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zoom RSS 「コンピュータが仕事を奪う」新井紀子

<<   作成日時 : 2011/05/24 22:58   >>

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著者は国立情報学研究所の教授であり、研究者の間では有名なResearchmapの開発者である。産業革命が多くの工場労働者を不要な存在に変え、ラッダイト運動を生み出したように、現代はコンピュータがホワイトカラーを駆逐する時代と考えられている。それでは、これからの人間が「失業」しないためには何が必要なのだろう。コンピュータにできないこととは何だろう。そんなことを考える若者にとって本書は必読である。

人工知能の例があげられているが、いかにも人間の専売特許のように考えられている「会話」も、莫大なパターンの会話を蓄積し、そのパターンを解析し、応用することでそれらしい内容の話ができるようになる。今までこれはさすがにコンピュータには無理だろうと思われていた作業が、データ処理能力の向上と情報量の莫大な蓄積によって、思いも寄らない方法で実現されてしまう。「コンピュータは考えることはできない」というのは使い古されたフレーズで、多くの人は「与えられた計算を正確にこなす」ことがコンピュータの本質と考えている。しかしながら、恰も考えたかのような結果をアウトプットすることは今やそれほど困難なことではない。本書では、コンピュータが収集する画像に、灯台や海、太陽といったタグを付けることにより機械学習の手助けをする「コンピュータ」の下働きとしての人間というショッキングな話題が提供される。確かに画像から意味や象徴を見いだすことは人間らしい作業であるが、それらを機械学習で実現するためのデータ蓄積作業とはまさにコンピュータの下働きとしての人間と言えるだろう。ホワイトカラーはコンピュータを境に二つに分断され、一方はコンピュータの下働き、一方はコンピュータを使う立場となるという予測はおそらく正しいだろう。

著者も最後は考える能力こそが人間の最後の砦ということを述べており、数学の重要性、暗記とパターン認識による学習の限界を指摘しているが、通り一遍の数学優位論とは異なり、様々な実例をあげ自説を補強している。個人的には「比と割合」を理解できない子が算数嫌いになるという指摘は、とても端的な表現で数学を受け付けない人の実態を表現しているように感じた。

人間にとって「意味がある」とはどういうことかといった哲学的な話題にも繋がるかもしれないが、下記の著者のまとめは含蓄がある。

耳を澄ます。耳を澄まして、じっと見る。そして、起こっていることの意味を考える。それ以外に、結局のところ、コンピュータに勝つ方法はないのです。


自分の子どもたちに話をすることを考えると憂鬱になりそうな話であるが、一方で科学技術の発展はそろそろ誰もが働かなくても生きていける社会を実現させようとしているのではないだろうか。全世界的に見れば富は偏在し、目立つ動きはいずれもさらなる富の偏在を起こそうというものばかりであるが、ITの引き起こす変化はこうした人間の際限のない欲望の下働きに過ぎないのだろうか。

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