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zoom RSS 「知の逆転」吉成真由美編

<<   作成日時 : 2013/06/22 17:55   >>

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本書はサイエンスライターである吉成真由美さんが、ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンという錚々たる顔ぶれにインタビューした内容をまとめたものである。現代最高の知性にある程度共通した問題意識をぶつけていくという構成上、個々の人物に関心の深い読者にはあっさりした印象を与えるかもしれない。一方で、西洋文明の発展の現状を俯瞰する上では、貴重なインタビュー集になっている。

冒頭のダイアモンドは、「銃・病原菌・鉄」でヨーロッパ文明の優位性を相対化したことでよく知られるが、インタビューイの多くはダイソンの有名な言葉のように「キリスト教を実践するが信仰はしていない」、あるいは無宗教者である。20年前に同種の試みをしたならば、現代の最高の知性として集められた人物が無宗教者ということはまず考えられない。ダイアモンドは「人生の意味を問うこと」には何の意味もないと断言しており、チョムスキーも「人生の意味」は科学に答えられる問いかけではないとしている。「科学」のあり方、社会との関係が注目されている現代において、彼らのように明瞭なスタンスを持つことは重要であるが、一方で全体的には無常観に通じるような淡々とした姿勢が西洋の知識人に生じていることは興味深い。知識人の関心という狭い範囲に限定すれば、東西の知性の到達点はそれほど異なる場所ではないことが次第に明らかになるのではないだろうか。

一方で、インタビューではこれからの「教育」についても質問が設定されているが、いずれも歯切れが悪い回答や、伝統的な価値観の繰り返しになっていて、誰一人として未来の教育像を明瞭に描けていないことも印象に残った。もちろん回答者はプロフェッショナルな教育者ではないが、大学や所属組織における人材育成には少なからず関心をもつべき立場にいるはずである。彼らの誰一人として未来の教育像に関してクリアなビジョンを持っていないということが持つ意味は存外大きいような気がする。

ミンスキーやレイトンが文学的なものに全く価値を見出していない点も興味深かった。あらゆる小説は設定が同じ繰り返しで読むに耐えないというのは、全くその通りであるが、まるで高校生のような理屈で文学作品の価値やユングの心理学を否定している姿は、科学を信奉する知識人の一つの典型と言えるだろう。私の専門分野に一番近いのがワトソンであるが、相変わらず舌鋒鋭く、数ページ読んだだけでお腹いっぱいという印象である。人種差別発言でコールドスプリングハーバー研究所の会長職を辞したことは記憶に新しいが、相変わらず傲慢な態度で自分の設定した価値観から一歩も出ようとしない様子(この年齢でいまだに生き生きとフランクリンを罵倒する)は、伝統的な西洋的知識人の姿を周回遅れで見せてくれているようである。

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