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zoom RSS テーマ「科学」のブログ記事

みんなの「科学」ブログ

タイトル 日 時
科学者の退廃
科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)の長はノーベル賞受賞者である野依良治氏である。以下は2016年7月の「持続可能な開発目標(SDGs)と科学技術イノベーション」の基調講演である。 ...続きを見る

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2017/01/13 11:34
「数学の大統一に挑む」 エドワード・フレンケル(青木薫訳)
本書のオリジナルタイトルは”Love and Math”、「愛と数学」である。その所以は最終章を読むとよく理解できるだろう。チューリングやワイルズといった気むずかしいイメージのある数学者と比較すると、著者は、本書のようなポピュラーサイエンスの本や、あるいは一般の人たちに数学の魅力を伝えるべく短編映画まで作ってしまうという点で従来の数学者のイメージからはかけ離れている。本書では、ラングランズ・プログラムという大きく異なる数学の領域をつなげるプロジェクトの魅力が分かりやすく語られる。しかしながら、コ... ...続きを見る

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2016/05/09 23:36
「研究不正―科学者の捏造、改竄、盗用」 黒木登志夫
本書は、科学研究における不正行為を数々の実例を取り上げながら紹介している。取り上げられている領域は、著者の専門性に基づき生命科学、および医学研究中心であるが、インパクトの大きな事例として、考古学(ピルトダウン人事件、旧石器捏造事件)や実験物理学(ベル研究所における研究不正)といった分野にも言及している。実験科学、特に生命科学における研究不正として主要なものは網羅されており、著者が期待するように、本書は研究倫理に関心をもつ人たちがまず手に取る本の一冊になるだろう。著者は、昨今相次いで話題となった巨... ...続きを見る

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2016/05/07 22:26
「昨日までの世界―文明の源流と人類の未来」ジャレド・ダイアモンド
著者は「銃・病原菌・鉄」や「文明崩壊」といった著書で有名な研究者であるが、その取り扱う領域は広大であり、学問の専門化が著しい近年にあってそのパースペクティブの大きさは特筆すべきである。本書はその中でも著者のフィールドワークの世界と近い内容であり、経験談もしばしば登場する。タイトルにもあるが、先進国の人々が現在享受している文明やライフスタイルはそれほど歴史があるものではなく、人類の歴史の中ではごく最近生じたものであることが、様々な事例を通して何度も確認されていく。 ...続きを見る

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2014/09/07 00:21
「背信の科学者たち」ウィリアム・ブロード、ニコラス・ウェイド
本書はしばらく前まではブルーバックスから刊行されていたが、絶版状態であった。理研や分生研、医学部を舞台とした論文捏造事件が相次いで報道された本年、まさにタイムリーな再刊といえるだろう。帯にもあるが、大阪大学の仲野先生が強く推薦したこともweb では話題になった。本書は科学者のミスコンダクトを考える上では類稀な事例集となっているが、一方で平均的な科学者像を社会に広める上では非常に問題の多い著作と言える。トーマス・クーンはその主要な著作「科学革命の構造」によって、科学の社会への適切な受容を何十年と遅... ...続きを見る

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2014/08/26 21:43
小保方問題についての早稲田調査委員会の報告書の説明:研究者の厳しい見方の背景にあるもの
早稲田大学の調査委員会の報告書については多くの研究者と同様、大きな衝撃を受けた。何も書く気が起こらないくらいのインパクトがあったが、酷い酷いと嘆いているのは生産的ではないだろう。過疎ブログであるが、少しでも一般向けに補足説明ができると良いと考えているので、参考にしていただければ幸いである。ここでは既にネットで多数指摘されている、この判断がもたらす大きな影響(「明らかに学位に値しない論文であるが、一旦授与した学位の取り消しはしない」ということを大学が明言することによる学位の価値の低下など)というコ... ...続きを見る

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2014/07/20 22:35
「木を見る西洋人 森を見る東洋人 思考の違いはいかにして生まれるか」リチャード・E・ニスベット
自然科学を研究し、日々西洋人と論文や研究成果をめぐり議論する東洋人にとって本書が取り上げるテーマは極めて身近なものであろう。要素還元的な自然科学の手続きは西洋人にとってはごく自然な思考の方向性であるが、一方で東洋人にとっては一定のエネルギーを注ぐ必要のある意識的な作業である。東洋人の研究スタイルの中には、色々トライしてみて、全体像から仮説を導き、これを検証するというものがあるが、これは西洋人には理解が困難なやり方だろう。遠回りに見えることもあるだろうし、場合によっては頭が悪いと見なされる可能性す... ...続きを見る

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2014/06/07 23:50
「予想通りに不合理」ダン・アリエリー
本書は、行動経済学分野において活発に発信しているダン・アリエリーのおそらく最も有名な著作である。原タイトルはThe Hidden Forces That Shape Our Decisionsであり、古典的な経済学が想定していた「合理的な人間」を否定するだけではなく、人間の判断の不合理さの背後に存在するメカニズムについても議論されている。カーネマンの「ファスト&スロー」とあわせて読むと興味深いが、こちらはユニークな実験内容の紹介を通じて、より実生活にヒントを与えるような書き方になっているところが... ...続きを見る

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2014/05/19 09:36
基礎研究の公共性:STAP事件対応の問題点
王や貴族といった特権階級がパトロン的に支援してきた時代とは異なり(ゲイツ財団はこれを想起させるが)、現代の基礎研究は多くの国民の支援により成立している。統計によって数字は異なるが、自由主義経済を標榜するアメリカですら基礎研究については連邦政府が最大のスポンサーであり、税金抜きの基礎研究はあり得ない。例えば、医薬品開発はメガファーマとよばれる巨大企業が主導するものと一般に考えられているが、創薬のタネの殆どはNIHに支援された研究から生み出されている。基礎研究はすぐには経済的な効果を発揮しないことが... ...続きを見る

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2014/05/11 11:01
生命科学におけるソーカル事件?
今回のSTAP細胞事件は論点が多すぎて、まるで生命科学のかかえる問題点を整理するために生じたかのような印象をもった。科学者と一般社会との乖離がこのような形で表面化した事件はこれまでなかったのではないだろうか。科学者の視点からは、STAP細胞騒動は既に終わっていて、社会的にどのような形で決着が図られるかのみが関心となっている。国会において理研の野依理事長が、「(あなたたちが喧伝した)STAP細胞はあるのか?」と長妻議員に質問され、「あるかどうかは第三者の研究による証明が必要で、理研も引き続き調べる... ...続きを見る

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2014/04/22 00:10
「福島原発事故 県民健康管理調査の闇」日野行介
本書は、毎日新聞による福島県の県民健康管理調査に関するスクープ記事の背景を、当事者である記者がまとめた記録である。事実が淡々と記述されるため、スクープ記事そのものを超えるインパクトのある情報が含まれているわけではない。結果的に県民に対する背信行為になりかねない行動をどうして県の役人がやるのかという疑問が生じるが、一方で、もともと役人に県民に対する責任など始めからないのではということもいえる。反社会的な大企業に勤務する社員が勤め先の不正を告発する義務があるかといえば、もちろんそんなことはなく、ひと... ...続きを見る

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2013/11/30 11:50
「宇宙はなぜこのような宇宙なのか―人間原理と宇宙論」青木薫
翻訳家として数々の素晴らしい作品を紹介している著者の書き下ろしということで、感謝の気持ちも込めて購入。人間原理をめぐる議論は日本人には些か分かりにくい。西洋人は正負の両面で神の問題から逃れることが難しいために、本書のテーマである人間原理についての議論は複雑な展開を見せるが、日本人にとって多宇宙ビジョンは実は「しっくりくる」説明ではないかと思う。 ...続きを見る

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2013/10/21 23:11
「ファスト&スロー―あなたの意思はどのように決まるか?」ダニエル・カーネマン
生物としての特性をもつヒトと、社会的な存在である人間との間の齟齬は、科学的な研究の対象として極めて興味深いテーマであるとともに、これからの社会をどう良くしていくかを考える上での大きなヒントとなるテーマである。本書はそうしたことを考える上での入門となる名著といえるだろう。 ...続きを見る

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2013/09/29 09:55
「科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか」竹内薫
本書は新潮45の連載原稿をもとに加筆修正されたものとのことであるが、単行本化にあたり順序の入れ替え等の編集が施されているため、各項目は比較的まとまった内容の論説になっている。出版社と科学者の間のジレンマの一つは、その本をどう売るかという方向から生じる問題であり、著者の意図しないタイトルが付けられることや、あるいは帯でミスリーディングが与えられることは日常茶飯事である。それにしても著者の作品はきわどいタイトルが多く、著者が科学の応援団を自称する一方で、科学に対する誤解やあるいは攻撃のきっかけを与え... ...続きを見る

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2013/09/14 23:07
「サイエンティフィック・リテラシー―科学技術リスクを考える」廣野喜幸
タイトルはむしろ副題の方が良く内容を表していて、筆者も本文中で述べているようにリスク論入門として読むとしっくりくる。科学リテラシーというと必ずしもリスク論にとどまらないので、これは出版社のミスリーディングかもしれない。帯には「いかに科学の知識・教養を身に付け、集めた科学情報からいかに物事の本質を見ぬけばいいのか?」とあるが、新書であればいざ知らず、落ち着いた出版社がするような手ではないだろう。 ...続きを見る

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2013/09/01 21:59
「東大理系教授が考える道徳のメカニズム」鄭 雄一
タイトルは出版社のアイデアなのかもしれないが、人文系の学者への配慮が逆効果をあげているようで、むしろ目を引くことになっている。著者は東京大学医学部出身で研究の展開により現在のポジションにいらっしゃるようなので、一般の方が「理系教授」として思い浮かべる人物像とはあるいは異なっているような気もする。本書は「人殺しはどうしていけないのか」という古くから取り上げられてきた哲学的な問いについて、自らの子どもたちを相手に分かりやすく議論するという内容である。理系らしさというのは議論の展開の方法に特に表れてい... ...続きを見る

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2013/08/14 00:22
「知の逆転」吉成真由美編
本書はサイエンスライターである吉成真由美さんが、ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンという錚々たる顔ぶれにインタビューした内容をまとめたものである。現代最高の知性にある程度共通した問題意識をぶつけていくという構成上、個々の人物に関心の深い読者にはあっさりした印象を与えるかもしれない。一方で、西洋文明の発展の現状を俯瞰する上では、貴重なインタビュー集になっている。 ...続きを見る

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2013/06/22 17:55
「これから「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学」マイケル・サンデル
メディアミックス的な盛り上がりで大いに話題になったサンデル教授の著作をKindle本で発見して購入した。NHKで取り上げられ有名になった講義スタイルは、国内でも真似をする教員が後を絶たず、学生にとっては大いに迷惑であったに違いない。基本的に討議スタイルで講義を行うためには、受講者も相当なインプットが必要とされるとともに、講師はさらにそれを上回る知識と十分な考察をもって授業に臨む必要がある。また、時間内に何らかの考察に耐える結論を引き出すためには、どのような議論の展開があるかという予測ができていな... ...続きを見る

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2013/03/20 17:29
「統計学が最強の学問である」西内啓(Kindle版)
統計学の成果は様々なwebサービスで活用されており、Googleやマイクロソフト、AmazonといったIT企業が近年、注力していることはよく知られている。IBMがSPSSを買収した事件も当時はいろいろ議論があったようであるが、現在、その判断について疑問を挟む人は少ないだろう。一方、国内で統計学がどのような取り扱いを受けているかを振り返ると、世界的に見てとりわけ日本において大きな認識不足があるように思われる。マーケティングのような分野ではその有用性が認識され始めているようであるが、本来の統計学の力... ...続きを見る

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2013/02/18 23:47
「科学的とはどういうことか」板倉聖宣
本書は朝日新聞社の教育雑誌に連載されていた原稿がもとになって編集されたとのことで、1977年以来68,000部が刊行されている。何となく挿絵に見覚えがあるような気もするので、これまでにどこかで記事を読んでいたのかもしれない。本書は学校図書館協議会選定の必読図書(高等学校向け)に指定されているそうであるが、仮説社というところから出版されており、一般の書店で見かけることは少ない。仮説社はホームページをご覧いただければよく分かるが、本書に見られる「やってみよう」指向の「科学」にふれる機会を提供している... ...続きを見る

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2013/01/19 23:06
「数学で生命の謎を解く」イアン・スチュアート
本書の帯には「最新の研究成果を通して明らかにする21世紀数学の最前線」という惹句があるが、実際に読んでみるとそういう内容ではなかった。Amazonで見つけて購入したが、書店で手に取っていればもしかしたら帯と内容の違いに気がつけたかもしれない。生物学において活用されている数学とはどのようなものか、またその理論や背景が理解できると良いなという期待があったが、本書はむしろ逆で、「数学者が理解した現代生物学の紹介」という評価がより適切だろう。出だしのフィボナッチ数と植物、あるいは黄金比の誤解などの記事は... ...続きを見る

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2012/12/28 21:30
自滅する生命科学:研究資金配分が誘導する研究コミュニティの崩壊
山中先生のノーベル賞受賞とほぼ同時に起こったiPS細胞をテーマにした森口さんの事件は、興味本位の話題を新聞やテレビに大量に提供してしまったために、iPS細胞という研究成果が社会に与えるインパクトや課題についての議論を置き去りにしてしまった。当人のキャラクターがあまりにテレビ向きで面白かったことが関心を引いているようであるが、既に明らかになった情報からだけでも相当大きな問題が隠れているように思える。自然科学研究へ社会がどのように投資していくかという問題は、次世代の人々の生活を良い方向で変えていく上... ...続きを見る

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2012/11/12 06:54
「適正技術と代替社会―インドネシアでの実践から」田中 直
著者は東京大学工学部卒業後、石油会社で精製プロセスの業務に関わる傍らインドネシアでの国際協力活動に参加し、その後設立されたNGOでは最終的には石油会社を退職して専従として、本書で取り上げられる適正技術の開発に取り組んできた。「適正技術」とは何だろうと考えて本書を手に取ったが、こうした考え方は人類の将来を考える上で大変重要なコンセプトであると同時に、単なる理想論としてではなく間もなく現実的な課題になっていくのではないかと感じた。 ...続きを見る

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2012/11/12 06:30
「主体性は教えられるか」岩田健太郎
「バイオテロと医師たち」の最上丈二が本書の著者であることは後に知ったが、若手が新書を書くことのリスクは医学部の場合はより大きいのかもしれない。神戸大学の教授としてポジションが確立されてからは、本名で数多くの著作が出版されている。デビュー作から相当幅広い関心をもった医師であることは伺えたのであるが、次第に著作の内容も自由度が上がっているようである。「予防接種は効くのか?」は非常に興味深く読んだが、本書は語りの洒脱さとは裏腹に読み進めるのがつらいところもあった。「科学者の養老化」とでもいえば良いのだ... ...続きを見る

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2012/10/20 23:05
「働かないアリに意義がある」長谷川英祐
しばらく前に話題になった本書を読了。多くの一般の読者は、アリやハチといった真社会性生物のエピソードを読んで、否が応でも人間社会を想起してしまうだろう。著者も所々に人間社会との相似性を盛り込んでくるので、そのような印象を持つことは避けられない。著者が実際には基礎生物学の研究を進めながら、人間社会との関連性に言及するところに科研費を始めとする研究費申請の苦労を思い浮かべたりするのは筋の悪い感想かもしれない。「生物って面白いよね!」では研究費を稼ぐことは現在では困難である。 ...続きを見る

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2012/10/06 23:21
「医学と仮説」をめぐる意見交換について
前の記事で「医学と仮説」を取り上げたが、その後本書をめぐって興味深い意見交換が科学哲学者と著者の間で行われていることを知った。 ...続きを見る

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2012/10/04 00:27
「医学と仮説―原因と結果の科学を考える」津田敏秀
未知の課題にどのように取り組むかというアプローチの問題は、自然科学の研究者が受ける訓練のメニューとしては最も重視される項目といって良いだろう。しかしながら、大きな意味ではそのアプローチの方法は自然科学者のみが通暁していれば良いというものではなく、文理問わず多くの人が身につける必要があるということを折に触れ述べてきた。本書は官僚や裁判官といった文系の知識人における誤った思考プロセスを指摘するばかりでなく、医学者、あるいは科学者と呼ばれる人材においても同様の深刻な間違いを犯すことがしばしばあることを... ...続きを見る

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2012/09/17 22:09
「サイエンス入門U」リチャード・ムラー
Uではいよいよ光や量子物理学、相対性理論が取り上げられる。また気候変動についても一章が割かれており、科学者がこの問題をどう認識、評価しているかというプロセスを垣間見ることができる。本書で取り上げられる項目はTに負けず劣らず、現代社会を支えるテクノロジーと密接な関係をもつ。一方で、量子物理学が記述する奇妙な世界は、著者の力量をもってしても、人間の感覚では想像できない奇妙さであることを述べることでしか説明できない。一流の科学者をもってしても、要領を得ない文章で記述するほかない量子物理学のユニークさは... ...続きを見る

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2012/09/14 23:45
「福島の原発事故をめぐって―いくつか学び考えたこと」山本義隆
著者は科学史においていくつか重厚な作品を著しており、日本人と科学の関係を考える上で興味を持っているが、なかなか手を付けることができないでいる。一方で、著者は東大全共闘議長としてもよく知られているが、全共闘という運動そのものが私の世代にとっては理解が困難であり、著者本人に関しても全共闘に関わる情報発信は直後のもののみで、科学史家としての活動を開始してからはないようである。私たちの年代ではむしろ時代がかったルックスの駿台予備校の講師というイメージが強い。人文系の教養もある科学者が原発事故についてコメ... ...続きを見る

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2012/07/21 22:22
「生きるとは、自分の物語をつくること」小川洋子、河合隼雄
作家の小川洋子さんと河合先生の対談集であるが、残念なことに河合先生の死により予定より短い内容となってしまっている。その代わりに、追悼を含む長い後書きが追加されている。著者には「科学の扉をノックする」という対談集もあるが、そこには「おやがみさま」をSomething Greatと言い換えて布教活動を続ける著名な科学者である村上先生が含まれていたこともあり、敬遠していた。科学と文学がわかり合えたみたいな結論が安易に書かれている本ほど苦痛なものもないので、そんな内容だったら困るなと考えてしまっていた。... ...続きを見る

