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zoom RSS 「愚か者ほど出世する」ピーノ・アプリーレ

<<   作成日時 : 2008/01/19 01:08   >>

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動物学者のローレンツの親友という設定の哲学者と著者(ジャーナリスト)の間で交わされた往復書簡という設定で、「愚か者の数が増えるということが人類進化のトレンドではないか」という疑問についての議論が行われている。知的な戯れといった趣のある面白い論考である。優れた発明や技術が瞬く間に普遍化し、共有されるという現代文明の一面を正確に描いており、一読の価値がある。

それにしてもひどいのが、帯と養老孟司による序文である。手元にあるのは中央公論新社の単行本であるが、

「世の中バカが多くて疲れる理由を科学的に解明したバカ本の決定版!」


これが惹句であるが、本書は科学的に解明などしていないし、そういう意図で書かれた本でもない。一種の思考実験と、現代への揶揄が込められた知的な内容であり、「バカ本」でもないだろう。出版社がどうして養老孟司を連想したかがよく判らないのであるが、例のベストセラーの内容とは全く方向性の違うものである。さらに養老孟司の序文からの引用が全く意味不明である。後段の、

こういう本のいいところは、固定観念を変えて、脳を解放してくれるところである


という文章がようやく内容とかすかに関連がある。しかしながら、序文の出来は全く感心できないもので、最後の方は本人の自分語りに過ぎない。この程度のいい加減な序文をつけて出版されたのでは、著者が気を悪くするのではないかと思う。

著者の相手となる哲学者はおそらく仮想の存在であろう。著者がローレンツに取材したかどうかも重要ではないし、全体が創作である可能性も高い。個人的には哲学者にはもう少し骨のある反論をして欲しかったが、どうもこの人物も著者の意見にうすうす賛成している節があり、自分のポジションから反論をしているという印象を受ける。この人物がもう少し強い主張を持っていれば、より興味深い内容に発展したかもしれない。

人類の進化の上で「怠惰」という傾向がどうしてこれほどに強いのか、何故「怠惰」という特性がはびこっているのか。そのあたりの論考が問題解決の鍵ではないだろうか。現在考えられている以上に、「フリーライダー」は有利な戦略であり、人類という種はこれにうまく対処できていないのかもしれない。宗教、学校教育、企業での労働、全ての側面で「自分で考えることを放棄する」という魅力的な選択があり、これが愚か者がはびこる下地にある。

科学に関わる人間は損得でやっているわけではないので、大勢のフリーライダーがいることには問題がないだろう。しかしながら、先進国においてどうしてこれほどに「怠惰」戦略が有利な社会になるのかは全く興味深い点である。

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