読書の記録

アクセスカウンタ

zoom RSS 「生物学的文明論」本川達雄

<<   作成日時 : 2011/09/04 13:59   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

専門分野ではどういう評価になるのかは分からないが、「ゾウの時間ネズミの時間」はポピュラーサイエンスの優れた著作であり、エネルギーの消費と寿命の関係に関する言及など、結果として最近の生命科学の研究のトレンドを先取りしていたように思う。「ゾウの時間ネズミの時間」ではマクロなエネルギー代謝という指標と、生物のサイズ、寿命と言った問題が取り扱われていたが、最近の生命科学ではまさにそういった問題が分子レベルで注目されており、太く短く、あるいは細く長くという生き方の特徴が詳細に解明されつつある。

本書では冒頭部分の珊瑚礁の生態系の話からタイトル通り「文明論」の話へと移行していくのかと思わされるが、途中からは生物学そのものにフォーカスが移っていき、水と生物の関係、生物のデザインの問題、「ゾウの時間ネズミの時間」でも論じられた話題などが取り上げられ、最終章は著者の専門であるナマコの生物学が語られる。こうした話題を文明論としてどのように展開していくかは読者、あるいは別の識者に委ねられているという形である。そういう意味で、大上段な「文明論」を期待すると少々肩すかしにあうだろうが、一方で自然科学研究者としての守備範囲を超えずに社会へのメッセージを打ち出すとするとこうした形は誠実なものだろう。社会全体の問題について学者が何かを語る際には、専門外の様々な周辺の問題に目をつぶって、えいやっと一線を越えるしかない。それが的外れな超え方であれば、無視されるだろうし、どこかおやっと思わされるものが含まれていれば注目を集める。本書と本格的な文明論の間の距離はそこそこあるので、橋かけとなる議論が必要だろう。

最近、「理系」人材が、技術的な職種だけではなく、もっと社会的な意志決定の場に進出するべきではないかということを考えていたが、本書では物理、数学的な発想主導の科学技術の進展が、「四角い」社会を生み出しているという指摘があった。確かに生物の造形と、工業的な造形には相容れないものがあり、それが現代の科学技術の抱える問題であるという指摘は重要である。持続可能性やリサイクルといった近年のキーワードは、いずれも生物学に答えを求めることが適切な課題であるが、生物的な造形の背景には「生命」という重要な問題が背景にあり、「いのち」についての理解がまだ不十分な現段階ではまだまだ道のりは困難で長そうである。非常に長いスパンでしか分裂しない地下バクテリアや、冬眠、種子等の低エネルギー状態と非生物との境目がどこにあるのかなど興味はつきないが、このあたりの事情が解明されないことには、文明生活に生物学的な発想をダイレクトに応用するのは難しいかもしれない。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「生物学的文明論」本川達雄 読書の記録/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる