テーマ:書評

「数学の大統一に挑む」 エドワード・フレンケル(青木薫訳)

本書のオリジナルタイトルは”Love and Math”、「愛と数学」である。その所以は最終章を読むとよく理解できるだろう。チューリングやワイルズといった気むずかしいイメージのある数学者と比較すると、著者は、本書のようなポピュラーサイエンスの本や、あるいは一般の人たちに数学の魅力を伝えるべく短編映画まで作ってしまうという点で従来の数学者…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「研究不正―科学者の捏造、改竄、盗用」 黒木登志夫

本書は、科学研究における不正行為を数々の実例を取り上げながら紹介している。取り上げられている領域は、著者の専門性に基づき生命科学、および医学研究中心であるが、インパクトの大きな事例として、考古学(ピルトダウン人事件、旧石器捏造事件)や実験物理学(ベル研究所における研究不正)といった分野にも言及している。実験科学、特に生命科学における研究…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「昨日までの世界―文明の源流と人類の未来」ジャレド・ダイアモンド

著者は「銃・病原菌・鉄」や「文明崩壊」といった著書で有名な研究者であるが、その取り扱う領域は広大であり、学問の専門化が著しい近年にあってそのパースペクティブの大きさは特筆すべきである。本書はその中でも著者のフィールドワークの世界と近い内容であり、経験談もしばしば登場する。タイトルにもあるが、先進国の人々が現在享受している文明やライフスタ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「背信の科学者たち」ウィリアム・ブロード、ニコラス・ウェイド

本書はしばらく前まではブルーバックスから刊行されていたが、絶版状態であった。理研や分生研、医学部を舞台とした論文捏造事件が相次いで報道された本年、まさにタイムリーな再刊といえるだろう。帯にもあるが、大阪大学の仲野先生が強く推薦したこともweb では話題になった。本書は科学者のミスコンダクトを考える上では類稀な事例集となっているが、一方で…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「木を見る西洋人 森を見る東洋人 思考の違いはいかにして生まれるか」リチャード・E・ニスベット

自然科学を研究し、日々西洋人と論文や研究成果をめぐり議論する東洋人にとって本書が取り上げるテーマは極めて身近なものであろう。要素還元的な自然科学の手続きは西洋人にとってはごく自然な思考の方向性であるが、一方で東洋人にとっては一定のエネルギーを注ぐ必要のある意識的な作業である。東洋人の研究スタイルの中には、色々トライしてみて、全体像から仮…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「予想通りに不合理」ダン・アリエリー

本書は、行動経済学分野において活発に発信しているダン・アリエリーのおそらく最も有名な著作である。原タイトルはThe Hidden Forces That Shape Our Decisionsであり、古典的な経済学が想定していた「合理的な人間」を否定するだけではなく、人間の判断の不合理さの背後に存在するメカニズムについても議論されている…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「ガセネッタ・シモネッタ」米原万里

著者は有名なロシア通訳者であるとともに、ユーモアのあるエッセイの作者として多数の作品を世に送り出している。「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は著者がプラハのソビエト学校に居た頃の友人を再訪するという話であるが、否応なく大きな歴史の波にのまれていく個人の人生が見事に描かれている。ユーモアは著者の重要な特質であるが、それにしても本書はタイトル…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「福島原発事故 県民健康管理調査の闇」日野行介

本書は、毎日新聞による福島県の県民健康管理調査に関するスクープ記事の背景を、当事者である記者がまとめた記録である。事実が淡々と記述されるため、スクープ記事そのものを超えるインパクトのある情報が含まれているわけではない。結果的に県民に対する背信行為になりかねない行動をどうして県の役人がやるのかという疑問が生じるが、一方で、もともと役人に県…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「宇宙はなぜこのような宇宙なのか―人間原理と宇宙論」青木薫

翻訳家として数々の素晴らしい作品を紹介している著者の書き下ろしということで、感謝の気持ちも込めて購入。人間原理をめぐる議論は日本人には些か分かりにくい。西洋人は正負の両面で神の問題から逃れることが難しいために、本書のテーマである人間原理についての議論は複雑な展開を見せるが、日本人にとって多宇宙ビジョンは実は「しっくりくる」説明ではないか…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「ファスト&スロー―あなたの意思はどのように決まるか?」ダニエル・カーネマン

生物としての特性をもつヒトと、社会的な存在である人間との間の齟齬は、科学的な研究の対象として極めて興味深いテーマであるとともに、これからの社会をどう良くしていくかを考える上での大きなヒントとなるテーマである。本書はそうしたことを考える上での入門となる名著といえるだろう。 内容は一般向けにかみくだいた説明となっており、門外漢が読んで…
トラックバック:1
コメント:0

続きを読むread more

「科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか」竹内薫

本書は新潮45の連載原稿をもとに加筆修正されたものとのことであるが、単行本化にあたり順序の入れ替え等の編集が施されているため、各項目は比較的まとまった内容の論説になっている。出版社と科学者の間のジレンマの一つは、その本をどう売るかという方向から生じる問題であり、著者の意図しないタイトルが付けられることや、あるいは帯でミスリーディングが与…
トラックバック:1
コメント:0

続きを読むread more

「サイエンティフィック・リテラシー―科学技術リスクを考える」廣野喜幸

タイトルはむしろ副題の方が良く内容を表していて、筆者も本文中で述べているようにリスク論入門として読むとしっくりくる。科学リテラシーというと必ずしもリスク論にとどまらないので、これは出版社のミスリーディングかもしれない。帯には「いかに科学の知識・教養を身に付け、集めた科学情報からいかに物事の本質を見ぬけばいいのか?」とあるが、新書であれば…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「東大理系教授が考える道徳のメカニズム」鄭 雄一

タイトルは出版社のアイデアなのかもしれないが、人文系の学者への配慮が逆効果をあげているようで、むしろ目を引くことになっている。著者は東京大学医学部出身で研究の展開により現在のポジションにいらっしゃるようなので、一般の方が「理系教授」として思い浮かべる人物像とはあるいは異なっているような気もする。本書は「人殺しはどうしていけないのか」とい…
トラックバック:0
コメント:6

続きを読むread more

「教室内(スクール)カースト」鈴木翔

学校の様子は子どもたちから伝え聞く程度であり、都市と地方ではある程度構図も異なることが予想されるが、最近の学校はどうなっているのだろうという関心で手に取ってみた。古市憲寿さんの著作のように本田由紀さんの解説付きである。大学院生としての研究が母体となった新書であるが、学術的にシャープな記述は抑えられている。アンケートやその統計学的な処理、…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「足利義政と銀閣寺」ドナルド・キーン

現代の日本人と連続性がある時代、例えばそれは現代人がその時代に放り込まれたとしてどの程度違和感を感じるかという意味であるが、それは東山文化以降というのが歴史家の間ではおおよそのコンセンサスらしい。確かに慈照寺(銀閣寺)を訪れる日本人の多くはそのたたずまいに懐かしさを感じるだろう。本書は、応仁の乱の原因となり政治家としては最低ランクの評価…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「武器としての決断思考」瀧本哲史

2012年のジュンク堂本店売上1位という帯にひかれて購入(なお2, 3位はワンピースらしい)。決断思考というタイトルから、決断に至るロジックについて書かれた本ではないかと想像したが、読んでみると主な内容はディベートについてのものであった。著者は東大法学部を卒業後、直ちに助手となり、その後マッキンゼーに転職、3年後に独立という経歴で、現在…
トラックバック:1
コメント:0

続きを読むread more

「知の逆転」吉成真由美編

本書はサイエンスライターである吉成真由美さんが、ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンという錚々たる顔ぶれにインタビューした内容をまとめたものである。現代最高の知性にある程度共通した問題意識をぶつけていくという構成上、個々の人物に関心の深い読者にはあっ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「これから「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学」マイケル・サンデル

メディアミックス的な盛り上がりで大いに話題になったサンデル教授の著作をKindle本で発見して購入した。NHKで取り上げられ有名になった講義スタイルは、国内でも真似をする教員が後を絶たず、学生にとっては大いに迷惑であったに違いない。基本的に討議スタイルで講義を行うためには、受講者も相当なインプットが必要とされるとともに、講師はさらにそれ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「日本人の人生観」山本七平

司馬遼太郎の日本人論は、著者があるべきと考える日本人像が多分に投影されていて、日本人のこれまでの営みとはどんなものであったかを考える上ではバイアスが大きい。読者である日本人には心地よいところもあるが、しばしば大きな錯覚を招く。山本七平の著作には批判も多いようであるが、戦争を挟んで日本人において何が変わらなかったかを考察する本書の指摘には…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「統計学が最強の学問である」西内啓(Kindle版)

統計学の成果は様々なwebサービスで活用されており、Googleやマイクロソフト、AmazonといったIT企業が近年、注力していることはよく知られている。IBMがSPSSを買収した事件も当時はいろいろ議論があったようであるが、現在、その判断について疑問を挟む人は少ないだろう。一方、国内で統計学がどのような取り扱いを受けているかを振り返る…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「ノモンハンの夏」半藤一利

