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zoom RSS 「コスメの時代‐「私遊び」の現代文化論」米澤泉

<<   作成日時 : 2009/01/27 14:10   >>

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縁あって献本いただくことになり、通常読むことのないジャンルの本書を手にする機会を得た。インターネットとサブカルチャーの親和性は極めて高いので、例えばネットで話題のニュースやブログや話題を何とはなく目にするうちに、それなりの情報は入ってくる。意識をしたことはなかったが、知らず知らずに著者が引用するフィールドの文章なども目にしていることに気づいた。文章は軽快で、私のような門外漢であってもそれなりに流行の変遷や、その背景をおおよそ理解できるように工夫されている。時代を捉えるキーワードや言葉がうまくちりばめられ、著者と同じ時代を生きている者としてはそうそうと頷けるような80年代、90年代の描写もたくさん見つけることができた。読み方としては邪道かもしれないが、あとがきを先に見ておけば、もう少し著者のスタンスをふまえて読むことができたかもしれない。

著者は物語に自己を投影する時代から、物語のような面倒くさい手続きをふまずに、即物的に、カタログを選ぶように自己をプロデュースする時代への変遷を、具体的なたくさんの例をもって説明している。最終章では、人形遊びではなく、自らをフィギュアとして遊ぶ、現代女性の姿が描かれる。また、いわゆるオタクとの比較を通じてキャラ化の問題が出てくることも興味深く感じられた。アイテムを集めると、新しい技が繰り出せるというところもコスメとゲームの世界の共通点のように思える。

一方で、馴染みのない世界なので、いくつかさらに知りたい疑問点も出てきた。このあたりはどのような回答が与えられるのだろうか。

・第四章までの変遷はファッションの大衆化という捉え方もできるような気がする。即ち、一部の金持ちの道楽であり、自己主張であったファッションが一般大衆に降りていく過程で、こうした変化は避けられないのではないだろうか。一部の人たちの所有物である限りは、物語や伝統、格式といった飾り物を付けておいても維持できる(あるいはこうしたものが価値の一部となる)が、これを大勢の人の楽しめるものにする過程で、それらの殆どは邪魔な要素になってしまう。日本が経済的に豊かになるにつれ、世界のファッション業界はその商圏を拡大する。しかしながら、対象を広げるということは即ち、誰にでも理解可能で、親しめるものにしなければいけないということでもある。ギリシア神話や聖書の世界の教養を要求するような商品では、厳しい戦いを強いられるだろう。ファッション文化の大衆化、世俗化という一本道を進む中で、「コム・デ・ギャルソンを着ていれば知的」などと言う滑稽な状況も生じてしまったのではないだろうか。

・現在では、一般に浸透していくためには商品の品質すら重要な要素ではなくなってしまう。なぜなら、品質の違いまで分かる人は全体的に見ればきわめて少ないからである。例えば、資生堂のTSUBAKIにかけられた宣伝費の大きさは、商品開発や品質向上に投資された金額が小さいことを暗に示しているが、結果としては大ヒット商品であり、イメージ戦略的なものの重要性を改めて示している。

・一方で、第五章以降のオタクと重ね合わされるコスメフリークは、第四章までの大衆とは明らかに違う存在であり、ここで大きな断層があるように感じられる。CanCamと美的の購読者数の違いというか、第四章までの流れとは若干違う位相の話題ではないだろうか。インターネットを頻繁に使用していると、オタクやITの話題が世の中のある位置を占めているような錯覚に陥るが、やはりまだまだテレビが主要なメディアであり、サブカルチャーはネットと親和性が高いため、ネット上では目立つという結果を見ているような気がする。

例えば、レゴのようなおもちゃで創造性をフルに発揮したい、自らのアイデアを一から表出したいという子どももいれば、レゴではどう遊んでいいかわからない子どももいる。後者はフレキシビリティの低い、出来合いのおもちゃを次から次へと両親のお金が続くまで買う、そんな連想がわいた。出来合いのおもちゃしか楽しめない子どもはマジョリティであり、マジョリティが経済的に豊かになれば出来合いのおもちゃのバラエティも豊かになるはずである。

個人的には、ファッションショーを携帯片手に見て、欲しければ試着のステップもなく即買いするということが既に実現していることに驚かされた。レバーを引けばバナナが出てくる機械を前に、サルがレバーを引き続ける古典的な心理学実験さながらの世界で、大げさかもしれないが戦慄を覚えた。資本主義の乱暴から自らを守るのは、教育しかないようにあらためて思う。

うまく紹介できなかったが、いろいろと考えさせられることの多い一冊であった。


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