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2012/07/13 00:03
「明日をどこまで計算できるか?―「予測する科学」の歴史と可能性」デヴィッド・オレル
本書のもともとのタイトルはApollo's Arrowというものであり、その意味は予測の科学の歴史の中のエピソードとして登場する。洒落た原題と比べると翻訳は説明的であるが、本書の内容を過不足なく示している。冒頭からしばらく続く歴史の部分は些か退屈な記述もあるが、ケプラーの美しい法則ですら本人は楕円を採用しなければならないことに対して不満を感じていたことや、円の完全性に拘るあまり無数の周転円を採用することになった古典天文学など、興味深いエピソードをいくつか知ることができた。自然科学者が何を美しいと... ...続きを見る

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2012/07/10 23:28
「大学改革実行プラン」(文部科学省)についての雑感
「大学改革実行プラン」が文科省より発表されている。およそ5年間の計画で大学教育の質的転換を目指すものという位置づけである。計画策定に当たっては、官僚以外にどのような人たちが関わったのか、あるいは計画の発案、修正といったプロセスの詳細は明らかではないが、当該プランそのものが大学教育改革の必要性を非常に分かりやすい形で示しているような印象を受ける。 ...続きを見る

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2012/06/08 11:30
「疑似科学入門」池内了
著者はこれまでにも科学を対象とした議論に関する著書を上梓されているようであるが、私自身は不勉強で本書で初めての出会いとなった。疑似科学に関するネットの議論で「予防措置原則」あるいは「予防原則」という表現が登場することがあるが、本書における提言が含意されていることが分かった。そういう意味では、2008年の本書は既に議論の出発点として重要な著作として認識されているのかもしれない。 ...続きを見る

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2012/05/20 00:18
「偶然の科学」ダンカン・ワッツ
物理学者から社会学者に転身した著者は、現在コロンビア大学社会学部教授でかつヤフーリサーチ主任研究員である。スモールワールド・ネットワークに関する著書でも有名である。本書では冒頭からオールドスタイルの社会学者であれば目をむいて怒り出しそうな社会学についての著者の考え方が述べられるが、著者が自然科学の世界から転身したことをふまえればごく自然な発想であることが理解できる。社会学においては取り扱うべき要素の数や、関係は複雑すぎて、何らかの普遍的な法則を打ち立てることは原理的に難しい。著者は、自然科学の範... ...続きを見る

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2012/04/30 22:29
「「安全な食べもの」ってなんだろう?―放射線と食品のリスクを考える」畝山智香子
著者は既に「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」を執筆しており、食品の安全性についての一般向けの解説を著している。本書は原発事故を契機として緊急に企画されたことが巻末にも述べられているが、本書の方がむしろ良くテーマが消化されており、分かりやすいという印象をもった。被曝による発がんという軸がしっかり設定されているせいかもしれない。放射線の被曝と健康障害についてはネットを中心に様々な意見が拡散しているが、ネットの悪い特性である思い込みが強化されやすい構造が原因となって情報は分断され... ...続きを見る

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2012/04/17 01:36
「生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る」高井研
長沼毅の対談本を以前取り上げたことがあるが、最近本業はどうなのだろうと心配するくらい続々と新作が発刊されている。どれも面白そうで、いったいどこから手を付ければいいのだろうという状態である。本書もよく似たテーマだなと思って手に取ると、著者は別の研究者だった。 ...続きを見る

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2012/03/31 23:37
「とんでもなく役に立つ数学」西成活裕
「渋滞学」という一般向けの科学啓蒙書としては極めて水準の高い著作で有名になった著者が、都立三田高校の学生12名を対象に、数学による問題解決の実例、手法、メリットを縦横無尽に講義した記録が本書である。高校生向けということで、具体的な例をたくさんあげることにより、わかりやすく数学的なアプローチの御利益が説明される。「渋滞学」を読めばOKという気もするが、より身近な例をあげて、解説の敷居を下げているので、こちらから読んでみるという選択も良いかもしれない。 ...続きを見る

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2012/03/19 00:33
「朽ちていった命―被曝治療83日間の記録」NHK「東海村臨界事故」取材班
現在進行中の福島原発事故では、政府には議事録は残されておらず、また東京電力は都合の悪い情報を隠蔽することにかけては国内で一、二を争う企業である。東京電力や一部の官僚は、どれほど批判されようがその方針を変える可能性は低く、虚偽の報告や発表をすることについても躊躇いがない。様々な事故調査が実施されているが、官僚と東京電力というタッグを打ち破ることは一筋縄ではいかないだろう。事故の記録を読むと、決死隊的な行動があったことや、現場の所長が死を覚悟したことが報道されている。一方で、現場で高線量を被曝した方... ...続きを見る

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2012/03/19 00:32
「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」畝山智香子
ゼロリスクを望むことによるコストの増大や、ゼロリスクという考え方に潜む危険性という問題は、原発事故を通じて今までより多くの人々に認識されるようになったように思われる。BSEの際には行き着くところまで行くという結論から全頭検査が採用されたが、今回の放射能汚染ではさすがにゼロを求めることは不可能であり、どの選択肢を選べば一番被害が小さくなるかという複雑な課題に取り組まなければならない。本書やその後出版された「「安全な食べもの」ってなんだろう?」は、これまでよりもたくさんの人の目に触れる機会を得ている... ...続きを見る

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2012/02/08 22:13
「いかにして問題をとくか」G.ポリア(柿内賢信訳)
「発見学」に軸足をおいた1945年の著作であり、翻訳者の熱意により国内での出版が実現した数学書とのことである。”How to solve it”が原題であり、(数学の)問題に対する解答にどのようにしてたどり着くのか、どうすればそのような発見に至るのかについて、数式ではなく「言葉」で説明されている。対象とする「問題」とは数学の問題であり、条件に対する考え方や利用の仕方などの制限は「数学」の枠内であるが、より一般的な意味での発想法、解法の糸口のつかみ方を議論している点が評価の高い所以と思われる。帯に... ...続きを見る

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2012/01/28 18:12
「統計数字を読み解くセンス―当確はなぜすぐにわかるのか?」青木繁伸
MicrosoftやGoogleといった大企業においても重要性が意識されている統計学であるが、学問的にも人間の直観とは大きな乖離があり、特別に勉強する必要のある分野と言える。本書は統計リテラシーを高めることを目標に、専門家や科学者ではなく一般の人たちがどのような統計に対してもつべきリテラシーを醸成することを目的に執筆されている。 ...続きを見る

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2012/01/15 22:37
「「科学的思考」のレッスン―学校で教えてくれないサイエンス」戸田山和久
専門的な科学知識ではなく、科学者であれば共通して身につけているロジックを非科学者に適切に伝えるにはどうしたらよいかという課題は、大げさな表現をすれば、民主主義的な意志決定の基盤として解決しておく必要がある。本書はその困難な課題に対する一つの素晴らしい答えになっている。たくさんの論点が整理されており、今後、同様の試みにトライする人たちにとって非常に参考になる内容が含まれている。 ...続きを見る

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2011/12/25 21:59
「もうダマされないための「科学」講義」菊池誠、松永和紀、伊勢田哲治、平川秀幸、飯田泰之SYNODOS
SYNODOS は「アカデミック・ジャーナリズム」を旗印とする知の交流スペースという試みであり、ネットでの活動以外にもセミナーやレクチャーを開催する組織であり、「専門知」に裏打ちされた言論を発信することを目標としている。ともすれば誰も読むことのない紀要に論文を発表して業績として安穏としている大学人と、ひたすら露出量が増えることを目標に質の低い議論をばらまく知識人が相当な数を占めることを考慮すると、現代社会に関わっていこうとする姿勢は貴重なものといえる。一方で、後者と同様の単なる売名という批判や嫉... ...続きを見る

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2011/11/27 23:59
「プルトニウムの恐怖」高木仁三郎
本書は1981年に出版されているが、これは1979年のスリーマイル島事故、1986年のチェルノブイリ事故の間の時期に相当する。原子力技術についても説明のある本書であるが、現在読んでもそれほど大きな違和感は感じられない。むしろこれだけ丁寧にかつ冷静に原子力の問題点が述べられた新書が発刊されている日本において、福島の事故が起こってしまったことはきわめて残念なことと言わざるを得ない。東京電力や経産省をはじめとする官僚達や政治家の中には、本書を読んだ方もいくらかはいるだろうが、それが原子力政策を転換する... ...続きを見る

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2011/11/18 22:44
「サイエンス入門T」リチャード・ムラー
本書は、カリフォルニア大学バークレー校における学生が選ぶ「ベスト講義」の一つをベースにしたもので、YouTubeで公開された講義は大きな反響を巻き起こしたようである。この講義は文化系学生を対象としたものであるため、本書には当然のことながら化学式や数式は殆ど登場しない。おおよそ四則演算とべき乗くらいが計算できれば内容を理解することはできる。しかしながら、著者も文中で指摘するように、理系学生がサイエンスの原則的な項目を全て理解しているかというとそれは怪しいものであり、特に私のような生物系の自然科学者... ...続きを見る

