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zoom RSS 「金融が乗っ取る世界経済―21世紀の憂鬱」ロナルド・ドーア

<<   作成日時 : 2012/01/09 22:20   >>

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著者は「経済の金融化」そのものが、現代において解決すべき問題であるという視点から本書を著している。経済学について門外漢である人間にとって、「金融化」が世界にもたらした福音が何であるのかを理解することは極めて難しい。経済成長に必要な資本を融通する「金融」を超えた「金融」の役割とは何なのか、またそれは誰のためにあるのかを考えると、先端的な「金融」の仕組みは富裕層への所得の移転、格差の拡大を主たる目的としているという結論に至らざるを得ない。こういう考え方は素人の意見なのだろうかと感じていたところに、本書は様々な事実をもってそうした認識があながち間違いではないことを示している。

世界史的に見た場合、過去のアフリカや南米における暴力的な略奪がヨーロッパの資本蓄積に大きく寄与し、それは今以て返済されることはない。現在もなお、途上国への援助や民主化という名の下にさらなる巧妙な略奪が継続している。本書ではアングロサクソンとヨーロッパとは区別されているが、時期が異なっているだけで、世界に与えた災厄という意味では区別することに意味はないような気がする。しかしながら、「金融」という仕組みを考えると、やはりアングロサクソンの占める位置は極めて大きい。

「金融」が本来の機能を逸脱する過程で重要な要素の一つが「高度な数学」である。また、ノーベル経済学賞という仕掛け(これは自然科学のノーベル賞とは位置づけが異なるにも関わらず、両者を混同させようとする努力のおかげで、両者は同じ価値を有すると考える人も多い)が果たした役割も大きそうである。リスクヘッジや金融の安定化と言ったお題目は、全て実体とは逆の「ニュースピーク」である。リスクヘッジを謳う仕掛けは、「優れた」ものほど世界の金融のリスクを高める作用を強く有している。「高度な数学」やノーベル賞受賞の経済学者を看板に、インチキな富の強奪が行われているのが現代である。

本書で気づいたことであるが、国際的な議論においてもアングロサクソンに対しては倫理や道義は通用しないので、何らかの経済的な得失と結びつけた仕組みでしか彼らをコントロールできないということが認識されていることには些か驚いた。自分たちに有利なルールを策定し、巧みな嘘で同意を取り付け、貪欲に利益をむさぼる姿は悪魔的であるが、それこそがアングロサクソン的な金融の本体である。アメリカとイギリスは金融と武力を背景として世界を破綻に引き込もうとしているようにも感じられる。そして大きな混乱に乗じてさらに自らの力を拡大させることを企図している。世界大戦をはじめとする幾度かの殺戮を経てもなお、世界の人が幸福になるための自制や倫理が全くなく(その一方で、民主主義の重要性や人権と言った言葉で誤魔化すことだけは長けている)、歴史に学ぶところがない。こうした一連の金融集団の活動は、人体であればウイルス感染や、あるいは癌を想起させる。

アメリカ留学により洗脳された(イデオロギーを埋め込むという意味では極めて優れた教育システムである)経済学者をはじめとする政策決定者の呪縛を解くためにも、きちんと自分の頭で考えることができる人材を育てる優れた高等教育が必須である。その際にイデオロギーに基づく相対的な価値判断の泥沼に陥らぬために必要なツールが、自然科学のトレーニングではないだろうか。

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