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zoom RSS 「人類は「宗教」に勝てるか‐一神教文明の終焉」町田宗鳳

<<   作成日時 : 2009/05/12 22:52   >>

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著者は京都の臨済宗大徳寺で僧侶として修行した後、渡米し神学部で学んだ宗教学者である。著作を手にするのは初めてと思っていたが、今調べてみると「法然対明恵」を既に読んでいたことに気づいた。宗鳳という号をもつ僧侶の著作と考えれば相当挑戦的なタイトルのようにも感じられるが、より直接的な「なぜ宗教は平和を妨げるのか」という著作もあり、著者が到達したある境地を示すものと考えていいように思われる。

著者はあくまで人文科学的な観点から本書の結論である「無神教的コスモロジー」という概念に到達しているのであるが、私は、どうしてもドーキンスの無神論、宗教全般へのラジカルな否定というものとつなげて考えてしまう。

アニミズムから一神教、そして多神教とのバランスの回復、そして最終的な無神教的コスモロジーという段階を踏んで人間の宗教との関係は高められていくべきという著者の考え方は、どことなくマルクス的な歴史認識を想起させるが、日本人には理解しやすいコンセプトである。この中で、東洋思想を一神教の前段階であるアニミズムと取れば、東洋人は啓蒙すべき未開人であり、逆に多神教とのバランスをとることも可能な第3段階と取れば、逆に西洋人やアラブ人は一神教段階に止まった蒙昧な集団と言うことになる。一神教的な態度というのは多様性を認めない立場であるため、多様性を積極的に容認する態度と比べて、討論や闘争となった際に優位に立ちやすい。一方で、一神教的な姿勢は滅亡まで一直線に突き進む単調さを内に秘めており、このまま地球が一神教的な集団の意のままになるようであれば、彼らに巻き込まれる形で人類が滅亡するというシナリオも想定される。生物学的な比喩をすれば、一神教は人類の精神に感染するウイルスのようなものであり、これを駆逐することが現代の課題ではないかというのが本書のテーマと考えられる。

本書では創造神話の比較が行われるが、日本の国産みが神の間での生殖をそのまま表す内容であるのに対して、一神教の世界では単為生殖を思わせるという指摘も重要である。生命との親和性の低さは一神教の大きな特徴であり、現代において人類が生き残りをかけて工夫を凝らしていく上で大きな障害となっている。

本書や、本書にも取り上げられている安田喜憲の「一神教の闇」では、非常に鋭く一神教の問題点が指摘されており、たくさんの実例をもとに読者は一神教的態度の危険性を理解することができる。しかしながら、後半に展開される部分である「では、無神教的コスモロジーをもとにどのような態度で人は生きていくべきか」というテーマになると、途端に言説の強度が弱まってしまう。西田哲学や、トランスパーソナル心理学は著者の提示する「宗教を棄てた」後の世界を支える考え方としてはいかにも脆弱である。さらに後半の村上和雄の遺伝子の力やジェームズ・ラブロックのガイア理論まで登場するくだりには苦笑せざるを得ない。著者は科学者ではないので、科学的な判断は難しいことは理解できるが、せっかくのテーマがオカルトを持ち出しては台無しである。一番最後の「「愛」の枢軸国」という提案も、既存宗教と似たようなキャッチフレーズであり、本書を手に取る読者の心には響かないのではないだろうか。前半の快調な一神教批判と対比すると、いきなりトーンダウンしてしまっている。

著者による華厳思想の紹介などは非常に大きなヒントを与えており、一神教的態度を変革させるための大事な糸口があるように思える。十牛図などもせっかく登場するのであるから、ここを腰を据えて十分に議論すべきではないだろうか。ユングが理解しようと努力した東洋思想をどのように一神教信者に理解してもらうかが、人類の大きなテーマであるはずである。ユングは西洋ではオカルト一歩手前という取り扱いであるが、生命とは何かという問題を科学的に追求していった場合に、あながちオカルトとは片付けられない問題が生じてくるはずである。集合的無意識と言えばオカルトかもしれないが、脳の構造や機能がヒトでは共通している部分があると言えば、それはオカルトではなく科学の問題である。

いろいろ示唆されるところの多い内容であったので、本書の示す課題はもう少し考えていきたいテーマである。



人類は「宗教」に勝てるか?一神教文明の終焉 (NHKブックス)
日本放送出版協会
町田 宗鳳

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