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zoom RSS 「御厨貴・東京大学先端科学技術研究センター教授に聞く【最終回】」池上彰の「学問のススメ」

<<   作成日時 : 2011/12/18 00:45   >>

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「日本の小さすぎる「首相の器」をテーマに語り合う」という日経ビジネスの連載の最終回である。どの程度の反響が世の中であったかは分からないが、最終回では官僚予備軍としての東大生の問題点がよく取り上げられているように感じられた。由々しき問題が含まれているように思うのであるが、特に危機感をもったやりとりにはなっていないような印象ももった。

(「かつては迷わずに官僚になっていた優秀な東大生たちが、最近、官僚にならないというのは本当ですか?」という問いかけに)
御厨:一時は本当にそうでした。以前なら財務省に行っていたようなトッ プクラスの成績の学生たちが、官僚には目もくれず、外資系金融機関に就職していきました。ところが、リーマンショックを経て外資系の金融機関もダメになったので、今では「やっぱり官僚かな」という雰囲気に戻っています。いますけれど……それでも、官僚になることに本当に悩んでいます。なかなか官僚になることを決断できない学生が多いのが実情ですね。


外資系金融機関へ就職した学生たちは何を期待していたのかはコメントされていないが、要するに目先の金ではないだろうか。労働が苦役というニュアンスが主である欧米では、金融機関で稼ぎまくってアーリーリタイアメントという選択肢が有力な人生設計の一つであるようであるが、日本においてもそうした価値観がじわじわとトップクラスの人材を蝕んでいるようである。官民を問わず仕事を通じて社会貢献することの価値が見失われている。ヘッジファンドに代表される金融機関は、経済の発展のために存在する本来の金融機関ではなく、富の偏在をドライブする合法的な犯罪集団に近い。そうした組織に能力のある人材が集まるということは、日本の高等教育機関には何のディシプリンもないということを如実に示しているように思える。成績優秀な学生たちが集まる東大においては、日本をリードする人材としての使命感を植え付けることも重要なことではないかと思われるが、トップクラスの人材が金融機関に就職するという実態は、大学において今や国家をリードする人材はかくあるべしという教育が実効性を失っていることを示している。一方で先ほどとりあげた財務省の官僚のように、視野の狭い全能感にとらわれたおかしな官僚の輩出は相変わらずである。

また、この記事で注目すべきところは、震災対応において各省から派遣された官僚が右往左往して現場の指揮が全く不能状態に陥ったときに、指導能力を発揮したのが自衛官であったというエピソードである。現在の官僚のマジョリティが緊急時に役に立たないというのはいかにも有りそうな話で、逆に本当だろうかという疑念すらわくくらいである。これは東大―省庁組織という官僚の教育システムが機能不全に陥っていることをよく表している。自衛官(あるいは医師でも同様であるが)はおそらくその場で最も重要なことは何か、何が優先で、何は後回しかということを常に意識しながら任務を遂行している。緊急時では最優先の事項について意見が割れることはおそらく稀であり、その最優先事項の達成を軸として、様々なタスクが処理される。本来であれば、官僚も国家にプラスとなる活動こそが最優先の業務であり、個々の省益などは瑣末な事項である。しかしながら、現在の官僚組織においては「原理原則論」は忌み嫌われる考え方なのだろう。

この記事の異様なところは、これだけ東大生―官僚に問題点が見出されているにも関わらず、また御厨教授はそうした人材を世に送り出す上で責任を持つ一人であるにも関わらず、反省や改善の手立てについては語られないところにある。リーマンショックで東大生は改めて官僚を目指すようになったようであるが、給料や身分の安定が全てというメンタリティの若者を高級官僚として遇する必要があるのだろうか。彼らの高い学力は、官僚文学や責任逃れや天下り先の確保に浪費されている。中国における科挙制度の制度疲労が国の崩壊を引き起こしたという歴史に学ぶ必要があるのではないだろうか。最終段落で野田首相を高く評価するという社会とは乖離した議論が交わされるが、この弛緩した雰囲気はどこから生まれてくるのだろうか。

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