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2011/11/14 23:03
「宗教を生みだす本能―進化論からみたヒトと信仰」ニコラス・ウェイド
著者は、Nature、Scienceの科学記者を経て、「ニューヨークタイムズ」紙の編集委員となり、現在は同紙の人気科学欄に寄稿しているという経歴を持っている。私は未読であるが、「背信の科学者たち」や「心や意識は脳のどこにあるのか」といった著書がほかに知られている。欧米におけるポピュラーサイエンスの一線の書き手の一人と考えて良いと思われるが、「宗教」に関する欧米知識人の認識傾向や思考の限界をリアルな形で提示している点で、大変興味深かった。タイトルや章立ては「進化論」をはじめとする科学的アプローチと... ...続きを見る

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2011/10/10 22:29
「食卓にあがった放射能」高木仁三郎、渡辺美紀子
福島の原発事故を受けて新装再発された版を購入した。4月に再発行された後、8月に第4刷となっている。著者は東京大学原子核研究所助手、都立大学理学部助教授を務めた後、マックスプランク研究所研究員を経て、「原子力資料情報室」を設立している。全くの認識不足で、これまで著者や原子力資料情報室の活動について、今回の事故を期に初めて知ることになった。著者は多数の著作があるので、これまでもその一部を目にしていた可能性はあるものの手に取ることはなかった。「脱原発の市民科学者」というキャッチフレーズを見て、事故前の... ...続きを見る

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2011/09/25 22:25
一流経済学者の講演における似非科学問題
小さなことの揚げ足取りのように受け取られる可能性はあるが、日本学士院賞受賞者でもある大竹文雄さんの講演内容をwebで読み、あらためて「文系」的な意志決定の問題点について考えてみた。「理系」的な発想の典型が自分の考え方であるとはとても思えないが、違和感を感じる部分が何かを書くことで、考え方が整理できるかもしれない。 ...続きを見る

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2011/09/04 15:15
「生物学的文明論」本川達雄
専門分野ではどういう評価になるのかは分からないが、「ゾウの時間ネズミの時間」はポピュラーサイエンスの優れた著作であり、エネルギーの消費と寿命の関係に関する言及など、結果として最近の生命科学の研究のトレンドを先取りしていたように思う。「ゾウの時間ネズミの時間」ではマクロなエネルギー代謝という指標と、生物のサイズ、寿命と言った問題が取り扱われていたが、最近の生命科学ではまさにそういった問題が分子レベルで注目されており、太く短く、あるいは細く長くという生き方の特徴が詳細に解明されつつある。 ...続きを見る

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2011/09/04 13:59
「未曾有と想定外―東日本大震災に学ぶ」畑村洋太郎
著者は東京大学工学部の名誉教授であり、「失敗学」を提唱し、数多くの関連する著作があり、私もそのいくつかを読んでいる。現在は、畑村創造工学研究所をベースに活動しているが、最近、原発事故調査・検証委員会委員長に任命されたことで一般の人たちにも広く知られるようになった。現在は、科学技術振興機構から自らの研究所のページに移されているが「失敗知識データベース」という試みもユニークなもので、事例を読み、あるいは「失敗まんだら」についての記事を読むことで、「失敗学」の姿勢の一端を知ることができる。 ...続きを見る

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2011/08/04 00:49
「官僚の責任」古賀茂明
「日本中枢の崩壊」から読むべきと思われるが、先に新書版のこちらを手に取った。話題の官僚で、与野党の政治家が著者をサポートしており、経産省の辞職勧奨も今のところは空振りに終わっている。退職官僚や非主流派に追いやられた官僚の著書はこれまでにもたくさんあり、近年では高橋洋一の一連の著書が有名である。非官僚の著作としては、猪瀬直樹の道路問題や長谷川幸洋の一連の著作も非常に情報量が多い。現役官僚は組織の人間なので、著者のような事例は比較的少ない。これらの官僚をテーマにした著作群を抽出すると、官僚の生態とい... ...続きを見る

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2011/07/31 21:27
「科学的とはどういう意味か」森博嗣
Bad Scienceにおける著者のゴールドエイカーにも見られた傾向であるが、「科学」教育を受けた論者の現代社会に対する提言は、近年ますます直接的で、厳しさを増しているように思う。マスコミ的に言えば「現代社会の矛盾」ということになるのだろうが、現代社会の抱える問題点のかなりの部分は「科学」というアプローチを適切に採用すれば、今よりはよい対処ができるはずである。それにも関わらず、社会をリードするべき人たちの多くは「科学」を軽視、あるいは敵視している。社会に対していくばくかでも関心をもち、世の中を良... ...続きを見る

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2011/07/18 23:17
復興構想会議に見られる科学軽視
近現代の科学の急速な発展と、それに伴う社会の変化は、人々の生活レベルを大幅に向上させたが、一方で新たな問題も生じている。この新たな問題の中には、従来の人文科学や宗教が取り扱ってきたような人間の心の問題もあるが、一方で科学の進展が急速すぎたために生じていると思われる問題もある。こうした問題の解決に、従来とは異なる全く新たな思考の枠組みが必要かどうかについては、まだ明瞭な結論はでていない。しかしながら、昨今の出来事の中には、従来の枠組みの中で採用されたアプローチが失敗を重ねていることを伺わせる例が数... ...続きを見る

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2011/07/13 23:22
「科学技術イノベーション政策のための科学」は何を目指しているのか
以前の記事で「政策のための科学」が必要という戦略的想像研究推進事業における考え方に疑問を呈した。「政策のための」科学ではなく、科学において採用されているアプローチを政策決定に活用することが大事という主旨で、具体的には、「政策のための科学」などというよく判らない代物を新たに創り出すのではなく、科学の手法に長けた人材を政策決定に活用することが重要というのが私の考えである。そもそも科学で得られた知識を社会に活用するためのプロセスを「科学」として新たに打ち立てようなどという試みは国際的にも例がないが、そ... ...続きを見る

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2011/07/09 20:29
「デタラメ健康科学―代替療法・製薬産業・メディアのウソ」ベン・ゴールドエイカー
著者は英国国民保健サービス(NHS)に所属する医師(精神科医)で、2003年からガーディアン紙に”Bad Science”というコラムを寄稿している。同名のサイトについては本書を読むまでその存在を知らなかった。同様のテーマを取り扱っている「代替医療のトリック」と比較すると、よりくだけた表現で説明されており、親しみやすい。その分限密な論証という部分は犠牲にされているが、本書が対象とするのはハードなビリーバーの層ではないということであろう。一方、「代替医療のトリック」がマスメディアや代替医療業界、製... ...続きを見る

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2011/06/21 22:32
「知的文章とプレゼンテーション―日本語の場合、英語の場合」黒木登志夫
帯の文句を読むとかなり幅広い対象に向けて書かれた本のように見えるが、実際のところは、自分で英文の論文を執筆する、理系の、特に生命科学を専門とする研究者にとって最も役に立つ内容である。新書であるからタイトルは編集部に責任があるのかもしれないが、これ以外の層の読者にとってはピンとこない箇所もあるだろう。一方で、もう少し適切なタイトルを付けて、専門誌を出す出版社から売り出せば的確に本書を必要とする読者に届くのではないかという印象をもった。このブログの読者であれば一読の価値がある。 ...続きを見る

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2011/06/14 22:41
「コンピュータが仕事を奪う」新井紀子
著者は国立情報学研究所の教授であり、研究者の間では有名なResearchmapの開発者である。産業革命が多くの工場労働者を不要な存在に変え、ラッダイト運動を生み出したように、現代はコンピュータがホワイトカラーを駆逐する時代と考えられている。それでは、これからの人間が「失業」しないためには何が必要なのだろう。コンピュータにできないこととは何だろう。そんなことを考える若者にとって本書は必読である。 ...続きを見る

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2011/05/24 22:58
「職業としての科学」佐藤文隆
タイトル通り、職業としての科学の成立を歴史的に考察し、今後あるべき姿を議論している。ウェーバーを意識させるタイトルであるが、ウェーバーについての言及やその著作との比較は少なく、マッハとプランク、ポパーとクーンという軸をもって議論が進む。岩波新書ということで硬質の議論の展開を期待したが、著者の交友関係も紹介しながら(少々自慢話っぽい箇所もあるが)、自由闊達な話しぶりという印象を受けた。柔らかい分読者に対する適度な刺激があるが、著者の明確なビジョンが示されるわけではない。「あとがき」に本書のそうした... ...続きを見る

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2011/05/01 21:37
「小学校英語は「活動」で」中嶋嶺雄(朝日新聞―オピニオン)
朝日新聞のオピニオン欄では、一つのテーマについて二人の対立する論者が意見を述べる欄がある。複数ある論点に対してそれぞれの意見がかみ合い有益な意見交換として読める場合もあれば、単なる自説宣伝の場で終始し二人の論者が選択されていることに全く意味が認められないこともある。 ...続きを見る

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2011/05/01 21:34
「心理療法入門(心理療法コレクションY)」河合隼雄
本書は、「講座 心理療法」八巻のそれぞれの冒頭におかれた著者による概要をまとめて一冊としており、その際に加筆修正が行われている。最後には「こもりと夢」というタイトルの講演内容が収められている。シリーズ各巻の巻頭言なので、執筆者の原稿の紹介を交えながらアウトラインが要約されているという内容を予想して読んだが、それは最初の方だけで、中盤以降は案に相違して濃い内容であり、今回のコレクションの中では最も読むのに時間がかかった。「心理療法入門」というタイトルが付けられていることにも納得がいく内容であった。... ...続きを見る

