読書の記録

アクセスカウンタ

zoom RSS 「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」畝山智香子

<<   作成日時 : 2012/02/08 22:13   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

ゼロリスクを望むことによるコストの増大や、ゼロリスクという考え方に潜む危険性という問題は、原発事故を通じて今までより多くの人々に認識されるようになったように思われる。BSEの際には行き着くところまで行くという結論から全頭検査が採用されたが、今回の放射能汚染ではさすがにゼロを求めることは不可能であり、どの選択肢を選べば一番被害が小さくなるかという複雑な課題に取り組まなければならない。本書やその後出版された「「安全な食べもの」ってなんだろう?」は、これまでよりもたくさんの人の目に触れる機会を得ているのではないだろうか。リスク評価、特に食の安全や医療に関わるものは、日々個人が選択を迫られる重要なテーマであるにも関わらず、これまでは専門家任せ、あるいは業者任せであったように思われる。食品を通じた内部被曝のリスク評価は、専門家(中には専門家もどきや自称専門家も含まれているのがややこしいが)の間であっても幅があり、さて何を食べるかというときには、大なり小なり自分の判断というものが要求される。おそらくここ数年から10年程度はそうした状況が続くだろう。

著者は国立医薬品食品衛生研究所に所属し、食品安全情報blogは、食の安全リスクについてネットで調べものをする人にとっては大変有名なwebサイトである。本書では、webの方針と同様に食中毒に関する記載は省略されているが、それ以外の「食の安全」に関わる現代的な問題(食品添加物、遺伝子組換え食品、食品汚染など)はいずれも取り上げられている。個々の問題はそれぞれ例として取り上げられており、その記述を読むことで、食品の安全性とはどういうことなのか、現在どのように安全性が保証されているのかという問題について考えるための方針を学ぶことができる。網羅的に情報を羅列しているわけではないので、事典的なものを期待する読者は肩すかしかもしれないが、様々な食品の問題を自分で考えようとする際にはいずれも極めて重要な内容である。そして現代の読者に要求されているのは、自分で考える力である。

本書は実に配慮された内容であり、例えば医歯薬学の大学生であれば、著者が期待するリテラシーをスムースに身につけることができるだろう。一方で、一般的な読者に対しては些か厳しい箇所もある。用量反応曲線の概念は上記の学部教育を受けた人間にとっては常識であるが、「対数目盛にシグモイド」というイメージのない人にとっては本書の序盤は結構難しく感じると思う。医薬品における効果と毒性についてもう少し基本的なレクチャーがあるとより親切ではないだろうか。厳密な測定というイメージをもたれている科学の中で、安全係数があるときは100で、またあるときは10であったりする理由についても、簡単な説明はあるものの、随分適当だなという印象を持つ人も多いだろう。本書の目標はそうした細かい話ではないのだが、気になる人はなかなか前に進みにくいかもしれない。

原発事故の影響、特に食品汚染の問題は、流通の発達した現在では全国的な問題として認識されている。生レバーによる食中毒死事件で明らかになったように、コストのためには手段を選ばないという世界がある以上、食品から身を守るという発想が出てくることはやむを得ない。そこで必要なことは、本書で述べられているような基本的な知識である。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「「安全な食べもの」ってなんだろう?―放射線と食品のリスクを考える」畝山智香子
著者は既に「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」を執筆しており、食品の安全性についての一般向けの解説を著している。本書は原発事故を契機として緊急に企画されたことが巻末にも述べられているが、本書の方がむしろ良くテーマが消化されており、分かりやすいという印象をもった。被曝による発がんという軸がしっかり設定されているせいかもしれない。放射線の被曝と健康障害についてはネットを中心に様々な意見が拡散しているが、ネットの悪い特性である思い込みが強化されやすい構造が原因となって情報は分... ...続きを見る
読書の記録
2012/04/17 01:36

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想」畝山智香子 読書の記録/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる