせいと考えられますが、予算が限られた中では様々な提案について優先順位を付ける必要がある、また大学教育として必要性が生じてきた新たな分野もある(ここで金融工学が取り上げられているのが、いろいろな意味でこの対談の限界を露呈していると思われますが)という議論が出てきます。そこで、社会や企業のニーズという方向に話が進んでいきます。ここでは基礎研究についての議論は些かも出てきません。iPS細胞の話は出てきますが、知財の専門家がアメリカに比べて少ないという話のみで、iPS細胞が見いだされた環境と大学教育という視点の話題は出てきません。

財政の論理からすれば、相対的に重要度の低い分野と高い分野、あるいは研究力の高い部署と低い部署、そういうものをみて、資源を回していくことをやっていかなければならないと思います。


藤城さんからはこうした発言が出てきますが、分野の重要性というものがどのようにして決められるかということについては説明がありません。重要度の高い分野に資源を優先的に充てるというのは当たり前の話で(言い換えれば、そういうことも分からない人を相手にしているというアピールなのかもしれませんが)、どうしてこの文脈でこうした発言が出てくるかは分かりません。今回の仕分けリストを財務省がリストアップしたのだとすると、財務省こそは重要性を決定する能力があるというという理解をしていると考えられます。本当にそうでしょうか。

科学研究にかかる予算の場合、財務省の官僚が理解できる範囲の情報から、「財政の論理」を加えて出てくる優先順位というのは、必ずしも世の中に(あるいは国家に)有用なものとはならない可能性が高いと考えられます。斬新な研究というのは全く新たに一つの産業分野を生み出すようなポテンシャルを持つものであり、そうした研究が現在の官僚に直ちに理解できるようなものでないのはむしろ当然のことと考えられます。逆に容易に有用性が理解できるものというのは、既存の知識の改変や応用であり、インパクトはありません。即ち、誰もが納得できる優先順位という理屈を科学の基礎研究に持ってくることは、一種の自殺行為であり、常に後追いのインパクトのない研究成果しか得られなくなるという結果につながります。すると、主計官が疑わしいと考えようが、研究者という専門家に丸投げしてしまうしかないという部分を残さないことには新たなものは生まれないと考えられます。また、その際には「結果として短期間では経済的効果は一切ない」タイプの研究をどの程度認めるかという歩留まりの議論が必要となるでしょう。この歩留まりは国際的に余裕のある国ほど大きくなることでしょう。しかしながら、切り詰めすぎれば、一切イノベーションが起こらなくなってしまいます。このあたりは、後半のところで、玉井さんが大学で二割くらいは説明ができないがすごい人(研究者には分かるという意味で)も居ても良い、ただし八割は説明が付かないといけないという議論をされています。

私は研究者として、研究内容のクオリティは厳しくチェックする必要があるが、研究課題については少なくとも基礎研究は制約すべきではないと考えます。そして、研究のクオリティのチェックは同業者によるピアレビューにより行うことは十分可能と考えます。

その2に続く。

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2009/11/22 23:29
科学教育の重要性
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