読書の記録

アクセスカウンタ

zoom RSS 「武器としての決断思考」瀧本哲史

<<   作成日時 : 2013/06/30 16:19   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

2012年のジュンク堂本店売上1位という帯にひかれて購入(なお2, 3位はワンピースらしい)。決断思考というタイトルから、決断に至るロジックについて書かれた本ではないかと想像したが、読んでみると主な内容はディベートについてのものであった。著者は東大法学部を卒業後、直ちに助手となり、その後マッキンゼーに転職、3年後に独立という経歴で、現在の肩書きは「京都大学客員准教授、エンジェル投資家」とのことである。この10年くらいで目立つ知的エリートのキャリアの典型の一つである。京大の担当講義は大変な人気講義で、そうした活動をもとに本書、および後続の新書が出版されている。星海社は関連するWebサイトももっている。 著者とこうした活動がどの程度関係があるかは分からないが、星海社新書には船井総研がらみのものもあれば、イケダハヤト本もあり、胡散臭さはぬぐえない。Webや出版界では一種のマッキンゼーバブルみたいな状況にある(人気ブロガーのちきりんこと、伊賀泰代さんもマッキンゼー出身)。

賢明さにはいろいろなベクトルがあるが、現代はいわゆるコンサル的な先鋭性がもてはやされる時代なのかもしれない。コンサル的なものの考え方の特徴の一つは、ロジカルな展開が可能な範囲に問題を絞ることであり、一見したところは科学のアプローチとも類似している。本書でも強調されるが、ディベートの目的は論破することではなく、現時点での最適解を求めることである。最適解という目標は状況により変化することを含意するので、その方針はロジカルでありつつも一方でフレキシブルである。しかしながら、人間が関与する問題については、自然科学の実験のようにシンプルに条件設定をして検証するということは不可能であり、そもそも科学的なアプローチが馴染まないことも多い。人間活動は生物活動と同じで、栄養源がある限り増殖を続け、環境が破壊されればコロニーごと破滅すればよい、というシンプルな考えに満足するのであれば、各々の小コロニーは生存のための最適戦略を考えればそれでよいだろう。しかしながら、人間の営みは他の生物とは違って自らの滅亡を回避できるとか、あるいは構成員にとっての「よりよい社会」を作れる、という考えを少しでも持つ人であれば、現状の最適解だけを求めるという目標には満足できないはずである。例えば、最適解とはとても言えないだろうが、社会を良くするための行動とは何かといった倫理は、マッキンゼー的な背景をもつ人間からは生まれてこないだろう。むしろ関心が低いのではないだろうか。

国費で優遇された学修環境で学んだ若者には、国家に対する貢献についても少しは考える責務があるはずであるが、著者は自分たちを含めた若手エリートをゲリラと称している。ゲリラは局地戦の勝利には関心を持つが、大きな戦いについては無力であり、場合によっては大きな目標すら失っていることもある。ぼんやりした若者が本書のような檄文を読んで、個人として勝ち抜くための技術を身につけようという気持ちを持つことは悪いことではないだろうが、ゲリラとしてではなく社会のメインストリームを担う気持ちを持つことも大事ではないだろうか。東大法学部出身者が、官僚を避け、外資系金融機関やコンサルティング会社に就職することは、現状の最適解という意味では見事な行動なのかもしれないが、大勢の人間で構成された社会をどうするべきかという公の観点がなくなってしまうようでは問題である。「どうすれば良いか」だけではなく、「どうあるべきか」を考えるための教育も必要ではないだろうか。後者もディベートで議論されそうな世の中の勢いであるが、後者は価値観の醸成であり速成することは難しい。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【「逆」をとる戦術で】戦略がすべて
身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して、戦略的に「勝つ」方法を考える習慣を身につければいい。(255ページ) ...続きを見る
ぱふぅ家のサイバー小物
2016/01/23 18:56

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「武器としての決断思考」瀧本哲史 読書の記録/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる