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zoom RSS 生命科学におけるソーカル事件?

<<   作成日時 : 2014/04/22 00:10   >>

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今回のSTAP細胞事件は論点が多すぎて、まるで生命科学のかかえる問題点を整理するために生じたかのような印象をもった。科学者と一般社会との乖離がこのような形で表面化した事件はこれまでなかったのではないだろうか。科学者の視点からは、STAP細胞騒動は既に終わっていて、社会的にどのような形で決着が図られるかのみが関心となっている。国会において理研の野依理事長が、「(あなたたちが喧伝した)STAP細胞はあるのか?」と長妻議員に質問され、「あるかどうかは第三者の研究による証明が必要で、理研も引き続き調べる」という意味の答弁を行ったが、これはまさに組織によって科学者の良心が踏みにじられた瞬間と言えるだろう。新たな現象や発見は証拠をもって示すことが正しい科学の手続きであるから、証拠がいい加減なものとなった今や、最初の話は撤回しなければ科学者ではない。科学者から見れば、野依理事長は、社会の様々なしがらみに絡め取られて、苦し紛れに嘘をついているようにしか見えないはずである。科学者の良心などというものは、ノーベルや原爆の例をあげるまでもなく、何度となく踏みにじられてきたので、社会にとっては案外どうでも良いものという見方もある。しかしながら、一方で科学者がもう少し社会への責務を果たすという気持ちを持っていれば、福島の原発事故は起こらなかったかも知れない。いずれにせよ、一流の科学者はまたもや社会からの信託を裏切ったといえるだろう。

以前、ビッグラボの弊害について紹介したが、そもそも科学によって未知の何かを解明するという好奇心よりも、むしろ金や権力に関心の強い研究者が濃縮されている現状に対する反省が必要である。これは制度的な問題であり、現在のように偏向した論文業績至上主義で、研究費の配分を極端に傾斜し、それに人事を連動させれば、どのようなことになるかは火を見るより明らかである。早稲田の学位審査の杜撰さが問題となっているが、如何に早く政府の情報を得てこれにフィットした研究計画を立てるかといったことに腐心している研究者が、学位の審査をまともにしているとは考えにくい。彼らは何を研究するかではなく、何で稼ぐかということに関心がある。剽窃という言葉で表すのが憚られるほどの恥知らずな学位論文の数々は、ディプロマミルということばがまさにぴったりである。論文なしで学位を認めているディプロマミルの方が、盗用される被害者を生まないだけまだ爽やかなくらいである。生命科学のビッグプロジェクトの中には、壮大な虚業と呼ぶのが相応しい計画がたくさんあるが、安倍政権はさらにこの流れを加速させようとしていることが問題である。

今回の騒動ではリンパ球における遺伝子組換えが焦点となったので、免疫学者の関心もひいていたが、Nature論文が審査を通過し掲載された過程を考えると、生命科学の危機は極めて深刻と言わざるを得ない。既にたくさんの論評があるが、少し気になった点を個人的に追記してみる。補遺のデータではあるが、明らかに設定のおかしいフローサイトメトリーの図が掲載されている。また、専門家が見ればすぐに異常に気付くような、テラトーマの組織像が掲載されている。これらはいずれもその分野であれば大学院生レベルでも異変に気付きそうなデータである。理研CDBにおいてこうしたデータに誰も異を唱えず、Natureの査読においても誰も指摘せずに、結局掲載されてしまったというのは、いったいどういうことだろうか。事件の中ではごく些細な問題点かもしれないが、こうしたミスが起こってしまうのは、生命科学領域において知的退廃が相当なレベルにまで進んでいる証拠ではないだろうか。投稿者も査読者も理解できていないデータが盛りだくさんの論文が一流紙に掲載される。このことは知的退廃としか言いようがないのではないだろうか。以前、取り上げたが、ポストモダン思想における「「知」の欺瞞」と同様のことが自然科学において起こってしまったという深い絶望感がある。ソーカル事件では、ポストモダン思想業界では執筆者も査読者も理解できていない自然科学の専門用語が恣意的な解釈のもと濫用されていることが物理学者によって暴かれたが、STAP論文では投稿者も査読者もフローサイトメトリーの使い方すら知らないことが明らかとなった。ソーカル事件ではもっともらしい科学用語と、ソーカルの地位が、論文受諾の決め手となったようであるが、STAP事件ではそれは膨大な「多角的解析」と笹井副センター長や若山教授の過去の研究実績であろう。率直に言って自分の所属する業界がポストモダンのインチキと同様のスキャンダルに見舞われるとは想像していなかったが、それは「灯台下暗し」で、昨今の生命科学研究の変質を冷静に見ていれば予測可能だったかもしれない。ノーベル賞受賞者であるシェックマンが警告したように、Cell, Nature, Scienceは生命科学を毀損する存在なのかもしれない。しかしそれらは全て科学者の熱烈な信仰によって支えられている。

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