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2011/04/25 22:52
「形の生物学」本多久夫
本書は、「袋の生物学」というタイトルでも良いくらい、「形」の中でも特にトポロジーに重点をおいて様々な生物の仕組みが解説されている。生物学を専門としていても、分野によってはここまで細胞のウラとオモテに注意を払うことはないだろう。上皮細胞のもつ執拗なまでに表裏を整えようとする性質がいろいろな例をあげて取り上げられており、大変興味深い。また、肝実質細胞はアピカル面が複数ある特殊な細胞であるという事実は、この流れで説明されるとよく理解できる。ごく最近、iPS細胞から肝細胞ができたという報告もあったが、マ... ...続きを見る

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2011/04/17 20:34
「宇宙は何でできているのか‐素粒子物理学で解く宇宙の謎」村山斉
著者は東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)の機構長を務める第一線の科学者である。本書を購入した2010年末の時点で、既に20万部を突破しているらしい。改めて日本人はよく本を読むものだと思う。このジャンルの本は一般の人がどの程度「分かったような気がする」かが大事で、それはホーキングのベストセラーなどでも同じであるが、ロマンと科学的な記述の間の絶妙なバランスが読者を納得させるのである。素粒子物理学や宇宙論といえば、国内ではブルーバックスがたくさんの良書を輩出しているが、本書もその路線上にある。本... ...続きを見る

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2011/02/12 23:40
「「予防接種は「効く」のか?‐ワクチン嫌いを考える」岩田健太郎
著者は神戸大学医学部の微生物感染症学講座の教授であり、著書も本書だけではなく多数出版されている。「楽園はこちらがわ」というブログも医療関係者の間では有名なのではないだろうか。一昨年のインフルエンザ騒動でも、いち早くガイドラインや研修医へのアドバイスを提示されており、厚労省の新型インフルエンザガイドラインに対する的確なパブリックコメントも記憶に新しいところである。近著の「「患者様」が医療を壊す」もかなり気になるタイトルで、是非読んでみたい。「バイオテロと医師たち」はアメリカにおける炭疽菌テロへの関... ...続きを見る

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2011/01/27 00:34
「なぜ科学を語ってすれ違うのか‐ソーカル事件を超えて」ジェームズ・ロバート・ブラウン
「サイエンス・ウォーズ」と呼ばれる論争について、私の知る範囲では必ずしも日本では適切に紹介されているとはいえないような気がするが、それは単に宗教的なバックグラウンドの問題ばかりではなく、西洋哲学の伝統とも関係があるのかもしれない。一人の科学者として見た場合、「ソーカル事件」のインパクトとは、ポストモダン思想の一部にはここまで知的退廃が進んでいるのかという驚きであったが、本書を読むことを通じて、そこにはより大きな思想的背景が存在することを理解できた。最終章まで読むと、本書は人間の営みの中で科学とい... ...続きを見る

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2011/01/04 00:54
「カオスとアクシデントを操る数学‐難解なテーマがサラリとわかるガイドブック」エドワード・B・バーガー
著者らは数学啓蒙、数学教育の分野で有名な研究者であるそうで、著書を読むのは初めてであったが、なるほどと実感できる良書である。アメリカではワトソンの分子生物学やファインマンの物理学のように、超一流の研究者による教科書という伝統もあるが、一方で科学啓蒙・教育を専門とする研究者による教科書や、啓蒙書にも素晴らしいものがたくさんある。出版の究極の目標は両者では異なることから、専門家を目指さない限りは後者の方が楽しくその領域を学べるものが多い。一般向けの啓蒙書は、対象とする読者のレベルをどう設定するかによ... ...続きを見る

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2010/12/30 12:11
「偶然とは何か‐その積極的意味」竹内啓
著者は東京大学の経済学部出身の大学教授である。偶然について、数学的な確率論の話に始まり、大数の法則と中心極限定理について述べた後に、生物の進化における偶然の役割にふれ、「運・不運」の問題、歴史の中の偶然という流れで議論が進む。第5章以降は著者の社会へのメッセージであり、本書の中で大事な部分ではあるが、必ずしもそれまでの議論を滑らかに受けたものとはなっていない。人間の管理の及ばない領域である偶然についての言及は重要なものであるが、その裏には「神」が見え隠れするところがあり、悪しき宗教的なものに容易... ...続きを見る

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2010/12/10 21:02
「理科系冷遇社会‐沈没する日本の科学技術」林 幸秀
著者は、東大工学部修士課程を修了後、科学技術庁に入庁し、2003年には文科省の科学技術・学術政策局長、2006年には文部科学審議官、2008年に退官後はJAXA副理事長に就任し、現在は東京大学先端科学技術研究センターの特任教授という経歴をもつ。その著者がこのようなタイトルのもと、「警鐘、提言として」著した本書であり、なにがしか科学行政の意思決定についての事情が分かるのではないかと考え手に取ってみた。 ...続きを見る

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2010/12/07 22:18
「アメリカン・ドリームという悪夢‐建国神話の偽善と二つの原罪」藤永茂
著者は長年カナダのアルバータ大学教授を務め、例えば「分子軌道法」(岩波書店)という著書があることからも察せられるように、自然科学の研究者である。しかしながら、近年はアングロサクソン的な「白人の欺瞞」とは何かというテーマを一つの軸に、著書やブログを通じた活動を続けている。本ブログでも、著書の一つ「「闇の奥」の奥」を取り上げた。本書でも長きにわたるカナダ生活を通じて著者に大きなモチベーションが生まれてきた様子が描かれているが、いわゆる「白人」と真摯につきあいをする際に感じられる大きな違和感は何かとい... ...続きを見る

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2010/10/31 23:06
「生物多様性とは何か」井田徹治
著者は共同通信の科学部の記者で、地球温暖化や地球環境をテーマとした著書がある。本書は昨今話題になっている「生物多様性」についての取材をまとめたものであり、どうして生物多様性を維持していく努力が必要なのか、今後の見通しはどうなのか、現在どのような取り組みが行われているのかという項目が手際よく解説されている。「生物多様性」問題の入門として非常に役立った。個々の事例を見ると、様々なレベルの取り組みがあることが理解できる。一方で、巨大な熱帯雨林の消失といった問題とある特定の種を保存する取り組みとを比較す... ...続きを見る

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2010/10/07 23:31
「辺境生物探訪記‐生命の本質を求めて」長沼毅、藤崎慎吾
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で茂木健一郎が「科学界のインディ・ジョーンズ」と呼んだとか、その名刺には「吟遊科学者」としか書かれていないといった冒頭の紹介で、危うく読むのをやめるところであったが、結果的には非常に面白く楽しむことができた。世の中にはいろいろな分野の科学者がいるが、基礎研究、特に「生命の本質」とか、「宇宙の起源」、「物質の根本」といったテーマを掲げている研究者は、一目をおかれるというか、同業者の間でも自ずと羨望の目で見られる傾向がある。研究者は、大なり小なり子ども目線の... ...続きを見る

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2010/10/05 23:46
「ボナンザVS勝負脳‐最強将棋ソフトは人間を超えるか」保木邦仁、渡辺明
本書は、2007年3月に行われた将棋ソフト「ボナンザ」と渡辺明竜王との対戦をテーマに、開発者と竜王が交互に執筆を担当したものであり、両者の対談も含まれている。日本将棋連盟側は2005年からプロ棋士とプログラムの公開対局を禁止している。即ち、プロ棋士とコンピュータープログラムの対戦は、単なる座興ではなく多くの人の関心をひくイベントとしてプロ棋士側にも認識されている。2010年4月には情報処理学会が日本将棋連盟に挑戦状を送り、一連の公開対局が予定されているところであり、話題になることは間違いない。 ... ...続きを見る

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2010/09/23 23:08
「行動経済学‐感情に揺れる経済心理」依田高典
帯には「経済学の“王道”にして最先端」という少々大げさな惹句が書かれており、著者の前書きにも今さらブームに乗ってこうした啓蒙書を書くのは恥ずかしいという気持ちが述べられている。著者は1965年生まれで現在京都大学の教授であることから、おそらく大変期待されている新進の経済学者と思われる。恥ずかしいとは書かれているものの、素人にも分かりやすく解説しようという意気込みが伺える内容である。ベイズの定理と医学検査における医師の判断などは大変面白い課題であり、ムロディナウの「たまたま」でも触れられていたよう... ...続きを見る

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2010/07/26 23:29
「ユング心理学と仏教(心理療法コレクションX)」河合隼雄
本書には、国際的に活躍するユング派の心理学者を招いて行われるフェイ・レクチャーで行われた講演が収められている。著者が本書でも述べているように、英語への翻訳を意識して書かれた文章は、国内で著された著作とは少し異なるリズムがある。また、聴衆が日本人ではなく、アメリカ人であるという点も十分意識されていることが伺える。著者を招いたローゼン博士の緒言が付されているが、そこにはこの講演を理解するために払われた努力が伺えるが、一方でローゼン博士にとって率直に理解が困難な部分もあることが仄めかされている。また欧... ...続きを見る

