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zoom RSS 「ユング心理学と仏教(心理療法コレクションX)」河合隼雄

<<   作成日時 : 2010/07/04 00:11   >>

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本書には、国際的に活躍するユング派の心理学者を招いて行われるフェイ・レクチャーで行われた講演が収められている。著者が本書でも述べているように、英語への翻訳を意識して書かれた文章は、国内で著された著作とは少し異なるリズムがある。また、聴衆が日本人ではなく、アメリカ人であるという点も十分意識されていることが伺える。著者を招いたローゼン博士の緒言が付されているが、そこにはこの講演を理解するために払われた努力が伺えるが、一方でローゼン博士にとって率直に理解が困難な部分もあることが仄めかされている。また欧米人らしい図式的な理解を求めている部分もあり、著者があえて宙ぶらりんな矛盾した状態に身を置くことに自信をもっているという境地については「真の中庸」という言葉が使われているが、この姿勢については著者とローゼン博士とはおそらく見解が異なるのではないだろうか。

「ユング心理学と仏教」というタイトルからは思いもよらなかったが、冒頭は著者のちょっとした自伝という趣で始まる。西洋合理主義に対する厚い信頼を寄せ、科学的思考にどっぷりと浸かった著者が、高校教師として生徒とふれあう中で、心理療法の世界へ関心を寄せる過程が詳しく述べられている。いくつかの著者にとっての転機と言える出来事についても詳しく述べられており、著者にとって仏教が必然的にクローズアップされてくる過程を理解することができる。一般向けの著作では、こうした深い思索は背景へと退き、簡明な言葉が選ばれているが、個人的には今回の心理療法コレクションに収められている著作を先に熟読する機会があればと残念に思うほどであった。講演の終わりの方では「人間の科学」という極めて重要かつ、野心的な意見が述べられている。これもここだけを抜き出せば、口達者な議論上手に批判される可能性もある。しかしながら、著者がどのように思索を深め、この境地に達したかを理解すれば、容易には批判できる内容ではない。欧米的、キリスト教的な科学、そして男性原理について、共に生活することを通じて十分に咀嚼し、理解しようと努めた上での、仏教や東洋思想への言及である。巻末の「現代人と宗教」も現代においてますます重要な意味をもつ論説である。

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「心理療法入門(心理療法コレクションY)」河合隼雄
本書は、「講座 心理療法」八巻のそれぞれの冒頭におかれた著者による概要をまとめて一冊としており、その際に加筆修正が行われている。最後には「こもりと夢」というタイトルの講演内容が収められている。シリーズ各巻の巻頭言なので、執筆者の原稿の紹介を交えながらアウトラインが要約されているという内容を予想して読んだが、それは最初の方だけで、中盤以降は案に相違して濃い内容であり、今回のコレクションの中では最も読むのに時間がかかった。「心理療法入門」というタイトルが付けられていることにも納得がいく内容であ... ...続きを見る
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2011/04/25 22:52

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