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zoom RSS 「心理療法入門(心理療法コレクションY)」河合隼雄

<<   作成日時 : 2011/04/25 22:52   >>

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本書は、「講座 心理療法」八巻のそれぞれの冒頭におかれた著者による概要をまとめて一冊としており、その際に加筆修正が行われている。最後には「こもりと夢」というタイトルの講演内容が収められている。シリーズ各巻の巻頭言なので、執筆者の原稿の紹介を交えながらアウトラインが要約されているという内容を予想して読んだが、それは最初の方だけで、中盤以降は案に相違して濃い内容であり、今回のコレクションの中では最も読むのに時間がかかった。「心理療法入門」というタイトルが付けられていることにも納得がいく内容であった。私は心理療法家を目指しているわけではないので、本書を入門書として捉えているわけではないが、得るところが大きかった。科学の両手からこぼれ落ちてしまう問題をどのように取り扱うのが適切なのか、心の問題を一回一回が全く様相の異なる出来事としてのみ捉えるのではなく、一つの体系として取り組むためにはどういう態度を取るべきなのかといった大変重要な問題が取り扱われている。私は著者が理学部出身であることに大きな関心を持っており、乱暴な言い方をすれば、科学の手続きを知っている著者の言うことは懸命に耳を傾けたいと思うが、自然科学の手法を知らない哲学者や評論家の科学論には得るところはないと考えている。著者の言説は一方を指摘すればその反対の要素を強調しといった感じで、一見したところ捉えどころがないが、両方を考慮しつつ、なおかつそれらの背景にあるものを探るという態度は一貫している。科学的手法だけでは対象を把握することは難しいということに気づく心理療法家は多いだろうが、そこに気づいてもなおかつ何か普遍的な何かを求めていく姿勢を保つことは難しい。著者はそうした姿勢を保つだけでなく、常に「自然科学」の手法を比較対象として、どこまでが科学的に取り扱えて、どこからはそうでないかを冷徹に観察している。これは自然科学について真摯に取り組んだ経験がないことには不可能であろう。

例えば、「共時性」の概念は、科学者だけではなく心理療法家の中にも全くその価値を認めない場合がある。これに対しての著者の議論は、因果律との関係も含めて非常に練られたものであり、自然科学者にとっても刺激のある部分ではないだろうか。ホメオパシーの問題は、プラシーボ効果とともにかなり広く知られるようになってきたが、治療者が患者に対して強くコミットメントしているという点で、所謂標準医療のカウンターとして魅力を感じる人たちが一定数存在することは意味があるように思われる。もちろん、非科学的な似非治療法として退けることは容易であるが、何故代替医療と呼ばれる詐術に多くの人が吸い込まれるのかについて考察すると、非因果論的なアプローチが果たす役割は否定できない。これからも著者の著作を読む際には、様々な場で優れたガイドとなってくれそうな「心理療法入門」である。

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