テーマ:歴史

「足利義政と銀閣寺」ドナルド・キーン

現代の日本人と連続性がある時代、例えばそれは現代人がその時代に放り込まれたとしてどの程度違和感を感じるかという意味であるが、それは東山文化以降というのが歴史家の間ではおおよそのコンセンサスらしい。確かに慈照寺(銀閣寺)を訪れる日本人の多くはそのたたずまいに懐かしさを感じるだろう。本書は、応仁の乱の原因となり政治家としては最低ランクの評価…
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「日本人の人生観」山本七平

司馬遼太郎の日本人論は、著者があるべきと考える日本人像が多分に投影されていて、日本人のこれまでの営みとはどんなものであったかを考える上ではバイアスが大きい。読者である日本人には心地よいところもあるが、しばしば大きな錯覚を招く。山本七平の著作には批判も多いようであるが、戦争を挟んで日本人において何が変わらなかったかを考察する本書の指摘には…
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「ノモンハンの夏」半藤一利

第二次大戦前の満州国とモンゴル人民共和国の国境紛争であるノモンハン事件は、実質的には関東軍とソ連軍との局地戦であり、兵站の重要性の認識が勝敗を決したと考えられている。本書は司馬遼太郎と共に取材をした著者が執筆したもので、戦争そのものの描写はごく控えめであるが、関東軍及び陸軍の高級将校達が状況をどのように認識し、実際にどのように行動したか…
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「人間臨終図鑑1,2」山田風太郎

著者が選んだ古今東西の人物を死亡時の年齢順に並べて、その死に際の様子を描いた異色の読み物である。世間での評価が高いことから読んでみることにした。自分自身が人生の折り返しを過ぎて、そろそろ終末についても関心が湧いてきたという理由もあるかもしれない。著者の小説については殆ど知らないが、エッセイについては非常に巧みで、読者を引き込む文章の力が…
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「水滸伝の世界」高島俊男

水滸伝と言えば、個人的には横山光輝の漫画の印象が強い。何度も読み返したせいか、本書を読んでもそれぞれの豪傑の絵姿が思い浮かぶことには驚いた。著者は在野の中国文学者で、週刊文春の「お言葉ですが・・・」の連載で有名である。「お言葉ですが・・・」の連載を呼んでいた頃は、著者が在野の研究者であるとは知らなかったが、何となくいい意味でも悪い意味で…
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「伊藤博文―知の政治家」瀧井一博

私の世代では、お札と言えば伊藤博文か聖徳太子の肖像であり、最近のものは期間が短いこともあり馴染みが薄い。一方で、学校で近現代史をまともに習うことはなかったために、所謂明治の元勲と呼ばれる人たちに関する知識については甚だ乏しい。近代日本のデザインを誰がどのようにして決定したかは大変興味深い問題であり、伊藤博文こそは最重要人物の一人であるの…
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「明治維新 1858-1881」坂野潤治+大野健一

本書は、日本近代政治史を専門とする歴史学者と、開発経済学、産業政策論を専門とする経済学者とのコラボレーションであり、「開発における指導者とエリート」という国際的な研究プロジェクトを契機として生まれた成果が叙述されている。幕末維新期に日本が苦労をしながらも、何とか危機を乗り切り、欧米列強が支配する国際秩序に入り込んでいったことについては、…
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「ルワンダ中央銀行総裁日記‐増補版」服部正也

日本銀行からIMFに出向し、そこからアフリカのルワンダに中央銀行総裁として赴任した著者による記録が本書である。毎日出版文化賞を1972年に受賞しているとのことであるが、読書家の間ではおそらく相当有名な部類に入るのではないだろうか。増補では1994年のルワンダ動乱をめぐる著者の一文と、ルワンダ後の著者の業績をまとめた記事が追加されている。…
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「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子

本書は、日本の近現代史を専門とする東京大学教授である筆者が、歴史に関心をもつ高校生に対して日本の近代の5つの戦争について行った講義がもとになっている。講義がベースなので、専門書ではなく、対話も交えながらの読みやすい内容である。一般の高校生がテキストをもとに授業で習う(あるいは時間がなくて習わない)歴史のスタイルとは異なり、様々な資料をも…
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「日本人と日本文化」司馬遼太郎、ドナルド・キーン