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2010/07/04 00:11
「フェルマーの最終定理」サイモン・シン
サイモン・シンのデビュー作にあたる本書は、大変評価の高いポピュラーサイエンスであり、各所で話題になったことを記憶している。「フェルマーの最終定理」の魅力的なところは、まず問いそのものは中学生程度でも理解できる内容である(アンドリュー・ワイルズは10歳の頃にこの定理に出会っているが、同時期のかわいらしい少年時代のワイルズの写真も本書に掲載されている)にも関わらず、その証明には現代数学の武器が惜しみなく投入された点にあるだろう。実際にはその証明を吟味できる数学者は世界でも数少ないわけであるから、本書... ...続きを見る

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2010/06/22 23:47
「心理療法序説(心理療法コレクションW)」河合隼雄
心理療法家を目指しているわけでもないのに順にこのシリーズを読んでいる理由の一つに、著者が京都大学理学部を卒業し、高校の数学教育に携わった後に、心理療法家への道を歩んでいるという背景に私が大きな関心をもっていることがあげられる。心理療法は科学ではないが、科学の方法論から完全に離れたところに良い理論は打ち立てられないという著者の考え方は、非常に柔軟かつ論理的な(筋の通った)著者の姿勢の根底にあるものだと思う。カウンセリングを志す人で、数学を事実上パスしてしまったような人には河合隼雄の主張は半分くらい... ...続きを見る

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2010/06/02 00:29
「代替医療のトリック」サイモン・シン&エツァート・エルンスト
代替医療は先進国共通の問題のようで、本書は代替医療を積極的に評価するチャールズ皇太子に捧げられている。日本でも鳩山首相が代替医療に好意的であることはよく知られているところである。現代医療への批判が代替医療を支える肥やしの一つであることは論をまたないところであるが、昨今の政治主導という名の下の無策も含め、反知性主義の勢いは留まるところを知らない。知的水準の高い「冷たい」医者のいうことは信用できないが、個人の身体のことを真剣に考えてくれる「暖かい」代替医療関係者は信用できるというのは、相手が自分より... ...続きを見る

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2010/05/17 23:47
「医薬品クライシス‐78兆円市場の激震」佐藤健太郎
本書では、「有機化学美術館」や関連する公式サイト、ブログで研究者の間では有名な著者によって医薬品産業が紹介されている。帯では、「崇高な使命、熾烈な開発競争、飛び交う大金、去っていく研究者、2010年、もう新薬は生まれない」と最大限の煽り文句が掲げられており、本書のタイトルも同様にアッパーな印象を受ける。実際の内容はそれほどセンセーショナルな記事にあふれているわけではなく、医薬品産業の特徴と現状が丁寧に説明されている。とにかく一冊で医薬品産業の全貌をおおよそ語ろうとすれば、ある程度は仕方ないことで... ...続きを見る

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2010/05/08 01:36
「食のリスク学‐氾濫する「安全・安心」をよみとく視点」中西準子
著者は産総研の安全科学研究部門長であり、ネット上でもそのホームページの「雑感」はしばしばタイムリーな話題を取り扱うことから、注目を集めることが多い。著者の専門は環境全般に関するリスクの取り扱いであり、本書はその中でも特に「食」に焦点が置かれている点が特徴である。ハードカバーで出版されている本書であるが、内容は一般向けのものであり、読者の数は多ければ多いほど良いと思われる内容である。昨今の流れを考慮すれば新書の方がより多くの読者を得ることができそうな印象を受けた。著者は本業の研究からブログに至るま... ...続きを見る

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2010/04/02 22:55
「自己組織化とは何か・第2版」都甲 潔、江崎 秀、林 健司、上田 哲男、西澤 松彦
ブルーバックスというと個人的には高校時代にお世話になったという記憶があるが、実際のところは大学生も、あるいは大学院生、社会人の読者も多いだろう。他分野の人間にとって、うまく書かれているブルーバックスほどありがたいものは少ないだろう。高校時代はよく物理学関係を読んだが、読んでいるときは理解しているつもりなのだが、読後に誰かに中身を紹介しようとすると、さっぱり理解できていないことに気づくということが多かった。読書を知識を得ることと捉えれば、あまり意味のない読書体験ではあるが、高校時代の自分にとっては... ...続きを見る

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2010/03/14 12:47
「たまたま‐日常に潜む「偶然」を科学する」レナード・ムロディナウ
著者はファインマンの弟子にあたる理論物理学者であるが、同時にスタートレックの脚本家でもあり、ゲームプロデューサーでもあり、スティーブン・ホーキングとの共著もある。訳者あと書きでは、そうした著者の業績とあわせて、どうして本書がこのような形で世に出てきたのかが分かりやすく紹介されている。世の中で起こる現象が大いに偶然に左右されているにも関わらず、人間の頭脳がそこに必然性を見いだそうとするために起こる様々な問題が本書では鮮やかに描かれている。巻頭と末尾に置かれたホロコーストのサバイバーである著者の両親... ...続きを見る

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2010/03/05 00:26
「インフルエンザ21世紀」瀬名秀明、鈴木康夫(監修)
本書は、まだ記憶に新しい2009年のインフルエンザパンデミックにおいて、日本ではどのような人たちが何を考え、どう行動したのかについて、多くの関係者に取材して構成された労作である。パンデミックにおける国内の対策がどの程度の効果を持ち、何が適切で何がそうでなかったかという評価は、詳細なデータが出揃っていない現在では時期尚早である。一方で、実際に渦中にあった人たちの声というのは、このタイミングで筆者が取材しなければ、得ることはできなかったと思われる貴重なものばかりである。多くは領域は幅広いが専門家であ... ...続きを見る

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2010/02/26 23:03
「科学力のためにできること‐科学教育の危機を救ったレーダーマン」(訳)渡辺政隆
本書は1988年にノーベル賞を受賞し、ファインマンにも比されることもあるレオン・レーダーマンの80歳を記念して出版されたアンソロジーである。レーダーマンの業績というのは本書を読むまではよく知らなかったのであるが、アメリカにおける科学リテラシーの向上のために実に精力的に活動している。ノーベル賞受賞という価値を最大限利用しながら、高等教育を支える基礎をどのようにして育むのか(それは結局は国民の科学リテラシーの向上という目標に結びつくのであるが)について真摯な考察と活動を続けてきたのがレーダーマンの重... ...続きを見る

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2010/02/20 01:30
「打ちのめされるようなすごい本」米原万里
文庫版には井上ひさしと丸谷才一による的確な解説があるので、文章家としての著者についてはここを読むだけでもかなりのことを知ることができる(著者から激賞されている丸谷才一のものは読んでいてむずかゆくなるような箇所があるが)。ロシア語通訳の第一人者であると同時に、素晴らしい書評家、エッセイストとしても知られる著者の書評のみを抜粋した一冊である。週刊文春の「私の読書日記」は手にすることがあれば必ず読んでいたので、そういえばこういう書評もあったなあというものも多い。どういう位置づけにあるかにもよるが、実名... ...続きを見る

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2010/01/14 23:51
科学教育の重要性
今回の事業仕分けでは、財務省の主計局が非常に重要な役割を担ったことが次第に明らかとなりましたが、以前少しふれたように、主計官を務める官僚がどの程度当該分野についての見識を持っているかという問題は見過ごすことができない問題点ではないかと考えるようになりました。あわせて、近年大きな問題となっている様々な制度の疲弊と改革の失敗の背景には、我が国における科学教育の軽視があるのではないかと考えます。そこで、これをきっかけに少し考えたことを記録しておきます。 ...続きを見る

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2009/12/31 01:41
RIETI政策対談(2008年6月30日)と事業仕分け・その2
RIETI政策対談(2008年6月30日)と事業仕分け・その1 の続きです。 ...続きを見る

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2009/11/22 23:29
RIETI政策対談(2008年6月30日)と事業仕分け・その1
鳩山政権では大きく予算の規模が拡大しているために、3兆円程度を目標とする事業仕分け作業は有権者向きのショーであるという意見も頷けるものですが、従来公開されてこなかった過程が誰の目にも映るということは新鮮な印象を与えていると思います。一方で、事業仕分けの対象事業は財務省からあらかじめ選定されたものである可能性が高く(この過程は公開されていないようです)、仕分け人のもとにも財務省からの振り付け指示が届いているという報道もありました。ここで大事な点は、財務省が不要、あるいは無駄があると考えている事業は... ...続きを見る

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2009/11/22 23:23
「新薬ひとつに1000億円!?」メリル・グーズナー
本書はアメリカの医療ジャーナリストによる著作であり、原著は2004年に公刊されている。オバマ大統領の医療制度改革が着手されようとしている現在ではいささか話が古いのではという危惧があったが、医薬品研究開発の状況としては当時と現在でそれほど大きな環境の変化はないだろう。むしろ、抗体医薬品の成熟などを通じて医薬品開発の手詰まりな状況は悪化しているかもしれない。本書のモチベーションは、製薬企業が主張する「新薬ひとつあたりの研究開発費は8億ドル」という見積は正しいのかという疑問にある。様々な調査の末、実際... ...続きを見る

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2009/11/18 00:08
「脳科学の真実‐脳研究者は何を考えているのか」坂井克之
興味深いコメントをいただいたことをきっかけに、「研究者からの科学の発信と社会の受容」という問題についてしばらく考察を続けたが、本書の出版は私にとって非常にタイムリーなものとなった。筆者は東京大学医学研究科の准教授で、本書の用語でいえば「脳研究者」であって「脳科学者」ではない。空前の脳科学ブームは、本職の研究者にとってはさぞかし困った問題に違いないとは想像していたが、本書の内容はそうした浅い愚痴のようなものではなく、非常に真摯な考察であった。現役研究者が実名でここまで自分の考えを問うということは大... ...続きを見る

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2009/10/18 22:18
「iPS細胞‐世紀の発見が医療を変える」八代嘉美
懸案となっていた本書を出張の移動時間を利用して読んでみた。著者は東京大学大学院医学研究科の博士課程の所属しており、「「幹細胞」という専門性を軸に、新しい生命観、身体観を構築しようと試みている」とのことである。読了後、非常に複雑な気持ちにならざるを得なかった。著者の所属する環境は、こうした最新の話題を取材し、本書のような一般向けの本を執筆する上で最高の環境といえる。一般の読者には想像できない部分かもしれないが、例えば私立大学の理系学部に意欲あるサイエンスライターの卵がいたとしても、彼がアクセスでき... ...続きを見る

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2009/10/10 19:29
「世界は分けてもわからない」福岡伸一
著作に対する批判をしばしば述べながらも、こうして再び福岡伸一の著作を購入して読むということは、やはり私がなにがしかの関心を抱いているからだろう。科学者としての態度を維持しつつ、一般の読者に読ませる文章というものはどんなものだろうかという個人的な関心が、著者の取り組みに目を向けさせるのだろうと思う。著者を物差しにして科学者が書くものとはどうあるべきかを考えているのかもしれない。講談社現代新書のシリーズはどうもタイトルがあざといので反発したくなるのだが、おそらく出版社の方針で、著者としては連作科学エ... ...続きを見る

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2009/10/06 23:51
TOTORO your neighbor様へ (3)
少しく時間が経過してしまいましたが、十分応答できなかった部分をもう少し追加したいと思います。私に対して「先生」という敬称をいただいておりますが、TOTORO your neighbor様こそ、実際であれば私が「先生」と呼びかけなければいけない存在ではないかと想像しております。分野は少し異なるのかもしれませんが、決して「一般の読者」というレベルではなく、Nature やScienceを雑誌として楽々と読みこなすような背景をお持ちであることが推察できます。ネット上の自由なつながりとして、立場を離れて... ...続きを見る

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2009/08/24 23:40
TOTORO your neighbor様へ (2)
まず、予告致しました通り、ノックアウトマウスの話題を通じて福岡伸一さんが述べられる分子生物学への諦念に対して思うところを述べたいと思います。もう一度、「生物と無生物のあいだ」の該当箇所を読み返してみたのですが、私の記憶よりは丁寧な記述という印象があり、新聞や雑誌の福岡伸一さんの記事を読むうちに悪い方へとイメージが修正されていることに気づきました。ネットではやはり見つからないのですが、朝日新聞への投稿記事こそが私が最も素材にしたいと考えているもので、現物が見つからないことがとても残念です。 ...続きを見る

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2009/08/20 02:24
TOTORO your neighbor様へ (1)
(この記事は書評「日本人と日本文化」へのコメントへの返信となっております) ...続きを見る

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2009/08/19 02:04
「生物学を学ぶ人のための統計のはなし〜きみにも出せる有意差〜」粕谷英一
九州大学理学部の行動生態学を専門とする著者による統計学のテキストである。謝辞やまえがきを読むと、「ああ、こういう先生いたなあ」と思わずつぶやいてしまうような理屈っぽさで、本書もたくさんの読者に読んでもらおうとしているのか、あるいは著者の説明の工夫を自慢されているのか、よく分からないところがある。院生と教員の対話形式で進行するが、マンガで言えば「サザエさん」に匹敵する牧歌的な古き良きラボの雰囲気が漂っていて、さすがに理学部はタイムレスと感じさせる。 ...続きを見る

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2009/04/27 23:11
「無駄学」西成活裕
「渋滞学」の刊行により広い方面で反響を得た著者が、自らのテーマを発展的に展開したものが、この「無駄学」という位置づけになるようである。著者がおよそ10年間をかけてアカデミアにおいて研究を深めた中から生み出された「渋滞学」と、そこから約2年後に刊行された本書とを比較することは適切ではないが、同じ出版社から似たような体裁で出されているものの、二つの著作のポジション、および著者の姿勢は大きく異なるという印象をもった。 ...続きを見る

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2009/04/19 00:33
「渋滞学」西成活裕
著者は「渋滞学」を提唱し、学際的な活動を続けながら、本書の執筆に至っている。本書は一時期ベストセラーに顔を出しており、2007年末(刊行から1 年も経っていない)で10刷に達している。著者は1967年生まれの第一線の研究者であり、こうした優れた研究者がリタイアする前にこうした一般向けの科学書を著すことの価値は大きい。 ...続きを見る

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2009/04/12 18:05
「叛逆としての科学‐本を語り、文化を読む22章」フリーマン・ダイソン
フリーマン・ダイソンの精選書評とエッセイ集である本書の殆どは、著者が60歳から80歳の間におおよそ書かれている。老境における知的生産性には大きな個人差があるものであるが、本書に見られる著者の思索のしなやかさは驚嘆すべきものがある。科学者のエッセイとしては最高峰に位置づけられる作品であり、もっと早くダイソンの著作を読んでおくべきだったと反省させられる。科学者が文章を書くとき、特に一般の読者に向けて書く場合にどのような姿勢が適切であるのかということを学ぶ上でこれ以上の教材は少ないだろう。明晰な文章で... ...続きを見る

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2009/03/02 23:47
「サブリミナル・インパクト‐情動と潜在認知の現代」下條信輔
最先端の研究を行う潜在認知の専門家による本書は、興味深い知見と洞察に満ちた内容で非常に参考になった。潜在認知が広告や政治に利用される危険性を指摘しながらも徒に不安を煽ったり非難をすることはなく、科学者らしい忍耐で事例を冷徹に解析し、将来への備えとして何が必要であるかを述べている。終章では著者の自画自賛も書かれているが、広告や政治の標的として現代社会で危険にさらされている潜在認識という領域こそが独創性の源であり、人間の可能性を広げる場として機能していることが紹介され、明るい展望を提示して締めくくら... ...続きを見る

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2009/01/30 00:12
「生命をつなぐ進化のふしぎ‐生物人類学への招待」内田亮子
本書は、所謂科学論文の総説のスタイルを借りて、著者が縦横無尽に語るというスタイルをとっている。もう少し詳しく説明すると、著者が引用する報告や研究内容には全て出典が示されている。あとがきによるとこれは著者のわがままで、編集者に「知の誠実性と理解してもらい」実現したという。著者の引用する論文の範囲は多岐にわたっており、なかなかこれだけの範囲を原著で読みこなすことは難しいと思われる。何しろ生物学だけではなく、アマルティア・センまで登場する。しかしながら、二つの点でこの試みはうまくいっていない。「知の誠... ...続きを見る

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

2008/11/09 23:30
「確率的発想法‐数学を日常に活かす」小島寛之
帯には「予想的中! 天気予報からリスク論まで、先行きを見通す推論のテクニック」とあり、著者の前書きの一部が裏に印刷されている。しかしながら、実際に手にとって読んでみると、この帯は多分に販促のためのミスリードであるように感じてしまう。おそらく多くの読者は本書を読んでも、生活に確率論的な発想を生かすことはないだろうし、本書はそうした至近の御利益を約束するような内容でもない。前半でベイズ理論を易しく説明してもらえる点では御利益があるかもしれない。 ...続きを見る

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2008/09/29 23:09
「肺の生活習慣病(COPD)‐咳、痰、息切れを疑う」木田厚端
呼吸器、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)を専門とする医師による本書は、著者の医師としての活動の集大成的な側面も含まれており、興味深く読むことができた。COPDは従来、肺気腫、慢性気管支炎とカテゴライズされていた疾患であり、同じく肺の慢性疾患である喘息とは区別することができる。しかしながら、喘息と比較すると個人差も大きく、病態も多様性があるCOPDは認知度が低く、我が国においては信頼できる医療統計も存在しない。ここには患者の知識の乏しさはもちろんのこと、医療人の側でも重要性が十分認められているとは... ...続きを見る

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2008/09/02 23:36
「ジャガイモのきた道‐文明・飢饉・戦争」山本紀夫
著者は植物学をベースに民族学へとシフトした研究者であり、本書とも大きな関連があるがスペインの国際ポテトセンターにも客員研究員として所属していたという経歴をもつ。穀類中心の文明論の中で軽視されてきたジャガイモについて縦横無尽に語られる内容は大変興味深く、次へ次へという勢いで読了した。ジャガイモはアンデス原産の栽培植物であり、その伝播は種々の穀類と比べれば遙かに最近のことであるが、寒冷地を中心に瞬く間に普及し、例えばドイツ料理に見られるように現在ではたくさんの国で確固たる位置を占めている。著者はアン... ...続きを見る

