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zoom RSS 「瀕死の双六問屋」忌野清志郎

<<   作成日時 : 2009/06/28 21:42   >>

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著者は今年がんにより亡くなったロックミュージシャンである。長らく雑誌を読まなくなっていたので、TV Brosに連載があったことも知らなかった。音楽活動を彷彿とさせる雰囲気にあふれており、ファンへのサービス精神と、怒り、そしてユーモアが絶妙に取り合わされている。双六問屋とは何かについては僅かな言及しかないのであるが、著者が理想郷として捉えていることは伺える。双六問屋の世間は、著者のパブリックイメージとは裏腹に、適度なしがらみのある情緒的な世界でもある。著者のファンであれば、著者の叙情的な側面はよく知るところであるだろうが、著者は個人の意見を重んじるばかりではなく、義理人情の世界の暖かみについても必ず忘れることはない。

「忌野清志郎の世界」についてはここしばらくあまりにたくさんのことが語られている。また「ロッキンオン」にも過去のインタビューの総括、および仲井戸麗市、坂本龍一のインタビューが掲載されている。新たに付け加えるようなことは何もないのだが、個人的に著者に励まされていることについて述べてみる。

著者にはたくさんの名曲、素晴らしい歌詞があるが、RCサクセションの最後のアルバムである「Baby A Go Go」の中に「空がまた暗くなる」という曲がある。「大人だろ 勇気を出せよ」というフレーズに始まり、「大人」って何が大人なんだろうという問いかけに対する答えのような内容である。このアルバム自体、どこか漂白された、フォークのようなしみじみとした味わいが感じられるのであるが、この曲もバックの音楽は軽いテンポで淡々としていて、歌詞の重さみたいなものを打ち消すような働きをしている。

本書の解説の町田康(この評者もロックミュージシャンである)も述べているが、大人になることは難しい。しかしながら、それなりの年齢のものが、子どものままでいることに対する抵抗も相当なものである。ロックミュージシャンの指摘する、「それは少しおかしいんじゃあないの」という問題提起をいつまでも続けるのは大変なことである。著者はそういう意味で、「大人」はどう振る舞うべきなのかを、「子ども」の目をもって分かりやすく歌ってくれている。著者の素晴らしい点はいくらもあるのだが、何と言っても世間に対するしなやかさが抜群である。著者は「誰も知らない」で歌うように、自らの創り出す音楽や言葉に絶対的な自信をもっている。なので、いくら撤退を強いられようが、完全に自らが消滅してしまうことなどあり得ないと考えている。そしてじりじりとした消耗戦を続けながらも、「ユーモアが必要さ」というだけの余裕があるのである。「自分の周りだけでもまともにしたい」、「何だこの酷い状態は」、と考える全ての働く人に対して、「どんどんやれよ。でも君が消えてしまうようではだめだよ」と励ます、そんな優しくも厳しいメッセージが著者の作品の一部には確実に流れている。

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