司馬遼太郎は本書でも自ら述べているように、その作品は小説でもなく研究論文でもない。全体としてはフィクションであることは明らかなのであるが、史実をもとにしており、さらに著者が本文に登場して解説を加えたりする。こうした構成が与える効果は抜群であり、読者は極めて情緒的な形で(ストーリーの力で)著者の文明論なり歴史観を読まされることになる。「街…
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「京都美術鑑賞入門」布施英利

著者は東京芸術大学に所属する芸術学者であり、美術解剖学という領域で批評活動を行っているという紹介が記載されていた。中学3年の息子の修学旅行のガイドとして、京都初心者のためにという気持ちで執筆されたことが前書きに書かれている。購入するまでにそこに気づいておけば良かったのであるが、そのようなスタンスであるため、独断と偏見に満ちた(正確には偏…
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「自由と民主主義をもうやめる」佐伯啓思

本書は産経新聞主催の正論大賞受賞を記念した講演会の記録をもとに執筆されたものであり、いわゆる論文形式のものよりは幾分読みやすく、著者の意図が分かりやすく述べられている。様々な用語にはその背景となる議論の歴史があるということは言うまでもないが、こうした講演録を読むと、平易な言葉では語ることができない人文科学とは何だろうと考えてしまう。著者…
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「メディアとプロパガンダ」ノーム・チョムスキー

本書は1994年に廃刊となったLies of Our Timesという月刊誌に寄稿された批評であり、主としてアメリカのメディアが、何をどう報じたのか、また何を無視したのかを論じている。10年以上前の事件が取り上げられているために、話題としてはいささか旧聞に属する。何故このタイミング(2003年に発刊)でまとめられたのかは不明であり、現代…
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「奇想の系譜‐又兵衛‐国芳」辻惟雄

絵画史における画期となった名作の文庫化ということで手に取った。発刊当時は異端のマイナー画家であった、岩佐又兵衛、狩野山雪、曽我蕭白、伊藤若沖(沖はにすい)、長沢蘆雪、歌川国芳を図表をふんだんに織り交ぜながら紹介している。当時の著者の意気込みもあって、大胆な仮説や、見取りが提示された記述は非常に面白く読むことができる。 卓抜な技術と…
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「東京裁判」日暮吉延

ニュルンベルク・インタビューを読んで、その後いくつか第二次大戦関連の読書をした。本書は最近出た東京裁判に関する解説書であり、東京裁判に関する基本的な知識を得るために読むことにした。私の世代では戦後史は高校までの授業で学習することはない。基本的に近現代史は世界史であれ、授業では触れないというのが当時の習慣であったように思う。よって、東京裁…
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「新書アフリカ史」宮本正興、松田素二編

サックスの「貧困の終焉」から、アフリカの状況に関心をもったものの、やはり世界の他の地域と比べて圧倒的に知識が不足していることに気づいた。そこで、最近発売された本書を読んでみることにした。複数の専門家による著述がまとめられており、スタイルが少しずつ異なるため、通史として読んでいこうとすると少々戸惑う部分もある。しかしながら、従来の白人史観…
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「山本七平の日本の歴史」山本七平

「日本の歴史」というタイトルが付いているが、通史が書かれているわけではなく、著者の終生のテーマとなった日本人論のひな型が「神皇正統記」と「太平記」を題材に披露されているという内容である。著者の著作の中では初期に位置づけられるものであり、非常に性急にエッセンスを語ろうとする前のめりの姿勢が一貫しているため、大変読みにくい記述になっている。…
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「アウシュビッツ収容所」ルドルフ・ヘス

アウシュビッツ強制収容所長ルドルフ・ヘスによる遺録であり、著者はその後絞首刑に処せられている。本書の裏表紙や、本誌の紹介では、しばしば「心をもつ一人の人間」という本書の一節が取り上げられ、ヘスが読者と変わらぬごく普通の人間であるという点が強調される。確かに、あからさまなモンスターで、全く人間らしい良心を持たない者こそが収容所長であったに…
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「「闇の奥」の奥‐コンラッド・植民地主義・アフリカの重荷」藤永茂

