テーマ:教育

科学者の退廃

科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)の長はノーベル賞受賞者である野依良治氏である。以下は2016年7月の「持続可能な開発目標(SDGs)と科学技術イノベーション」の基調講演である。 http://scienceportal.jst.go.jp/columns/highlight/20160804_01.ht…
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「数学の大統一に挑む」 エドワード・フレンケル(青木薫訳)

本書のオリジナルタイトルは”Love and Math”、「愛と数学」である。その所以は最終章を読むとよく理解できるだろう。チューリングやワイルズといった気むずかしいイメージのある数学者と比較すると、著者は、本書のようなポピュラーサイエンスの本や、あるいは一般の人たちに数学の魅力を伝えるべく短編映画まで作ってしまうという点で従来の数学者…
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基礎研究の公共性:STAP事件対応の問題点

王や貴族といった特権階級がパトロン的に支援してきた時代とは異なり(ゲイツ財団はこれを想起させるが)、現代の基礎研究は多くの国民の支援により成立している。統計によって数字は異なるが、自由主義経済を標榜するアメリカですら基礎研究については連邦政府が最大のスポンサーであり、税金抜きの基礎研究はあり得ない。例えば、医薬品開発はメガファーマとよば…
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生命科学におけるソーカル事件?

今回のSTAP細胞事件は論点が多すぎて、まるで生命科学のかかえる問題点を整理するために生じたかのような印象をもった。科学者と一般社会との乖離がこのような形で表面化した事件はこれまでなかったのではないだろうか。科学者の視点からは、STAP細胞騒動は既に終わっていて、社会的にどのような形で決着が図られるかのみが関心となっている。国会において…
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「ガセネッタ・シモネッタ」米原万里

著者は有名なロシア通訳者であるとともに、ユーモアのあるエッセイの作者として多数の作品を世に送り出している。「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は著者がプラハのソビエト学校に居た頃の友人を再訪するという話であるが、否応なく大きな歴史の波にのまれていく個人の人生が見事に描かれている。ユーモアは著者の重要な特質であるが、それにしても本書はタイトル…
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「東大理系教授が考える道徳のメカニズム」鄭 雄一

タイトルは出版社のアイデアなのかもしれないが、人文系の学者への配慮が逆効果をあげているようで、むしろ目を引くことになっている。著者は東京大学医学部出身で研究の展開により現在のポジションにいらっしゃるようなので、一般の方が「理系教授」として思い浮かべる人物像とはあるいは異なっているような気もする。本書は「人殺しはどうしていけないのか」とい…
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「教室内(スクール)カースト」鈴木翔

学校の様子は子どもたちから伝え聞く程度であり、都市と地方ではある程度構図も異なることが予想されるが、最近の学校はどうなっているのだろうという関心で手に取ってみた。古市憲寿さんの著作のように本田由紀さんの解説付きである。大学院生としての研究が母体となった新書であるが、学術的にシャープな記述は抑えられている。アンケートやその統計学的な処理、…
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「武器としての決断思考」瀧本哲史

2012年のジュンク堂本店売上1位という帯にひかれて購入(なお2, 3位はワンピースらしい)。決断思考というタイトルから、決断に至るロジックについて書かれた本ではないかと想像したが、読んでみると主な内容はディベートについてのものであった。著者は東大法学部を卒業後、直ちに助手となり、その後マッキンゼーに転職、3年後に独立という経歴で、現在…
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「統計学が最強の学問である」西内啓(Kindle版)

統計学の成果は様々なwebサービスで活用されており、Googleやマイクロソフト、AmazonといったIT企業が近年、注力していることはよく知られている。IBMがSPSSを買収した事件も当時はいろいろ議論があったようであるが、現在、その判断について疑問を挟む人は少ないだろう。一方、国内で統計学がどのような取り扱いを受けているかを振り返る…
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「ノモンハンの夏」半藤一利

第二次大戦前の満州国とモンゴル人民共和国の国境紛争であるノモンハン事件は、実質的には関東軍とソ連軍との局地戦であり、兵站の重要性の認識が勝敗を決したと考えられている。本書は司馬遼太郎と共に取材をした著者が執筆したもので、戦争そのものの描写はごく控えめであるが、関東軍及び陸軍の高級将校達が状況をどのように認識し、実際にどのように行動したか…
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「科学的とはどういうことか」板倉聖宣