第二次大戦前の満州国とモンゴル人民共和国の国境紛争であるノモンハン事件は、実質的には関東軍とソ連軍との局地戦であり、兵站の重要性の認識が勝敗を決したと考えられている。本書は司馬遼太郎と共に取材をした著者が執筆したもので、戦争そのものの描写はごく控えめであるが、関東軍及び陸軍の高級将校達が状況をどのように認識し、実際にどのように行動したか…
トラックバック:2
コメント:0

続きを読むread more

「科学的とはどういうことか」板倉聖宣

本書は朝日新聞社の教育雑誌に連載されていた原稿がもとになって編集されたとのことで、1977年以来68,000部が刊行されている。何となく挿絵に見覚えがあるような気もするので、これまでにどこかで記事を読んでいたのかもしれない。本書は学校図書館協議会選定の必読図書(高等学校向け)に指定されているそうであるが、仮説社というところから出版されて…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「数学で生命の謎を解く」イアン・スチュアート

本書の帯には「最新の研究成果を通して明らかにする21世紀数学の最前線」という惹句があるが、実際に読んでみるとそういう内容ではなかった。Amazonで見つけて購入したが、書店で手に取っていればもしかしたら帯と内容の違いに気がつけたかもしれない。生物学において活用されている数学とはどのようなものか、またその理論や背景が理解できると良いなとい…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「適正技術と代替社会―インドネシアでの実践から」田中 直

著者は東京大学工学部卒業後、石油会社で精製プロセスの業務に関わる傍らインドネシアでの国際協力活動に参加し、その後設立されたNGOでは最終的には石油会社を退職して専従として、本書で取り上げられる適正技術の開発に取り組んできた。「適正技術」とは何だろうと考えて本書を手に取ったが、こうした考え方は人類の将来を考える上で大変重要なコンセプトであ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「主体性は教えられるか」岩田健太郎

「バイオテロと医師たち」の最上丈二が本書の著者であることは後に知ったが、若手が新書を書くことのリスクは医学部の場合はより大きいのかもしれない。神戸大学の教授としてポジションが確立されてからは、本名で数多くの著作が出版されている。デビュー作から相当幅広い関心をもった医師であることは伺えたのであるが、次第に著作の内容も自由度が上がっているよ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「働かないアリに意義がある」長谷川英祐

しばらく前に話題になった本書を読了。多くの一般の読者は、アリやハチといった真社会性生物のエピソードを読んで、否が応でも人間社会を想起してしまうだろう。著者も所々に人間社会との相似性を盛り込んでくるので、そのような印象を持つことは避けられない。著者が実際には基礎生物学の研究を進めながら、人間社会との関連性に言及するところに科研費を始めとす…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「医学と仮説―原因と結果の科学を考える」津田敏秀

未知の課題にどのように取り組むかというアプローチの問題は、自然科学の研究者が受ける訓練のメニューとしては最も重視される項目といって良いだろう。しかしながら、大きな意味ではそのアプローチの方法は自然科学者のみが通暁していれば良いというものではなく、文理問わず多くの人が身につける必要があるということを折に触れ述べてきた。本書は官僚や裁判官と…
トラックバック:1
コメント:0

続きを読むread more

「サイエンス入門Ⅱ」リチャード・ムラー

Ⅱではいよいよ光や量子物理学、相対性理論が取り上げられる。また気候変動についても一章が割かれており、科学者がこの問題をどう認識、評価しているかというプロセスを垣間見ることができる。本書で取り上げられる項目はⅠに負けず劣らず、現代社会を支えるテクノロジーと密接な関係をもつ。一方で、量子物理学が記述する奇妙な世界は、著者の力量をもってしても…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「大人の友情」河合隼雄

「大人の友情」の様々な形が取り上げられ、それについての著者の解説が付されている。刎頸の友や菊花の契り、あるいは走れメロスといった創作における友情は誰しも一つの理想型として想起するものであるが、実際に多くの人が経験する友情はより複雑でほろ苦いものも多い。実り多い友情を得るためには、友情関係に埋没するわけでもなく、一方であるときには心を預け…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

「「しがらみ」を科学する」山岸俊男

若者やあるいは百戦錬磨の老人にとっては本書の評価は容易なのかもしれないが、中間的な年齢層の読者にとっては何とも評価が難しい。若者向けのプリマー新書なので、著者の語り口も自由であるが、冒頭のエピソードなどは全体の中ではちょっと浮き上がっているし、「意欲的に語ってやろう」という意識が強すぎるように感じられた。語り口調もばらばらで、急になれな…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more