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zoom RSS 「仕事と日本人」武田晴人

<<   作成日時 : 2008/02/08 23:33   >>

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著者は東京大学経済学研究科の教授であり、日本経済史が専門である。本書は市民大学における講義をもとにして著されたものであり、そのため読みやすくはなっているが、似たような内容の繰り返しとなっている箇所も認められる。歴史的に「労働」の起源を訪ねることを通じて、賃金を得るための現在の「労働」という観念がごく最近になって確立したものであり、決して歴史的な普遍性をもつものではないことを示している。

大学教授の「裁量労働」では、傍から見ていても教授が仕事をしているかどうかを確認することは難しい。本を読んでいるとして、それが仕事に役立つものか、あるいは単に趣味で読んでいるのか、あるいは暇つぶしかは分からない。あるいは植木職人がたばこを吹かしている時間は仕事中なのか、休憩中なのかは難しいところである。また、ヨーロッパの例では、育児中の女性管理職が週4日しか働かない例が出てくる。彼女は5日分ほどの仕事をこなすが、週3日の休みもまた自分への報酬であると考えている。即ち、賃金ではなく自分の時間を得るために、低くなった収入に甘んじるという選択である。こうした例をあげながら著者は賃金を得ることが自己目的と化した現代の「労働」のスタイル、概念に異議を唱えている。また、現代では賃金のない労働は職業とは呼ばれないという指摘も重要である。

西洋では生きるために必要な働きの殆どは「人間ではない」奴隷の行う作業であったという話も興味深い。即ち、西洋では「人間らしい活動」とは生きることから離れたものとして捉えられている。そのため、資本主義においても、いわゆる有産階級は、下層からの搾取のもと、余暇を得て人間らしい生活にいそしむ必要がある。こうした考え方では「労働」は苦役であり、「できれば働かずに、すきなだけ消費したい」という人間を生み出すことになるのは当然であろう。

必ずしも日本特有ではないだろうが、はたらくことに金銭以外の価値を見いだすという考え方は、これからますます重要になってくるはずである。多くの先進国では金銭に一元化してやっていけるほど簡単な情勢ではなくなってきている上に、既にそうした一元化の限界が見えてきている国もある。著者は本書では指摘していないが、日本ほど「楽して儲ける」ことが嫌われている国も少ないだろう。これは嫉妬だけではなく、一種のモラル意識と関連しており、自分の箸を他人に使われると気持ちが悪いのと同じ程度にはビルトインされている。こういう意識がどこから生まれ、また維持されているのかという点について、「横並び」とか「ムラ意識」といった手垢のついた言葉を使わずに議論できると、面白い発展があるような気がする。

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