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zoom RSS 「キャリアデザイン入門 [I][II]」大久保幸夫

<<   作成日時 : 2008/08/07 00:05   >>

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リクルート出身で人材マネジメント畑を一貫して歩み続けてきた、まさに専門家によるキャリア論である。基礎力編と専門力編の二分冊となっているが、基礎力編がいわゆる若者のためのキャリア論であり、いくつかの項目は既存のキャリア本とよく似た内容である。例えば、流行の「自分探し」への断罪が含まれていたりする点は、昨今の若者にも目配りのある書きぶりである。一方、専門力編は中年以降のキャリアを如何に築くかという点に主眼が置かれている点で、少なくとも一般向けの本としては類書は少ないように思う。著者の主張したい点もむしろ後半にあり、後半の内容をより理解してもらうためにあえて陳腐な内容を含む前半が存在するようにも受け取れる。

印象的な言葉は「筏くだり」と「山登り」という対比である。若年労働において、目の前の課題を片付けしのいでいく中でスキルを付ける状況を「筏くだり」と定義し、最初は積極的に取り組むべき対象であるが、いつまでも、あるいは退職までずっとやるものではないと説いている。即ち、「筏くだり」になれて、それほど苦労せずに川を進めるようになれば、一念発起、目標を定めた「山登り」をすべきというものである。「山登り」の目標とは「プロ」になることであり、「プロ」は組織に依存せずともその専門性によって社会から必要とされる人材である。著者は「プロ」と「エキスパート」をも区別しており、いわゆる名物社員的な「エキスパート」は「プロ」には含まれていない。著者のイメージする「プロ」とは、世界的に有名で、大学の客員であったり、あるいは著書をものにしている人物である。著者自身の人生設計と非常に近しい像と思われる。

ここで疑問がわくのであるが、この本はいったい誰のために書かれているのかという点である。著者の意見というのは一面の真実であり、そうした向上心のあふれた人間にとっては参考になるアドバイスと思われる。一方で、組織は全員を「プロ」として取り扱うことを希望しているわけではなく、一生「筏くだり」をしてくれる人材が必要なケースもある。また、落ち着いて考えれば(何事も遅きに逸することはないとはいうものの)、「山登り」というのは個々の体力に応じた高さにしかトライできないし、人によってはそれは「山」とは到底呼べない。この本が一般向けであることを考慮すると、むしろ重要なことは自分が「山登り」が要求される人材なのかどうかの見極めではないだろうか。もちろん、それは自分で決めれば良いのであるが、どの程度客観的な見方ができるかは重要なポイントである。読みながら、著者の理想は分かるが、誰に読ませるつもりなのだろうという疑問は禁じ得なかった。「筏くだり」を続ける就業者全てが「山登り」を忘れているからそうしているわけではない。

ここでも巷の「成功本」と類似の「成功する人は成功する習慣をもっている」とか、「偉くなる人は志が高いからそうなる」といったトートロジーが繰り返されている。

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