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zoom RSS 「ホロコースト‐ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌」芝健介

<<   作成日時 : 2008/09/02 00:32   >>

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ホロコーストに関しては、いくつかの映画やこれを題材にしたフィクションで知る程度で、本書を読むまではアウシュビッツが最大で最もたくさんのユダヤ人を殺戮した収容所であると認識していた。本書は、ユダヤ人絶滅を目的としたいわゆるジェノサイドに至る過程を資料をもとに丁寧に解説している。アウシュビッツ以外の重要な絶滅収容所、あるいは独ソ戦における記録すら定かではないユダヤ人の殺戮状況など、初めて知ることが多かった。本書は最初にジェノサイドありきという立場はとっておらず、ユダヤ人問題の解決がドイツからの周辺諸国への追放、マダガスカル島への強制移住、ソ連占領地域への強制移住といった案を移り変わりながら、戦況の悪化とともに選択肢が狭められていく過程を追っている。ナチス首脳陣が何の証言も残さず、自殺してしまっている以上多くの意思決定は推測するほかないが、現在得られる資料からは妥当な推測のようにも見える。しかしながら、一方で東部戦線で敗色が濃くなってから加速した殺戮に関しては、どうしてもユダヤ人殲滅の意思を感じさせられる。本書では、ユダヤ陰謀論や、ナチズムにおける「人種衛生学」「社会衛生学」の名の下に進められた優生学的処置といった点を大きな背景として最初に描いている。また、大ドイツ圏内のユダヤ人と、東欧・ロシアのユダヤ人との扱いの微妙な違い(ドイツ圏内のユダヤ人の方が知性的であり、利用可能な存在と考えられていた)などもホロコーストを理解する上で参考になった。

ユダヤ人問題に関してよく理解できない点として、何故当時ヨーロッパにおいてドイツ以外の各国においても広く「ユダヤ人問題」が認識されていたのかというところである。ごく基本的な質問であるが、うまく理解することができない。キリスト教の教義としては、キリストが地上に現れた理由も役割も認識できず、十字架にかけた民衆がユダヤ人ということになる。あるいは新たなキリスト教の神髄を理解できず、旧約の世界に耽溺して自ら以外の人々の救済を信じない頑迷な民衆という見方もあるだろう。こうした点は、確かに差別の要因となる可能性はあるが、近代においてもそれほど誰もが重視する違和感といえるのであろうか。また、カトリック社会が忌み嫌う金融に携わることで、国際的なネットワークを築き、ヨーロッパ国家においてもユダヤ人に負うところの大きい国がたくさんあったということも、嫌われる原因としてあげられる。しかし、これも国民レベルで誰もが認識する事実なのだろうか。本書で随所に出てくるユダヤ人の差別や殺戮の実態は、憎しみと呼べるような簡単なものではない。それは同じ人間であるという認識のもとにはとてもできない行動である。ユダヤ教というのも狭量な部分が色濃いが、キリスト教というのは本当に人間の醜悪な部分を解き放つパンドラの筺のようなしくみではないのだろうか。当時のローマ教皇はナチスの行動を黙認、あるいは弱く支持していたことはよく知られる。

これほどの蛮行であるが、ごく最近の出来事であり、ジェノサイドと思われる事態は第二次大戦のナチスドイツ以降も各地でたびたび生じている。その中には記録に残りそうにない出来事もたくさんあり、ホロコーストのように一級の資料が揃う事例は少ない。ナチス的なイメージを公的な場所で掲示することすら犯罪となる法律をもつドイツではこの問題は依然として、自ら取り扱うにはあまりに大きいという認識ではないだろうか。そういう意味でも著者のような研究者が国外からナチスのことを研究する価値がある。つい最近の出来事として、たくさんの若者が記録として知るべき事実である。

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