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zoom RSS 「貧困の終焉‐2025年までに世界を変える」ジェフリー・サックス

<<   作成日時 : 2008/11/29 00:23   >>

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ムハマド・ユヌス自伝と共に推奨されることの多い本書をようやく読むことができた。著者はボリビアやポーランド、ロシアをはじめとする多数の低開発国で経済顧問として活躍した経歴をもち、現在はコロンビア大学の地球研究所の所長として本書で述べられているグローバルな貧困問題の解決に取り組んでいる。華麗な経歴は著者が一流の経済学者であることを示しているが、理論に飽きたらず実地で試行錯誤を続けている点が、他の多くの経済学者と一線を画す点であろう。ノーベル経済学賞を受賞するような学者が、たくさんの一般書を出版し、政治にコミットし、机上の理論に終始しがちであるのに対して、著者はデータを重視し、極めて実際的に課題解決の処方箋を示す。著者の一般書は数少なく、むしろ専門的な経済学の論文が重視されている点も、著者が何を求めているかが明瞭に示されているように思う。国内ではスター経済学者の真似をしたい学者は多そうであるが、著者のようなスタンスの学者は少ないのではないだろうか。

貧困国を患者に見立てて、十分な情報を収集し、診断し、処方箋を出すという、臨床経済学というアイデアは秀逸である。何となく陳腐なアイデアのようにも聞こえるが、医師と同じようにこのステップをこなすために必要な知識や行動力、情報処理能力はかなりのレベルのものが必要である。著者の示すデータは、チョムスキーがしばしば指摘するように、「世界はひどいこともたくさん起こっているが着実に豊かになっており、大勢は理想的な方向を向いている」というものである。今や最低レベルの(開発のはしごに足をかけることすらできない)貧困を解決することは十分実現可能な目標なのである。

後半で辛辣な表現で攻撃される国は当然の如くアメリカなのであるが、実際的には全く金を出さないにも関わらず、「援助に対して成果が上がっていない」と主張したり、大統領をはじめ全く欺瞞に満ちた演説の山には本当に呆れさせられる。アングロサクソン的な世界への悪意はどの辺りにその源があるのだろうか。著者の計画がうまく運んだケースでも、その理由は宗教右派による同意であったり、アメリカの現状には本当に暗い気持ちにさせられる。低開発国への教育援助は重要なことであるが、世界に影響を与えるアメリカ大統領が適切に選ばれるように、アメリカ国民に対する教育援助をするのが早道なのではとさえ思わされる。

著者は明晰な頭脳をフル回転させて、そして自らのエリートとしての立場も十分わきまえながら、正攻法で問題解決にあたっている。著者が言うとおり、正しい方向への継続した意思と忍耐が、困難な問題を解決していくのだという強いメッセージを感じた。一方、ユヌス自伝と比較すると、非常にスマートな話が多く(あえてそう書かれているのだろうが)、人間の暗部みたいなものに触れた記述は少ない。現代の欧米社会の課題は、非欧米人が自らを上回るプレゼンスを示す社会を欧米人が受け入れることができるかどうかという問題である。本書では巧みに避けられているが、貧困の解決を遅らせている最も強力なモチベーションは、大雑把に言えば白人が非白人にイニシアティブを奪われることへの恐れであろう。貧しい人たちは決して無知ではなく、教育の重要性を知り、科学的な解決を好んでいる。一方で、先進国の国民であるはずのアメリカ人の多くはは無知蒙昧な宗教漬け状態である。

たくさんのデータや有益な議論が惜しげもなく盛り込まれている。多くの人に読まれるべき一冊といえる。

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