本書は朝日新聞社の教育雑誌に連載されていた原稿がもとになって編集されたとのことで、1977年以来68,000部が刊行されている。何となく挿絵に見覚えがあるような気もするので、これまでにどこかで記事を読んでいたのかもしれない。本書は学校図書館協議会選定の必読図書(高等学校向け)に指定されているそうであるが、仮説社というところから出版されて…
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「主体性は教えられるか」岩田健太郎

「バイオテロと医師たち」の最上丈二が本書の著者であることは後に知ったが、若手が新書を書くことのリスクは医学部の場合はより大きいのかもしれない。神戸大学の教授としてポジションが確立されてからは、本名で数多くの著作が出版されている。デビュー作から相当幅広い関心をもった医師であることは伺えたのであるが、次第に著作の内容も自由度が上がっているよ…
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「医学と仮説」をめぐる意見交換について

前の記事で「医学と仮説」を取り上げたが、その後本書をめぐって興味深い意見交換が科学哲学者と著者の間で行われていることを知った。 川端裕人さんのブログ:コメント欄で意見交換の行われたブログ(本文は本書の紹介と推薦) 伊勢田哲治さんのブログ:「つっこみ」と称して問題点が列挙されている その1 その2 その3 自然科学…
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「医学と仮説―原因と結果の科学を考える」津田敏秀

未知の課題にどのように取り組むかというアプローチの問題は、自然科学の研究者が受ける訓練のメニューとしては最も重視される項目といって良いだろう。しかしながら、大きな意味ではそのアプローチの方法は自然科学者のみが通暁していれば良いというものではなく、文理問わず多くの人が身につける必要があるということを折に触れ述べてきた。本書は官僚や裁判官と…
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「大人の友情」河合隼雄

「大人の友情」の様々な形が取り上げられ、それについての著者の解説が付されている。刎頸の友や菊花の契り、あるいは走れメロスといった創作における友情は誰しも一つの理想型として想起するものであるが、実際に多くの人が経験する友情はより複雑でほろ苦いものも多い。実り多い友情を得るためには、友情関係に埋没するわけでもなく、一方であるときには心を預け…
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「「しがらみ」を科学する」山岸俊男

若者やあるいは百戦錬磨の老人にとっては本書の評価は容易なのかもしれないが、中間的な年齢層の読者にとっては何とも評価が難しい。若者向けのプリマー新書なので、著者の語り口も自由であるが、冒頭のエピソードなどは全体の中ではちょっと浮き上がっているし、「意欲的に語ってやろう」という意識が強すぎるように感じられた。語り口調もばらばらで、急になれな…
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「大学改革実行プラン」(文部科学省)についての雑感

「大学改革実行プラン」が文科省より発表されている。およそ5年間の計画で大学教育の質的転換を目指すものという位置づけである。計画策定に当たっては、官僚以外にどのような人たちが関わったのか、あるいは計画の発案、修正といったプロセスの詳細は明らかではないが、当該プランそのものが大学教育改革の必要性を非常に分かりやすい形で示しているような印象を…
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「いかにして問題をとくか」G.ポリア(柿内賢信訳)

「発見学」に軸足をおいた1945年の著作であり、翻訳者の熱意により国内での出版が実現した数学書とのことである。”How to solve it”が原題であり、(数学の)問題に対する解答にどのようにしてたどり着くのか、どうすればそのような発見に至るのかについて、数式ではなく「言葉」で説明されている。対象とする「問題」とは数学の問題であり、…
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「金融が乗っ取る世界経済―21世紀の憂鬱」ロナルド・ドーア

著者は「経済の金融化」そのものが、現代において解決すべき問題であるという視点から本書を著している。経済学について門外漢である人間にとって、「金融化」が世界にもたらした福音が何であるのかを理解することは極めて難しい。経済成長に必要な資本を融通する「金融」を超えた「金融」の役割とは何なのか、またそれは誰のためにあるのかを考えると、先端的な「…
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「御厨貴・東京大学先端科学技術研究センター教授に聞く【最終回】」池上彰の「学問のススメ」

「日本の小さすぎる「首相の器」をテーマに語り合う」という日経ビジネスの連載の最終回である。どの程度の反響が世の中であったかは分からないが、最終回では官僚予備軍としての東大生の問題点がよく取り上げられているように感じられた。由々しき問題が含まれているように思うのであるが、特に危機感をもったやりとりにはなっていないような印象ももった。 …
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「サイエンス入門Ⅰ」リチャード・ムラー

