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zoom RSS 基礎研究の公共性:STAP事件対応の問題点

<<   作成日時 : 2014/05/11 11:01   >>

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王や貴族といった特権階級がパトロン的に支援してきた時代とは異なり(ゲイツ財団はこれを想起させるが)、現代の基礎研究は多くの国民の支援により成立している。統計によって数字は異なるが、自由主義経済を標榜するアメリカですら基礎研究については連邦政府が最大のスポンサーであり、税金抜きの基礎研究はあり得ない。例えば、医薬品開発はメガファーマとよばれる巨大企業が主導するものと一般に考えられているが、創薬のタネの殆どはNIHに支援された研究から生み出されている。基礎研究はすぐには経済的な効果を発揮しないことが殆どであり、短期的な評価にさらされる資本主義社会ではこれを積極的に支援するモチベーションは生まれない。そのため、アメリカにおいても、宇宙開発や戦争という題目を利用することを通じて予算が確保され、基礎研究が手厚く支援されてきた。

一般に基礎研究は国民によってポジティブに支援されているというイメージが(特に日本では)あるが、それは国民が与えられる情報を鵜呑みにして「サイエンスの素晴らしさ」という雰囲気を味わっていることを表しているだけかもしれない。昨今、文科省の指導により、研究成果がいかに社会に役立つかについてプレスリリースを行うことや、あるいは研究成果をもとにしたベンチャー企業の設立が促されるようになった。しかしながら、基礎研究は自然現象のメカニズムの理解を究極の目的とした活動であるため、こうしたプレスリリースや起業の多くは無理のある論理的飛躍や、誇大妄想に近い詐欺的なものにならざるを得ない。幾度も繰り返されるそうしたプレスリリースは、例えば実際に問題を抱える患者からすれば、欺瞞に満ちたものとしか映らないだろう。明日にでも病気が治る、巨額のマーケットが開拓できる、といった期待感を何度も煽ることは、研究者に対して醸成されている(漠然とした)信頼を一貫して損ねている。オオカミ少年はいつか喰われてしまうだろう。

情報化社会の進展は、これまで維持されてきた情報の非対称性を平準化する働きがある。STAP論文に疑惑が持ち上がってから、その詳細が検証され、小保方さんの博士論文における研究不正にたどり着くまでのスピードは特筆すべきであるが、今や注目を集める論文であればこのくらいのスピード感があることに驚きはない。科学研究は政治とは違って、基本的に殆どの材料は公開され、検証の対象となるため、紆余曲折はあってもいずれは事実が明らかになってしまう。取り扱う情報に大きな非対称性があった時代から意識変革していないことが、今回の理化学研究所や文科省の失敗の大きな原因と言えるだろう。報道記者や国民を短期間欺くことはできても、研究者コミュニティが明白な証拠をもって疑念を持ち続けている限り、いずれは広く真相が知られてしまう。当該論文の欺瞞を一般向けに分かりやすく説明する人材は豊富であり、問題点は隠蔽不可能なほど広範囲であり、かつ既に有力な証拠は押さえられてしまっている。

野依理事長は国会答弁として、長妻議員からの「STAP細胞はあるのか」という質問に対して、「あるかないかは分からないので、第三者の研究機関による検証が必要であり、理研も独自に検証を行う」という内容の回答を行っている。これも国会や一般の国民に対しては誠意のある回答のようにも映るかもしれないが、研究者から見れば不誠実きわまりない。議員の質問は、「理研が確固たる証拠をもって喧伝したSTAP細胞は確かなものなのか」という意味と思われるが、そういう文脈で考えれば、誰も再現ができず、論文で採用されたデータの多くの信憑性が疑われている状況で、「あるかもしれない」と回答するのは不誠実しか言いようがないだろう。既に諸方面で指摘があるが、「人類を指導する宇宙人は実在する」として活動している宗教団体と何ら変わりない理屈である。

竹市センター長、笹井副センター長、あるいは理事もみな同じ方向性であることは、理化学研究所という組織としては一貫性があるが、一方で彼らには研究者コミュニティからの一つ一つの指摘は取るに足りないという意識があることが見え隠れしている。また、検証実験のプロジェクトが既に開始されているが、これなども研究者から見れば白昼堂々と強盗が行われたかのような所行に映っているはずである。筆者の見る限りネットでも指摘が少ないように思うが、STAP細胞作製の追加プロトコルを出すということは、少なくとも自分たちはできるということを改めて宣言したことに他ならない。それにも関わらず、丹羽リーダーには新たな予算を費やして1年間、検証実験を行うということが認められている。プロトコルではSTAP幹細胞まで再現性をもって樹立を確認したということが述べられている。どうしてこのプロトコルは謝罪の言葉とともに撤回されないのだろうか。あるいは再現性よく確立する幹細胞の研究をあらためて実施するのは何故なのか。今や、当該論文の問題点を知らずに本研究に取り組むような研究者いないので実害はないかもしれないが、こうした欺瞞が放置されていることは関連研究者の姿勢を良く表している。1,000万円オーダーの研究費の獲得に一般の研究者がはらう努力を考えると(そしてその申請の多くは却下される現実を考えると)、こうした自然科学に何の寄与もない、組織防衛のための実験が無条件でサポートされている現状はやりきれないものがある。「母屋でおかゆを食べているのに、離れで子どもがすき焼きを食っている」という塩川大臣の有名な言葉があるが、基礎研究のフィールドでは理化学研究所は「離れですき焼きを食べる子ども」である。

研究者から公共性が失われたら何が残るのだろう。研究者の活動を支える公共性の問題を無視して、なお基礎研究ができると考えることは端的に誤りであり、傲慢な姿勢である。このまま、理化学研究所と文科省が現在の方針を貫徹することは、文字通りの基礎研究の死をもたらすことだろう。現在トップの判断に影響を与えられる立場にいる科学者の行動は、まさに歴史の法廷で裁かれるだろう。基礎研究が国民からの支援を受ける上では、誠実さは欠くべからざる条件である。


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‥Na曹達ガラスの細管通しの外皮遺伝子発現系破砕剥ぎ取りのリミットサイクル乱打旨須が今のところ再現不能?
固液2相流の緩和時間が0.3〜0.4秒の加圧クラック入れ減圧拡散のレオロジーをマタイD37数値計算悪の所業でカット?
剥ぎ取りに0.5秒以上確保の減圧の工夫?
国家は必要悪の権化故に財政支援の基礎研究‥
赤字国債積み上げ
未蛙
2014/05/12 20:48

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