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2008/08/25 23:13
「理性の限界‐不可能性・不確定性・不完全性」高橋昌一郎
アロウの不可能性定理、ハイゼンベルクの不確定性原理、ゲーデルの不完全性定理の三者をとりあげて「理性の限界」について議論しようという気宇壮大な著作である。著者も認めるとおり、このようなテーマを新書1冊でこなすというのは不可能である。よって大きなタイトルではあるが、知的なエンターテイメントという姿勢で書かれている。全ての議論は、仮想の登場人物間における会話として描かれており、通読は比較的簡単である。一方で、アロウの不完全性定理の説明と、ゲーデルの不完全性定理の説明を比較すると、前者が何となく分かった... ...続きを見る

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2008/08/19 23:43
「直観でわかる数学」畑村洋太郎
失敗学の畑村本はどれを読んでも明晰で、「ああ理系というのはこういうもんだよ」と感じる。その著者の宿願の数学本と聞いて、手に取ってみたのであるが、残念ながら失敗学の本ほどにはしっくりこなかった。もしかすると、今までの数学の教師がいずれも良い教師であったのかもしれないのだが、ここで嬉々として述べられている説明がどれも当たり前のように感じられて、今ひとつ爽快感がなかった。特に行列のところなどは顕著で、こうした説明で「わかった」となる人がどの程度いるのだろうかと甚だ疑問に感じる。複素平面についての説明も... ...続きを見る

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2008/07/01 22:20
「プリオン説はほんとうか?」福岡伸一
ベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」や、分子生物学への否定的な見解を述べた朝日新聞への投稿、ロハスクラブメンバーとしての無邪気な活動など、著者を研究者として捉えると、それでよいのか?と思うことは多々ある。アメリカの分子生物学関連の啓蒙書を翻訳し日本語力をアピールしながら、狂牛病というタイムリーなテーマで仕掛け、話題作りをして、いよいよ本格的に「著名人」の仲間入りをする。テレビ出演の様子やロハスクラブへの入れ込みようを見る限り、周到な準備のもと進められたプロジェクトを見るようである。しかし... ...続きを見る

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2008/06/21 01:38
「ネットワークはなぜつながるのか」戸根勤(日経NETWORK監修)
購入したのは第2版であり、初版に比べて基礎的な解説が充実した点が変更点である。初版はよく売れたようで、帯にも「10年後も通用する”基本”を身につけよう」となかなか興味をひくキャッチコピーがある。確かにネットの世界は最先端であるようでいて、インターネットの仕組みそのものは殆ど変わっていない。むしろこれだけの規模のネットワークになれば、おいそれと改革するわけにはいかないだろう。ソフトウェアの日進月歩に比べれば、ネットワークの通信方法は確かに10年くらいはもつ知識を得ることができるかもしれない。 ... ...続きを見る

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2008/06/07 01:29
「怪しい科学の見抜きかた」ロバート・アーリック
物理学教育と理論物理学の専門家であり、大学教授である著者には、他にも科学啓蒙書があり、本書の姉妹書に当たる「トンデモ科学の見破りかた」という著書も話題になったようである。たとえ専門外の分野であっても、科学論文の一定の形式をふまえる限り、どの程度その仮説が確からしいかは科学者であればある程度判断できるというのが著者の信念であり、本書からもその試みは成功していることが理解できる。著者の視点の中で、最も有益に感じた点は「情報を与えられてからの選択」という誤謬に関するものである。この指摘の重要性は訳者に... ...続きを見る

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2008/05/15 23:40
「数学でつまずくのはなぜか」小島寛之
数学の本を一般の読者が読む場合、いかに分かったような気になるか、あるいはそのせいで少し考え方が変わったように感じるか、といったところに醍醐味があるような気がする。私もこれまで何となくそういう方向で楽しんできたが、今回は少し考えさせられるところがあった。 ...続きを見る

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2008/04/05 02:15
「死因不明社会‐Aiが拓く新しい医療」海堂尊
大ヒットしたミステリー「チーム・バチスタの栄光」の作者による「死亡時医学検索」の啓蒙書である。「チーム・バチスタの栄光」の読者をメインのターゲットにしているせいか装丁もよく似ており、Aiを説明する狂言回しの役割もミステリーの登場人物が担っている。ブルーバックスのラインナップとしてはかなり異色の構成のように思うが、もしかするとそれは最近ブルーバックスを読まなくなっているせいかもしれない。大ヒット作の登場人物がユーモラスに、かつ楽屋落ちなノリも見せながら、「死亡時医学検索」の重要性やそこにおけるAi... ...続きを見る

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2008/03/14 22:23
「健康・老化・寿命‐人といのちの文化誌」黒木登志夫
著者は現在岐阜大学の学長であるが、研究者としては東京大学医科学研究所で活躍した経歴をもつ。がん研究の曙から分子生物学のもと爆発的に進展した時期に至るまで、著者も含めて第一線の生命科学者がさりげなく、しかしながらほのかに個性が感じられる描かれ方で、多数登場する。学長業の合間の楽しみというだけあって、登場人物は著者の同業者の医学者だけではない。江戸時代の人口学で有名な鬼頭宏も、「ゾウの時間、ネズミの時間」で有名な本川達雄も登場する。また、文学作品や映画など、病気と人との関わりを示すたくさんの例があげ... ...続きを見る

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2008/03/08 23:11
「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ‐ハイテク海洋動物学への招待」佐藤克文
著者は東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの准教授であり、「データロガー」による「バイオロギングサイエンス」のパイオニアの一人である。本書では、陸上動物に比べて観察が困難な、水中を主たる活躍の場とする動物の生態を「データロガー」により解析、推理する研究の様子が紹介されている。少しでも生物に興味のある読者であれば、第1章からぐいぐいとその面白さに引き込まれていくことは間違いない。著者は旺盛なサービス精神のもと、そのままでも十分魅力のある素材を、巧みな手際で次々に紹介してくれる。第7章に種明か... ...続きを見る

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2008/02/26 00:04
「生命科学の冒険」青野由利
著者は毎日新聞社の論説委員で、東京大学薬学部出身である。経歴から想像すると、早い段階からサイエンスジャーナリストを目指してキャリアを積まれている。現在でこそ、サイエンスコミュニケーターには一定の人気があるが、当時はそうした仕事があることすら明確でなかったことと思われる。実際、未だに大手の新聞社においても科学欄というのは非常に低レベルであり、宣伝上手な科学者の餌食になっているようなところも多い。近年、税金を使う上での説明責任が明確にされるようになり、これを逆手にとって、内容の薄い研究を新聞に載せて... ...続きを見る

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2008/02/21 00:00
「私たちはどうつながっているのか ネットワークの科学を応用する」増田直紀
本書は複雑系の専門家によるネットワーク科学の解説書であり、スモールワールド、スケールフリー、クラスターといった最近よく耳にする用語や、パレートの法則、ロングテールといった話題がわかりやすく述べられている。帯には「あなたは人間関係に満足していますか」という煽りが入っているが、対照的に中身は実に落ち着いている。本当に最新の科学の成果なのだろうかと思うほど地に足がついた話であり、おそらく背景には相当な数学の成果があるにも関わらず、そうした難しさには縁遠い記述である。淡々と読むうちにしっかりとネットワー... ...続きを見る

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2008/02/01 00:15
「神は妄想である」リチャード・ドーキンス
「利己的な遺伝子」で有名なドーキンスの最新作は、これまでの主張を一段と明確に示したものであり、いかなる宗教あるいは宗教的存在をも一切退けるという意味で決定版とも言える内容である。また、これまで知識人の間で行われてきた宗教に関する議論をおさらいするためのリファレンスとしても価値が高い。 ...続きを見る

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2008/01/24 00:13
「「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用」アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン
いわゆる「ソーカル事件」として有名な著者による、哲学・人文科学分野における自然科学用語の濫用を告発した著作である。英題はFashionable Nonsenseで、原題を直接和訳すると「知的詐欺」というタイトルになる。実際にSocial Text誌に掲載された手の込んだパロディ論文も巻末に収められている。ソーカル事件とは、アメリカのカルチュラル・スタディーズ誌であるSocial Textに、ソーカルによって著された科学用語を濫用したナンセンスな引用に満ちあふれた論文が1996年に受理されたという... ...続きを見る

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2008/01/09 22:56
「生物と無生物のあいだ」福岡伸一
分子生物学という一昔前であればベストセラーは難しい分野において、今年大きなヒットを飛ばした著作である。著者は狂牛病―プリオン問題に関して、専門分野から異議申し立てをする「もう牛を食べても安心か」、「プリオン説はほんとうか?」を著すことを通じて注目を集め、本作で一躍メジャーな著作家の仲間入りをしたといえる。実際、本書の帯は茂木健一郎、内田樹というやはり最近よく売れている著作家による推薦文である。帯はいずれはなくなると思われるので記録しておく。 ...続きを見る

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2007/12/27 00:30
「あなたはコンピュータを理解していますか?」梅津信幸
斬新なコンピュータ入門書という評判を聞いて購入してみた。わかりやすい説明とはどのようなものであるかという、個人的な課題を解決する上でも助けになるのではという期待もあった。著者は私と同世代であり、同じくらいの年齢の研究者が世に問う内容についても関心があった。 ...続きを見る

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2007/12/24 01:13

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