本書は、カリフォルニア大学バークレー校における学生が選ぶ「ベスト講義」の一つをベースにしたもので、YouTubeで公開された講義は大きな反響を巻き起こしたようである。この講義は文化系学生を対象としたものであるため、本書には当然のことながら化学式や数式は殆ど登場しない。おおよそ四則演算とべき乗くらいが計算できれば内容を理解することはできる…
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「知的文章とプレゼンテーション―日本語の場合、英語の場合」黒木登志夫

帯の文句を読むとかなり幅広い対象に向けて書かれた本のように見えるが、実際のところは、自分で英文の論文を執筆する、理系の、特に生命科学を専門とする研究者にとって最も役に立つ内容である。新書であるからタイトルは編集部に責任があるのかもしれないが、これ以外の層の読者にとってはピンとこない箇所もあるだろう。一方で、もう少し適切なタイトルを付けて…
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「小学校英語は「活動」で」中嶋嶺雄(朝日新聞―オピニオン)

朝日新聞のオピニオン欄では、一つのテーマについて二人の対立する論者が意見を述べる欄がある。複数ある論点に対してそれぞれの意見がかみ合い有益な意見交換として読める場合もあれば、単なる自説宣伝の場で終始し二人の論者が選択されていることに全く意味が認められないこともある。 4月30日の朝日新聞では「小学校英語」がテーマであるが、論点はそ…
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「カオスとアクシデントを操る数学‐難解なテーマがサラリとわかるガイドブック」エドワード・B・バーガー

著者らは数学啓蒙、数学教育の分野で有名な研究者であるそうで、著書を読むのは初めてであったが、なるほどと実感できる良書である。アメリカではワトソンの分子生物学やファインマンの物理学のように、超一流の研究者による教科書という伝統もあるが、一方で科学啓蒙・教育を専門とする研究者による教科書や、啓蒙書にも素晴らしいものがたくさんある。出版の究極…
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「娘が東大に合格した本当の理由‐高3の春、E判定から始める東大受験」隂山英男

著者は現在立命館小学校副校長、立命館大学教授を務めるが、「100ます計算」に代表される、いわゆる「隂山メソッド」と呼ばれる読み書きの反復練習、早寝早起きの生活改善指導で有名である。また、教育再生会議有識者委員の一人であり、中教審では学習指導要領づくりに関わり、「ゆとり教育」からの方向転換において重要な役割を果たしている。教…
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「希望難民ご一行様‐ピースボートと「承認の共同体」幻想」古市憲寿、本田由紀(解説と反論)

「「あきらめろって言うな!」40代・東大教授」「「若者をあきらめさせろ!」20代・東大院生」というキャプションのもと、著者と解説者が背中合わせになった写真はなかなか効果的で、つい手にとってしまった。本書は著者の修士論文をもとに、新書向きにエンターテイメント性を加えて書き直されたものである。著者は現在東京大学総合文化研究科の博士課程に在籍…
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「カウンセリングの実際(心理療法コレクションⅡ)」河合隼雄

そう言えば若い頃にはそうした危機が幾度かあったのかもしれないと思うくらい、思春期の危機というのは遠くなってしまったが、所謂中年の危機(「中年クライシス」という著書もある)や、自らの死とどう取り組むかという課題はより身近なものとなってきた。時間とお金さえ許せば信頼できるカウンセラーの手を借りて自己実現の旅を進めたいという気持ちもあるが、日…
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科学教育の重要性

今回の事業仕分けでは、財務省の主計局が非常に重要な役割を担ったことが次第に明らかとなりましたが、以前少しふれたように、主計官を務める官僚がどの程度当該分野についての見識を持っているかという問題は見過ごすことができない問題点ではないかと考えるようになりました。あわせて、近年大きな問題となっている様々な制度の疲弊と改革の失敗の背景には、我が…
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「ユング心理学入門(心理療法コレクションⅠ)」河合隼雄

著者の晩年といえる時期の著作は一般の読者に分かりやすい表現で著されているが、そうした表現の奥にどのような思想が隠れているかについては逆に難解に感じられることが多い。それらと比較すると本書は初期の著述であり、著者の問題意識が明瞭に示されている。学問的な厳密性を失わないよう留意された抑制された表現ではあるが、著者が心理学のどの領域を取り扱い…
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「子どもの宇宙」河合隼雄

著者は「はじめに」でタイトルが大きなものになっていることをわざわざ断っているが、まさに相応しいタイトルであり、子どもの心の中にひろがる世界の大きさへの畏怖を感じることの重要性がしっかりと説明されている。誰もが過ぎる子どもの時代であるが、大人になってしまえば当時の気持ちを復元することは難しい。そこで著者は優れた児童文学をもってくることによ…
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