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zoom RSS 「働かないアリに意義がある」長谷川英祐

<<   作成日時 : 2012/10/06 23:21   >>

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しばらく前に話題になった本書を読了。多くの一般の読者は、アリやハチといった真社会性生物のエピソードを読んで、否が応でも人間社会を想起してしまうだろう。著者も所々に人間社会との相似性を盛り込んでくるので、そのような印象を持つことは避けられない。著者が実際には基礎生物学の研究を進めながら、人間社会との関連性に言及するところに科研費を始めとする研究費申請の苦労を思い浮かべたりするのは筋の悪い感想かもしれない。「生物って面白いよね!」では研究費を稼ぐことは現在では困難である。

著者の意図とは異なるかもしれないが、筆者は真社会性生物といっても実に多様な生態のものがあるという点が印象に残った。それぞれの種には進化的な背景があって、現在の生態(社会構成)を固有に持っていることが予想されるが、似たような自然環境においても様々なやり方が許されていることにむしろ興味を覚えた。血縁度の高い個体を助けることにより遺伝子を残すという原則が至上の目標であれば、似たような社会が築かれても良さそうであるし、また血縁度さえ実験的に同定できればその社会での各個体の振る舞いは自動的に規定できそうである。しかしながら、現実的には血縁度を測定するだけでは、社会制度を推測することは困難であり、そこには社会を一定期間維持することとのトレードオフの関係が隠れている。ある戦略が採用される理由は、これこれのトレードオフの大小関係があるからだろうという解釈は基本的に後付けであり、血縁度と同等のリジッドな評価指標を確立しないと、真社会性生物の社会の姿を予測することは難しいだろう。個体のエネルギー消費や、コロニーの安定度など、いろいろな指標が考えられるが、そういう方向の研究はどれくらい進んでいるのだろう。ハミルトン則は、数学の式として捉えるには、あまりに素朴で(単位もよく分からない)、言葉で説明した方が誠実だろうという印象を受ける。

とはいえ、コロニーの持続性や緊急時への弾力的な対応のために、なかなか仕事をしたがらない個体がいるというのは十分に合理的な仕組みといえる。人間の場合は、それぞれの個体が全体の働きぶりを見て自分の行動を変えたり、あるいは意図的なフリーライダーが存在するために、より事態は複雑であるが、大枠の考え方として真社会性生物の生態は役に立つモデルとして捉えることができるかもしれない。

興味深い内容の本書であるが、図による説明が大変分かりにくい。本文を読んだ方がむしろ正しく理解できるくらいで、図解することにより理解しやすくするという役割が果たせていない。メディアファクトリー新書というのはあまり馴染みがないところであるが、これは編集者がきちんと仕事ができていないのではないだろうか。

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