コンラッドの「闇の奥」は、コッポラの「地獄の黙示録」の原作として有名であるが、小説そのものも古典として位置づけられており、大学時代の英文学の講義で原文を読んだ経験のある人も多いことと思う。タイトルから、歴史的な事実とコンラッドの著作との関係を探った研究書と予想していたのであるが、内容としては「闇の奥」のテキストを読み込むようなものではな…
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「日本の国宝、最初はこんな色だった」小林泰三

タイトルにある通り、デジタル復元の技術を用いて、様々な日本美術の作品が新たに捉え直されている。Photoshopのような画像ソフトの性能は年々向上しており、また失われたデータを補完するためのアルゴリズムも進歩している。日本史や美術、工芸の専門家の意見をもとに、時には思い切った判断のもと、復元が進められる。場合によっては、復元というよりは…
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「ニュルンベルク・インタビュー」レオン・ゴールデンソーン

本書は、ナチスの戦犯が裁かれたニュルンベルク裁判中の収容所においてアメリカの精神科医が行ったインタビューで記されたメモをもとに構成されている。序文にはこのインタビューのもつ背景が簡潔にまとめられており、ニュルンベルク裁判について予備知識をもたない読者にとっては大きな助けとなるものである。インタビュワーは戦犯の異常心理、特にサディズムの問…
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「ホロコースト‐ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」芝健介

ホロコーストに関しては、いくつかの映画やこれを題材にしたフィクションで知る程度で、本書を読むまではアウシュビッツが最大で最もたくさんのユダヤ人を殺戮した収容所であると認識していた。本書は、ユダヤ人絶滅を目的としたいわゆるジェノサイドに至る過程を資料をもとに丁寧に解説している。アウシュビッツ以外の重要な絶滅収容所、あるいは独ソ戦における記…
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「捏造された聖書」バート・D・アーマン

タイトルはセンセーショナルであるが、本文批評というジャンルについての優れた啓蒙書であり、帯にあるように歴史ミステリーとしても読むことが可能なくらい著者の話の運びはなめらかである。キリスト教のもつ得難い魅力は、様々な矛盾を抱えた教義であり、その出自であるように思うが、そうした方向での関心も満たされる内容であった。巻頭から、著者の個人的な精…
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「熊野古道」小山靖憲

本書は熊野古道が世界遺産に登録される2004年以前に著されているため、世界遺産への登録、およびそれに伴う古道の整備に関する記載はない。世界遺産に登録されているのは伊勢路であり、本書で主として取り上げられている紀伊路ではない(7月9日追記:世界遺産の範囲についてご指摘いただきました。紀伊路も世界遺産に含まれているので、本文は誤りです)。著…
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「謎解き広重「江戸百」」原信田実

浮世絵風景画で有名な安藤広重の「名所江戸百景」、略して「江戸百」の背景が読み解かれている。このシリーズはゴッホによる模写でも有名で、世界の絵画史においても一定の位置を占める作品群である。名所絵で一般的な俯瞰図に加え、大胆な前景のむこうに関心の的となっている対象を描くという斬新な構図を採用したことでも画期的なシリーズといえる。著者はそれぞ…
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「秀吉神話をくつがえす」藤田達生

豊臣秀吉はその出自が不明な点がよく知られている一方で、豊国廟に祀られる神でもあり、それらが一般によく知られているという点でも異色の権力者である。彼の異例の出世に関しては歴史学的にも特異な例として認識されているようであり、従来は革命的な人物である信長の慧眼によるものとして、最近では著者も指摘するように戦国時代の「悪党」的なネットワークを支…
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「足利義満 消された日本国王」小島毅

時々息抜きに歴史物を読みたくなることがあり、そうした本を手に取る。歴史学の世界は、自然科学とは大きく異なり、資料という客観的な証拠はあるものの、過去に対して介入実験を行うわけにもいかないことから、最終的な結論はいずれも検証不能な一つの仮説となってしまう。そのため、フィクションを生業とする作家が相当大胆で面白い推測を打ち出したりすることも…
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